-
- 糖尿病
ストレス性糖尿病は治る|血糖値変動の原因は? 2型糖尿病は生活習慣の悪化によって発症することが多いですが、精神的なストレスも糖尿病の発症や悪化に関係します。では、ストレスによって発症した2型糖尿病は、ストレスを緩和すると治るのでしょうか。 2型糖尿病患者の方の多くはストレス以外の要因も抱えているので、ストレス解消だけで糖尿病を治癒することは難しいでしょう。それでも、糖尿病患者の方がストレスを遠ざけることは治療のひとつになります。ストレスと糖尿病の関係性を詳しくみていきましょう。 ストレスと血糖値の関係 ストレスと糖尿病(血糖値の上昇)には深い関係があり、そこにはホルモンが関与しています。人がストレスを感じると、アドレナリンやコルチゾールというホルモンが分泌されます。 これらのホルモンは、血圧と心拍数や血糖値を上げます。ストレスを受けたときに「心臓がバクバクする」といった経験をしたことがある方もいると思いますが、そのとき同時に血糖値も上がっているのです。 コルチゾールは人がストレスに耐えるために必要なホルモンなので、そういった面では人を助けていますが、糖尿病患者の方の場合は血糖値を上げる作用によって糖尿病の悪化も促します。 また、ストレスを受け続けると、インスリンに対しての感受性が鈍くなり血糖値が下がりにくくなることがわかっています。このように、ストレスを受け続けると高血糖の状態が続くため糖尿病を招いてしまうのです。 人によってはストレスを暴飲暴食で解消することもありますが、これも注意が必要です。食生活の乱れは糖尿病の発症や悪化させる要因になるからです。 以上のようにストレスは直接的にも間接的にも糖尿病を助長してしまうのです。 ストレス性糖尿病の症状 糖尿病にはいくつか種類がありますが、すい臓がインスリンを分泌できないことで発症する1型糖尿病と、生活習慣の悪化で発症する2型糖尿病が主になります。 ストレスと深く関わっているのは、後者の2型糖尿病になります。 2型糖尿病の症状は次のとおりです。 ・尿量が多くなる ・尿が頻回になる ・疲れやすくなる ・肌が乾燥する ・皮膚がかゆくなる ・皮膚が痛くなる ・体重が急減する ・空腹に襲われる ・手足の感覚が鈍くなる これらの症状が気になったら、はやめに内科クリニックか糖尿病専門クリニックを受診するようにしてください。 自覚症状のあるころには、すでに糖尿病が進行している可能性が大きいからです。糖尿病は初期段階では自覚症状が出ないことが多いので、症状がなくても油断しないようにしてください。 ストレス性糖尿病の予防策 2型糖尿病を予防するにも、糖尿病を進行させないためにも、ストレスを遠ざけるようにしましょう。 こちらも併せてご参照ください 次にストレスの対処法を紹介します。 無駄なストレスがかかる場面を避ける ストレスは完全になくすことは難しく、良い緊張感を生む「良いストレス」も存在します。ストレス対策では、「無駄なストレス」を避けるようにしましょう。 身体はストレスを感じているにも関わらず、自覚がなく「ストレスはない」という人もいます。ストレスを発生させる要因のことをストレッサーといいますが、ストレスを受けている自覚がないこともあるため、ストレッサーの特定は難航することがあります。 例えば、仕事のプレッシャーや結婚や離婚といったライフイベント、日々のイライラもストレッサーになりえます。 一方、ビジネスパーソンによっては「仕事のプレッシャーを楽しんでいる」と言う人もいます。そのような人は、実際、身体はストレスを感じているのに、それをストレスだと認識していません。 ストレスを避けるためには、自分の感じているストレスに気づくことが、とても大切になります。 例えば、仕事であれば、業務内容を整理したり、部署異動することはストレス対策として有効です。 一方、ライフイベントのストレスについては完全に解消することが難しいので、うまくストレスとつきあうようにしましょう。気分転換の方法をみつけてストレス解消に努めてください。 荒れた食事をしない ストレス性の2型糖尿病を予防するためには、ストレス解消が欠かせません。しかし、ストレスを解消するために「荒れた食事」(暴飲暴食、偏食など)をするのは避けてください。 特に男性は飲酒、女性は食事でストレスを発散する傾向がありますが、暴飲暴食につながらないようにしましょう。食生活の乱れは血糖値の上昇につながり、糖尿病を助長してしまいます。 ストレス性糖尿病に向く薬 ストレスの解消法として、次のような漢方やアミノ酸が有効とも言われています。 ・半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう) ・桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう) ・アミノ酸「ギャバ(GABA)」 半夏厚朴湯は「気」のめぐりをよくすることが期待できる漢方です。桂枝加竜骨牡蛎湯も「気」に関係し、ささいなことが気になったり、落ち着かなかったりする人に効果があるとされています。 ギャバは体内に存在するアミノ酸のひとつで、脳や脊髄(せきずい)で抑制性の神経伝達物質として働いています。「抑制性」とは興奮を抑えたり、リラックスさせたりする、という意味です。 効果に個人差はありますが、一度試してみるのも良いかもしれません。ただし、すでに糖尿病治療で投薬中の患者の方は、必ず主治医に相談をしてから服用するかどうかを決めてください。 まとめ/ストレス性糖尿病は治る|血糖値変動の原因は? ストレスと2型糖尿病の関係について解説しました。 「ストレスは万病の元」といわれるくらいです。糖尿病の原因となったり、悪化させたりしても不思議ではありません。しかし、現代はストレス社会といわれており、完全にストレスをなくすことは難しいでしょう。 自分のストレスに気づき、解消法を身につけて、ストレスを軽減していくことが大切です。 監修:院長 坂本貞範 治療に役立つ関連記事はこちら
最終更新日:2022.09.21 -
- 糖尿病
糖尿病性腎症のステージ別症状|病期によって異なる自覚症状|内科専門医師が配信 糖尿病の合併症のひとつに糖尿病性腎症があります。糖尿病性腎症は進行すると命にかかわる恐ろしい病気です。 こちらも併せてご参照ください しかし、初期段階での自覚症状がほとんどないため、発症に気づくまでに時間がかかってしまいます。 また、糖尿病性腎症は進行度により症状が大きく異なるため、段階ごとに見られる症状を把握しておくことが大切です。こちらでは、糖尿病性腎症の特徴やステージ別の症状を解説していきます。 糖尿病性腎症のステージ別で現れる症状 糖尿病性腎症とは、糖尿病によって引き起こされる合併症のひとつです。具体的な症状は5つのステージ(病期)に応じて異なり、腎機能とタンパク尿がステージ進行の指標となります。 はっきりとした症状が出ないまま無自覚のうちに進行する病気でもあるので、早期発見のためには定期検診を受けることが大切です。 糖尿病性腎症は、長期にわたって高血糖が続き腎臓の糸球体の血管がダメージを受けることで、体内の老廃物のろ過が困難になるとされていますが、根本的な原因は明らかになっていません。 以下、糖尿病性腎症にて現れる症状と自覚症状について、ステージごとに解説していきます。 ステージ1で現れる症状 この段階では糖尿病性腎症としての症状が見られることはなく、糖尿病の症状だけが現れます。 そのため、検査を受けたとしても糖尿病性腎症と診断されることはほぼありません。 この時点での有効な治療方法として血糖コントロールがあります。しかしそれは腎症に対しての治療というよりは、糖尿病の症状を緩和させることを目的として行われます。 ステージ1の自覚症状 ステージ1は検査でも診断できない段階となるため、糖尿病性腎症として自覚できる症状もありません。 発症に気づかないままに、腎症前期のステージ1を過ごすこととなります。しかし、糖尿病の症状は現れているため、血糖コントロールや健康的な食生活など治療を継続して行いましょう。 それは結果的に腎症進行の抑制にもつながります。 ステージ2で現れる症状 早期腎症期のステージ2では、尿中から微量のアルブミンが検出されるようになります。 アルブミンとはアミノ酸の集合体からできたタンパク質のことです。 この状態で発症に気づくことができれば、厳格な血糖コントロールや血圧管理など適切な治療を施すことで、アルブミンが尿に漏れ出ない状態へと戻すことも可能です。 ステージ2の自覚症状 この段階でも自覚症状はほとんどありませんが、多くの場合では血圧が上昇します。 定期的に血圧を計測する機会があれば糖尿病性腎症を疑うこともできますが、そうでなければ気づかないことも多いです。 また、ステージ2の症状にあるタンパク尿は尿検査から見つけられます。そのため、腎症の早期発見には定期的な検診が必要となります。 ステージ3で現れる症状 顕性腎症期のステージ3では、ステージ2よりも多くのタンパク質が尿中に排出されるようになり、腎臓の機能も低下していきます。 厳格な血糖コントロールをこれまで同様に行うほか、血圧を下げるための治療も必要となる段階です。また、塩分やタンパク質を抑えたメニューを取り入れる食事療法も必要になります。 ステージ3の自覚症状 ステージ3になると、タンパク尿が増えることでむくみが現れ、息切れ、食欲不振、満腹感、胸の苦しさなど、これまでとは異なり具体的な症状を自覚することが多くなります。 この段階まで糖尿病性腎症が進行すると、元どおりの健康な状態に戻ることは難しく、進行を遅らせるために治療が行われます。できるだけ早期の段階にて発症に気づかなければいけません。 ステージ4で現れる症状 腎不全期のステージ4では、これまで以上に症状が顕著に見られるようになります。 腎臓には老廃物をろ過する機能を持つ糸球体が存在していますが、ステージ4になると、糸球体のろ過機能が正常に働かなくなります。老廃物が血液中に溜まった結果、尿毒症の症状が現れます。 また、インスリン排泄の低下により低血糖が起きやすくなるため、インスリンの投与や厳格な血糖コントロール、血圧管理と合わせて、これまで以上に腎症治療を重視した栄養管理が求められます。 ステージ4の自覚症状 血液中に老廃物が蓄積し尿毒症の症状が発生すると、ステージ3でも見られるむくみ症状に加えて、全身の倦怠感や手足の痛み、かゆみなども現れます。 また、腎臓には貧血を防ぐためのエリスロポエチンを生成する働きがありますが、腎機能が低下することで貧血が起こりやすくなることも懸念されます。 必要に応じて透析療法の準備を始めるのもこの時期です。 ステージ5で現れる症状 透析療法期のステージ5になると腎臓はほとんど機能しなくなります。そのため、腎機能を人工的にサポートする透析療法が導入されます。 この段階まで進行した場合では、5年後の生存率はおよそ50%といわれています。透析療法で症状の改善が見込めない場合は、腎移植が有効な手段となります。 また、糖尿病性腎症以外の合併症への予防や治療も必要となります。 ステージ5の自覚症状 手や筋肉の痛みやしびれ、腹痛、嘔吐、発熱、顔色の悪化、易労感、筋肉の強直など、さまざまな症状が自覚されます。 週に3回ほど人工透析を受ける必要がありますが、体に負荷がかからない範囲にて、これまでと同じように仕事や家事をこなしている人も見られます。 まとめ 腎症は5つの段階に病期が分かれており、症状が進むと透析療法や腎移植が必要になる深刻な病気です。 できるだけ早期の発見が求められますが、初期段階では自覚症状がほとんどなく、自分で腎症に気づくことは難しいです。 初期段階であれば治療によって元の状態に戻すことも可能ですが、進行度によっては回復が見込めなくなってしまいます。早期発見のためにも、定期的に検診を受けましょう。 監修:院長 坂本貞範
最終更新日:2022.10.31 -
- 糖尿病
糖尿病の初期症状とは|目や手足に異変が現れたら要注意|内科専門医師が配信 糖尿病は早めに治療すると病気の進行を食い止めることが期待できる一方で、治療が遅れたり病気を放置したりすると、失明や足の切断、命に関わる合併症の発症といった「重大な結果」を招くことになります。 したがって糖尿病は初期症状をとらえることが重要になりますが、初期では自覚症状が出ないことがあります。 自覚症状を感知できたときには糖尿病が進んでいた、ということも珍しくありません。 小さな兆候でも初期段階で見逃さないようにしたいところです。糖尿病の初期症状を徹底解説します。ポイントは目と手足です。 糖尿病の初期症状は? 国立循環器病研究センターは、糖尿病の初期症状で最も恐いのは「症状がないこと」としています。 これが糖尿病の初期症状の把握を難しくしています。 比較的早期に現れる症状としては、次のようなものがあります。 ・目がかすむ ・手足の痙攣(けいれん) ・頻尿気味になる(逆に尿が出にくくなることもある) ・喉が渇きやすくなる ・手足にイボやタコができやすくなる ・足がしびれる ・足が冷える ・皮膚が乾燥する ・性機能の低下 このうち「目がかすむ」「手足の痙攣」「頻尿気味になる」「喉が渇きやすくなる」「手足にイボやタコができやすくなる」の症状について以下で詳しくみていきます。 こちらも併せてご参照ください 目がかすむ 糖尿病を発症すると、目がかすむ、ピントが合わない、視力が落ちる、といった目の障害が発生します。 糖尿病患者の方は涙の量が少ないことが多いため、ドライアイになり、かすみ目になる傾向があります。 また、高血糖状態が続くと、水晶体が濁りやすくなり、白内障を併発することも多いです。 一方、糖尿病は「血管の病気」という一面もあります。糖尿病を発症すると血管が壊れてしまうのです。 目には細小血管(毛細血管)が走っているので、糖尿病患者の方に目の支障が現れるのです。 手足の痙攣 痙攣やしびれやむくみ、皮膚の乾燥といった異常が手足に現れるのも糖尿病の症状の特徴です。 血管は心臓から離れるほど細くなり、手足の先端には最も細い血管が走っています。糖尿病によってその細い血管「細小血管」が壊されてしまいます。 また、糖尿病患者の方は神経にも支障をきたします。 神経には、触って感じる感覚神経や、手足を動かす運動神経、血圧や内臓の動きを調節する自律神経があります。糖尿病になると末梢神経の代謝が悪くなることがあります。 さらに、血管に支障が出ることで末梢神経に栄養と酸素が届かず、神経が働かなくなることもあります。 糖尿病の患者の方のなかには、ガラスの破片を踏んで大量に出血したにも関わらず痛みを感じないこともあります。これは感覚神経が壊れているからと考えられます。 頻尿気味になる 1日に8回以上排尿すると頻尿と診断されます。多尿とは1回の尿量が3リットル以上になることです。 糖尿病を発症すると頻尿や多尿の症状が出ます。 血糖値が上がると、糖の濃度を下げようとして全身の細胞から水分が出ていきます。 その結果、喉が渇いて多飲することになり尿が増えます。また、糖尿病によって末梢神経が壊れることで神経因性膀胱になり、夜間頻尿になることもわかっています。 また糖尿病が進むと尿をつくる腎臓にも問題が生じます。尿は腎臓にある糸球体という細かい血管によってろ過されます。 しかし、糖尿病が進むと血管を傷つけてしまうため、尿をそのまま出してしまいます。 これをたんぱく尿といいます。もし尿の泡立ちが目立つという場合は尿にたんぱくが混じっている可能性もあります。 喉が渇きやすくなる 糖尿病患者の方が、喉が渇きやすくなるのは血糖値が上昇しているからです。 体の防御機能として、血糖値が上昇すると糖の濃度を下げようとして全身の細胞から水分が出ていき、尿の量が増えます。その結果水分を欲するようになるのです。 手足にイボやタコができやすくなる 糖尿病の患者の方の手足にイボやタコができやすくなるのも、末梢血管と末梢神経の異常が関係しています。 糖尿病が進むと血行が悪くなります。そのため手足にイボやタコができやすくなります。 また、糖尿病は神経を傷つけますので、ケガや火傷をしても気付きにくく、さらに治りにくいので、放置してしまうことがあります。 糖尿病患者の方や糖尿病が疑われる人の手足にイボやタコができたら、早急に医療機関にかかってください。 イボやタコなどの異変を放っておくと手足が壊死することもあります。壊死とは体の一部分の細胞が死滅することですので、最悪の場合手足を切断することになります。 この点は次の章で詳しくみていきます。 糖尿病による足の壊死の初期症状とは それでは足の壊死について解説していきます。 足の壊死にいたる前の初期症状には次のようなものがあります。 ・しびれ ・痛み ・こむら返り ・できもの ・皮膚の乾燥 ・皮膚のひび割れ いずれも、「なにかおかしいな」と思うだけで放置しやすい症状だけに注意する必要があります。 これらのサインが現れたら、早めに内科クリニックや糖尿病専門のクリニックを受診したほうがいいでしょう。 前述のように、糖尿病による足の壊死には血流障害と神経障害が深く関わっています。血流が悪くなるとタコやイボなどの症状が出やすくなります。 また神経障害があると知覚が鈍くなって痛みを感じにくいため、病変に気付きにくくなります。 さらに、糖尿病患者の方は免疫機能が低下しているため感染症が悪化して壊死へと進むこともあります。 引用元:DMTOWN 糖尿病の初期症状のセルフチェック方法 糖尿病の初期段階ははっきりした自覚症状がなく、発見したときには症状が進んでいる場合が多くあります。そのため、初期段階でのセルフチェックが重要になります。 糖尿病の初期症状には上記を含め次のようなものがありますので、チェックしてみてください。 ・食べてもやせる ・空腹がはげしくなる ・空腹時にイライラする ・喉が渇く ・疲れやすい ・尿が多くなる ・排尿が頻回になる ・目がかすむ ・手足がしびれる ・手足に異常が現れる ・陰部がかゆい こうした症状がみられたらメモ書きしておき、医師に症状を説明してください。 まとめ 糖尿病は初期段階で治療に取り組むことが大切です。そのためには初期症状の把握が不可欠です。 特に手足や目の症状はチェックしやすいため、初期症状の特徴を覚えておき「おかしいな」と感じたら医師に相談しましょう。 監修:院長 坂本貞範 こちらも併せてご参照ください糖尿病による腎臓の病気|糖尿病性腎症におすすめの食事(レシピ付き)
最終更新日:2022.10.31 -
- 糖尿病
糖尿病とは|種類と病態、原因と予防に迫る 「糖尿病は甘いものを食べすぎると発症する病気」としか捉えていない人もいますが、それは少し違います。 なぜなら糖尿病はもっと複雑で重大な病気だからです。 実は糖尿病にはいくつか種類があります。その中から、今回は1型糖尿病と2型糖尿病の違いを詳しく解説します。 さらに、糖尿病の種類と病態、治療方法や予防方法、改善策を紹介します。 糖尿病の種類 糖尿病には1型や2型、遺伝子異常によるものや妊娠によるものがありますが、ここでは患者の方の数が多い1型糖尿病と2型糖尿病について解説します。それぞれ主な特徴は次のとおりです。 <1型糖尿病の特徴> ●特定の遺伝子との関連性がある ●10~20代が突然発症することが多いが、高齢者も発症することがある ●自己免疫性と特発性がある <2型糖尿病の特徴> ●日本の糖尿病患者の95%は2型 ●遺伝的要因と環境的要因から発症する ●40歳以上に多い ●肥満傾向の人が発症しやすい さらに詳しくみていきましょう。 1型糖尿病の病態と原因 1型糖尿病は、インスリンをつくっているすい臓のβ細胞が壊れることで発症します。インスリンが減ったり、なくなったりすると体内の細胞が糖を取り込めなくなり、血中の糖の量が増えてしまうので血糖値が上昇してしまいます。 1型糖尿病は主に自己免疫性と特発性に分かれています。自己免疫性の1型糖尿病は、免疫の異常によって自分のβ細胞を破壊してしまいインスリンが出せなくなることで発症します。 免疫は通常は細菌やウイルスと闘って「自分自身」を守りますが、免疫に異常が起きると「自分自身」を攻撃するようになるのです。一方、特発性1型糖尿病の特発性とは「原因不明」という意味になります。つまり1型糖尿病とわかっても原因がわからないとき特発性1型糖尿病と診断されるのです。 1型糖尿病患者の方のなかには甲状腺疾患などの自己免疫疾患を合併していることもあります。 2型糖尿病の病態と原因 2型糖尿病の原因には、遺伝因子と環境因子があります。「因子」とは「原因となるもの」という意味です。つまり2型糖尿病の発症原因は遺伝によるものか、環境によるものに分かれています。 遺伝因子とは、両親や血縁に糖尿病の患者の方がいる場合は普通の人より糖尿病発症の可能性が高いということです。一方、環境因子とは食生活や運動などの生活環境のことを指しています。 食事によって血糖値が上昇するとすい臓からインスリンが分泌され、血糖値を下げます。しかし、食生活の悪化や運動不足などで生活習慣が乱れるとすい臓は大量のインスリンを分泌し続けることになり、疲弊してしまいます。 こうなってしまうと、インスリンの分泌量が低下することになります。また生活習慣が乱れると肥満を招きます。肥満により脂肪が蓄積するとインスリンの効果が出にくくなります。これをインスリン抵抗性といいます。 この場合も、より多くのインスリンを分泌しようと、すい臓が働き疲弊してしまうことで分泌が悪くなり高血糖状態が続くことで発症します。ほかにも、環境因子としてはストレスなどにも気をつける必要があります。 糖尿病の治療方法 糖尿病の治療方法について1型用の治療法と2型用の治療法にわけて説明します。 <1型糖尿病の治療法> ・インスリン補充療法:体内で不足しているインスリンを体外から注射器によって補充します。1型糖尿病は体内でインスリンを生成することができないので、治療ではインスリン療法が第1選択肢となります。なお、2型は病状が悪化してからこの治療法に移行するケースが多いです。 ・すい臓移植:ドナーから提供されたすい臓を1型糖尿病患者の方に移植する治療法です。ただ、ドナーの数が少なく、あまり多く行われている治療法ではありません。すい臓だけの移植が行われることはまれで、糖尿病が悪化して腎不全に陥った患者の方に、すい臓と腎臓を同時に移植する膵・腎同時移植を行うことが一般的です。 1型糖尿病患者の方も、後述する食事療法や運動療法を取り入れます。 しかし、1型糖尿病患者の方はインスリンを生成する細胞が壊れているため、運動療法の効果は2型と異なります。1型糖尿病は運動によってインスリンを生成する機能の回復は望めません。しかし運動するとストレスが解消されるので糖尿病治療に良い効果をもたらします。 また、運動することで体外から補給するインスリンの働きが高まることも期待できます。 <2型糖尿病の治療法> 2型糖尿病の治療では食事療法と運動療法が第1選択肢となります。特に2型は食生活の乱れや運動不足などの生活習慣の悪化で発症することが多いです。したがって、1型糖尿病患者の方よりも食事療法や運動療法が重要になってきます。 ・食事療法:食生活が乱れている方は、決められたエネルギー内で炭水化物、タンパク質、脂質からミネラルやビタミンまでバランスよく摂れる食事に切り替える必要があります。 ・運動療法:運動はインスリンの作用を高める効果が期待できます。 ・薬物療法:食事療法と運動療法で効果が出ない場合、飲み薬を使った治療に移行します。インスリンを出しやすくする薬(スルホニル尿素薬やDPP-4阻害薬など)やインスリンを効きやすくする薬(ビグアナイド薬やチアゾリジン薬など)、糖の吸収を調整する薬(α-グルコシダーゼ阻害薬など)などがあります。 食事、運動、薬物療法で効果が出なくなったら、2型糖尿病患者の方もインスリン療法に移行します。 糖尿病を予防・改善する方法 糖尿病を予防したり糖尿病の進行を防いだりするには「生活習慣を見直すこと」が欠かせません。生活習慣の改善ポイントは食事と運動とストレスの3点です。 食事を見直す 食生活の改善は糖尿病治療の基本です。したがって1型、2型どちらの患者の方も食事療法に取り組むことになります。食事で注意したいのは摂取エネルギーと栄養バランスです。 1日の摂取エネルギー 「標準体重(kg)×身体活動量(kcal/kg)」以内に抑えましょう。 ※標準体重は「身長(m)×身長(m)×22」で算出します。 身体活動量は仕事や作業によって次のように変わります。 ・軽い労作(デスクワークが多い人):25~30kcal/kg ・普通の労作(立ち仕事が多い人):30~35kcal/kg ・重い労作(力仕事が多い人):35~kcal/kg 食事は炭水化物とたんぱく質と脂質をバランスよく摂る必要があります。各栄養素の割合は以下が目安になります。 ・炭水化物:1日の摂取カロリーの50~60% ・たんぱく質:1日、標準体重1kg当たり1.0~1.2g ・脂質:1日の摂取カロリーの20~25% さらにビタミンとミネラルも意識して摂りましょう。ビタミンもミネラルも食事のなかで摂ることが理想ですが、難しい場合はサプリで補いましょう。 食事では次のことも実行してください。 ・ゆっくり食べる ・よく噛んで食べる ・夜遅くに食べない ・朝、昼、晩、3食しっかり食べる ・満腹まで食べない(腹八分目が理想) 運動をする 糖尿病の方は有酸素運動を習慣化してください。運動によって肥満が解消されるだけでなく、インスリンの働きもよくなります。最も簡単な有酸素運動は歩くことです。1日1万歩を目標にしてください。 ただ、運動が苦手な人や運動習慣がない人は、1日15分ほどのウォーキングから始め徐々に増やしていきましょう。糖尿病の方は運動により1日160~240kcalの消費を目指します。1万歩が大体160~240kcalになります。 次の運動を体重60㎏の人が行った場合、どれも100kcalほど消費しますので、これらを組み合わせて自分に合った運動メニューをつくってみると良いでしょう。 ・ゆっくり散歩を30分 ・速足のウォーキングを25分 ・自転車を平地で20分走行 ・早めのジョギング10分 ・クロールで水泳5分 ストレスを軽減させる ストレスを受けると血糖値が上がることがわかっています。このように、糖尿病は心理的要因や社会的要因も密接にかかわっているのです。糖尿病患者の方はなるべくストレスを遠ざけるようにしましょう。 ストレスは会社だけでなく家庭でも発生します。まずは自分のストレッサー(ストレスの原因)を見付けることから始めると良いでしょう。ストレス発散のために運動をすると運動療法にも寄与するのでおすすめです。 まとめ・糖尿病とは|種類と病態、原因と予防に迫る 糖尿病には1型と2型があり、それぞれ原因や発症メカニズムが異なります。さらにこの2種類の糖尿病は治療法も異なります。ただし、食事療法、運動療法、ストレス解消といったことは、すべての糖尿病患者の方が取り組むべきです。 いずれの場合も異変を感じたらなるべく早い段階で医師の診察を受けることが大切です。 監修:院長 坂本貞範 ▼こちらも併せてご参照ください
最終更新日:2022.10.18 -
- 糖尿病
糖尿病にかかると頭痛がする原因と対処方法|内科専門医師が配信 糖尿病治療中にしばしば発生し悩ませられる頭痛、その原因として低血糖症状が疑われます。 糖尿病は血糖値の高さにばかり目が向きがちですが、治療の過程で血糖値が低くなりすぎると、頭痛が引き起こることがあります。 こちらでは、糖尿病における頭痛の原因と、その対処方法を紹介します。 糖尿病患者が頭痛を訴える原因 糖尿病によって引き起こされる合併症のひとつに低血糖があります。血糖値が50mg/dl程度の状態が続くと、初期症状として空腹感やあくびなどが見られるようになります。 その後、倦怠感や動悸を催すようになり、さらに悪化すると、頭痛の症状が現れるのです。 糖尿病になると血糖値の高さに気を取られてしまいがちですが、治療段階では低血糖に悩まされるケースも珍しくありません。 血糖値を下げる治療として広く用いられているインスリン注射や血糖の低下を促す経口薬ですが、人によってはその効果が出過ぎてしまい、低血糖につながってしまうのです。 低血糖に陥ったとしても、すぐに対処すれば大きな問題にはなりませんが、実際には自覚できないケースも少なくありません。 頭痛の症状が現れて初めて察知するといったように、気づいた時にはすでに症状が進行している可能性があります。 低血糖で頭痛がする原因 なぜ低血糖は頭痛を引き起こしてしまうのか、症状が起こるまでの流れを解説します。 アドレナリンの血管収縮作用 血糖値が低下すると体内ではアドレナリンやノルアドレナリンが血糖値を上げるために働きかけます。 しかし、アドレナリンには血管を収縮させる作用もあり、血流を悪化させてしまうのです。その結果、脳内の血管が収縮し頭痛が引き起こされます。 活性酸素による血管へのダメージ また、血糖値の低下は遊離脂肪酸の血液中への放出を促します。遊離脂肪酸とは、血液を通じて全身に運ばれ、体を支えるエネルギーとして活用される物質です。 しかし、遊離脂肪酸には活性酸素を作り出す作用もあります。その活性酸素が血液中で脂質と結びつくと、血管を傷つけてしまうのです。脳の血管にダメージが生じた場合、頭痛の症状が現れます。 さらに血液中の活性酸素量が増加し血管がダメージを受けると、血管はより細くなっていきます。その結果、血液がスムーズに流れなくなり、血圧を引き上げてしまうのです。高血圧は糖尿病の合併症を発症させるリスクをはらんでおり、その原因となる低血糖は糖尿病治療において決して無視できない問題といえます。 低血糖で頭痛がしたときの対処方法 低血糖による頭痛、もしくは空腹感や眠気となどの症状を感じた場合は、すぐに対処してください。 糖分が含まれているお菓子やジュースを補給し、低血糖からの回復に努めましょう。 対処はできるだけ早期に 低血糖状態が継続すると、深刻な合併症が生じる恐れがあります。痙攣や異常行動、意識レベルの低下などを引き起こし、昏睡状態に陥るケースもあるため、できるだけ早い段階での対処が求められます。血糖値が70mg/dlを下回ったとき、発汗や動悸、頻脈などの症状が見られます。 この段階ですみやかに糖分を補給するように意識してください。 周囲の助けが必要になるケースに備えた事前説明 血糖値が50mg/dlを下回り意識レベルが低下すると、自分で糖分を摂取することは困難となるため、周囲の人の助けが必要となります。 糖尿病患者の方は身の回りの人に、その可能性があることを事前に告げ、緊急時の対応に備えておきましょう。 具体的な対応として、まずは応急処置として口唇や歯肉に糖分を塗ってもらいます。その後、救急車を呼んでもらい、病院で治療を受ける流れとなります。 適切な対処方法を事前に説明していないと、周囲の人も初見では状況を理解できず対応しきれません。万が一に備え、対処方法をしっかり伝えておきましょう。 低血糖が原因で進行する症状 低血糖は自覚のないうちに症状が進行してしまうおそれがあります。 早期対処のために低血糖時に現れる症状について正しく把握しておきましょう。 低血糖による交感神経症状 血糖値が70mg/dlを下回ると交感神経症状が現れます。主な症状には、発汗、脱力感、手足の震え、動悸、頻脈、顔面蒼白、気分の悪さなどが挙げられます。 また、副交感神経症状として強い空腹感も現れます。これらは低血糖の症状においては、比較的軽いものに分類されます。 低血糖による中枢神経症状 血糖値が50mg/dl程度の状態が続くと、中枢神経症状が現れます。具体的には、頭痛、眠気、めまい、目のかすみ、ろれつが回らない、ぎこちない動作、強い疲労感などです。 さらに血糖値が50mg/dlを下回ってくると、異常行動や痙攣、意識レベルの低下、さらに昏睡状態に陥るケースも考えられるため、早期の対処が不可欠です。 普段から血糖値が低い場合は、無意識のうちに低血糖状態となっている可能性も考えられ、中枢神経症状が突然発症するおそれもあります。 初期症状や症状の段階ごとの対処法をしっかり把握しておきましょう。 普段の生活で予防できる方法 低血糖の予防のために、普段の生活から実践できる対策もあります。 こちらも併せてご参照ください 糖尿病を日常生活から防ぐ!今から始められる予防法 治療薬が体におよぼす作用に気を配る まずは、糖尿病治療薬の種類や量に気を配ることです。 血糖値を抑えるために用いられるインスリンや経口薬は、人によっては効き過ぎてしまうこともあり、その結果として低血糖を誘発することがあります。血糖値を抑える作用の薬を投与後に違和感を覚えた場合は、主治医に相談してください。 適切な食生活や運動を取り入れる また、食事や運動など生活習慣を正すことも低血糖の予防につながります。糖尿病治療では食生活の改善は不可欠なものであり、食事を適正なエネルギー量にコントロールすることが求められます。 食事量が足りていないと血糖値が低下する可能性があるため、毎食適切な量を食べるようにしてください。また、お酒の飲み方にも注意が必要です。特に空腹時のアルコール摂取は低血糖を引き起こす原因となります。 適切な運動を生活習慣に取り入れることも欠かせません。ただし、長時間の激しい運動は、筋肉や肝臓に蓄えられたブドウ糖が過剰に消費されてしまい、低血糖を引き起こす原因にもなるため、逆効果になりかねません。 散歩や水泳など、疲労につながりにくい有酸素運動が血糖値コントロールに適しています。無理のない範囲で適度に取り入れましょう。 まとめ 糖尿病治療中に発生する頭痛の原因として低血糖が疑われます。低血糖は頭痛や動悸などさまざまな症状を引き起こしますが、悪化すると意識を失うなど深刻な事態になります。 慢性的な低血糖の場合は、気づかないうちに症状が進行していることも考えられるため、どのような症状が低血糖症に該当するのか、しっかり把握しておきましょう。 実際に頭痛などの具体的な症状が現れている場合には、糖分を補給して、血糖値を正常な値に戻すよう対処してください。 自身で対処できない場合を考えて、事前に周囲に対処法を伝えておくことも重要です。低血糖の予防として、食事や運動など生活習慣の見直しも大切です。 監修:院長 坂本貞範 尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。 糖尿病ってどんな病気?
最終更新日:2022.10.10 -
- 糖尿病
糖尿病のシックデイ対策|シックデイルールに沿って対処しよう|内科専門医師が配信 シックデイ、体調不良時は血糖値が大きく上下するおそれがある為、適切な対処と過ごし方が求められます。薬の調整が必要となる場合もあり、誤った自己判断で薬の調整を行った結果、症状を悪化させてしまうことも考えられます。 シックデイの適切な過ごし方を知っておくことは、糖尿病治療において不可欠です。 こちらでは、自身の病状の把握方法や食事の際の注意点などから、シックデイの過ごし方について解説します。 糖尿病のシックデイとは?その対策 糖尿病患者が感染症や病気にかかり、発熱、食欲不振などが生じ体調が悪化しているときのことをシックデイといいます。 特に糖尿病を患い高血糖状態が続いていると、ウイルスや細菌に対する抵抗力が弱まり、インフルエンザなど感染症にかかりやすくなる側面もあるため、シックデイ対策の正しい理解が求められます。 体調不良時のあらゆる症状は体にとってストレス・負荷をかけるため、身を守るために体内にストレスホルモンが分泌されます。 しかし、この働きは糖尿病患者にとっては悪影響にもなりかねません。インスリン投薬は血糖値を抑えることを目的で糖尿病治療に広く用いられています。 しかし、ストレスホルモンはそのインスリンの働きを抑えてしまう作用があるため、高血糖を引き起こす原因にもなるのです。 また、シックデイには次のようなリスクもあるため、糖尿病の方は特に注意してください。 <糖尿病患者にとってのシックデイのリスク> ● 抵抗力が低いため感染症にかかりやすい ● 病気によるストレスで血糖値が高くなりやすい ● 食事の量が減って低血糖になることがある このように、シックデイは糖尿病患者にとってさまざまなリスクをはらみます。体調がすぐれない日は、どのように過ごすべきなのでしょうか。 糖尿病のシックデイルール シックデイの適切な過ごし方をシックデイルールといいます。その主なルールとして、次の5つが挙げられます。 <糖尿病のシックデイルール> ● 保温を徹底して安静にする ● 水分と炭水化物を十分に摂る ● 飲み薬を調整する ● 自己判断でインスリンを中断しない ● 血糖値を測り症状を把握する 糖尿病の進行状況や治療方針は人それぞれ異なるため、ルールの具体的な部分は主治医と相談して決めるようにしてください。医師の指示がないままに薬の量を調整するなどの自己判断は禁物です。 シックデイの過ごし方で大切なことは、まずはルールを遵守することですが、次のような症状が現れた場合には、すぐに医療機関を受診するようにしてください。 <医療機関での受診が必要な状態> ● 高熱が続いている(38度以上) ● 高血糖状態が続いている(350mg/dl以上) ● 嘔吐や下痢などの強い自覚症状がある ● 食事ができない なぜシックデイルールを守ることが大切なのか、項目ごとにそれぞれ解説していきます。 保温を徹底して安静にする 安静は病気の症状を抑えるための基本です。体を動かすと体内のエネルギーが消費され、同時に病気に対する抵抗力も減少してしまいます。体力の消耗を防ぎ、抵抗力を保ちながら病気の完治に努めましょう。 また、保温も心がけてください。体を温めてしっかり休むことは体調不良時の対策として欠かせません。寒気を感じるような場合では、なおさらの徹底が必要です。 水分と炭水化物を十分に摂る 体調不良時にはなかなか食欲がわかないものです。しかし、病気の症状を抑え回復に向かうには、体内へのエネルギーや栄養素の取り込みは不可欠です。 食欲がない場合でも食事はしっかりと摂らなければなりません。なかでも大切なのは水分と炭水化物の補給です 脱水状態になると体内の血液濃度が高まり、血糖値上昇の原因になります。また、高血糖であれば本来は血液中の余分な糖分は尿から排出されるものですが、脱水状態では尿の量自体が減少するため、適切に排出されず体内に残ってしまいます。 これも血糖値の上昇につながる要因となります。脱水状態となることを防ぐべく、十分な水分補給が求められます。 一方、糖分が不足し低血糖になった場合では、血液中にケトン体という物質が増加し、血液は酸性へと変わります。 それは吐き気や意識障害といった深刻な問題を引き起こす原因になります。 低血糖にならないための血糖値コントロールの一環として、糖分が多く含まれている炭水化物を摂取するようにしてください。 飲み薬を調整する 糖尿病の薬の調整方法は、1型糖尿病と2型糖尿病で異なります。 ・1型糖尿病の場合 食欲が湧かず、まともに食事を食べられない状態であっても、インスリンの投与は欠かさず行うようにしてください。数時間おきに血糖値を測定し、その結果に合わせてインスリンを数単位ずつ追加していきましょう。 また、この際のインスリンは速効性の高いものを選択してください。この流れを繰り返し、血糖値のバランスを損ねないよう調整することが大切です。 ・2型糖尿病の場合 使用する飲み薬によって調整の方法も異なります。例えばビグアナイド薬の場合であれば、脱水によって別の症状が引き起こされるリスクが懸念されるため、服用を控えることになります DPP-4阻害薬の場合は、食事を摂れない状態であれば薬効自体が見込めなくなります。このように、体調と薬の種類に応じた調整が求められるため、主治医の指示に従うことが大切です。 自己判断でインスリンを中断しない インスリン注射についても、1型糖尿病と2型糖尿病で異なります。 ・1型糖尿病の場合 体内でインスリン分泌が正常に行われていないため、外部からインスリンを投与する必要があります。 これは、シックデイでも変わりありません。インスリンの投与を中断してしまうと、インスリンの欠乏により嘔吐や意識障害など深刻な症状が現れるおそれがあります。 ・2型糖尿病の場合 いつも通りに食事を摂れない状態であれば、インスリンの投与量を調整する必要があります。普段の半分程度食べられる場合であれば通常時と同じ量のインスリンを投与することになりますが、自己判断は禁物です。必ず主治医の指示に従って調整しましょう。 血糖値を測り症状を把握する シックデイでは血糖値が乱れやすくなるため、数時間おきに血糖値を測定し、自身の状態を正しく把握することが大切です。普段の状態と比較しながら、病状の把握に努めましょう。 血糖値のほかに体温や体重も自身の状態を確かめるひとつの指標となります。シックデイで体の抵抗力が弱まると、感染症にかかりやすくなります。感染症には発熱が伴うケースがあるため、まずは体温を測ることから対応してください。 また、体重が普段よりも大幅に減少している場合には、体内の水分量が低下し、脱水状態に陥っていることが懸念されます。 このように、自身の症状を正しく把握することは、医療機関の受診を急ぐべきかの判断材料にもなります。 シックデイのときに避けた方がよい食べ物 シックデイでは食欲不振に陥り、嘔吐や下痢といった症状に悩まされることも少なくありません。 消化のしづらい食べ物や脂肪分の多い食品は体への負担につながるため、できるだけ控えるようにしましょう。 <シックデイのときに避けた方がよい食べ物> ● インスタント食品 ● デニッシュパン ● たけのこ ● きのこ類 ● 海藻類 ● 脂身の多い肉 ● 生クリーム ● マヨネーズ ● 青魚 ● まぐろ ● セロリ ● にら また、調理する具材の切り方やかたさなども消化効率に影響します。大きな具材やかたい食べ物は消化までに時間がかかるため、体への負担になりかねません。 食材選びだけでなく調理方法にも気を配りましょう。 シックデイのときに摂った方がよい食べ物 糖尿病治療薬には、食事を摂れない状態の服用では効果が期待できない種類もあるため、適切に食事を摂る必要があります。 シックデイのときにはどのような食べ物を選ぶべきなのか、普段通りに食べられる場合、食欲不振の場合など、ケースごとに紹介します。 こちらも併せてご覧ください⇩ 糖尿病による腎臓の病気|糖尿病性腎症におすすめの食事(レシピ付き) <食欲があるときにおすすめの食べ物> ● 麺類(うどん・そばなど) ● シチュー ● おじや ● 果物 <食欲がないときにおすすめの食べ物> ● おかゆ ● 梅干し ● アイスクリーム ● ゼリー ● 茶碗蒸し また、シックデイでは嘔吐や下痢などの症状から、電解質や水分が体内から奪われてしまいます。脱水症状を防ぐために、次の食べ物を取り入れるようにしましょう。 <脱水予防におすすめの食べ物> ● みそ汁 ● 野菜スープ ● スポーツドリンク ● 果汁ジュース まとめ シックデイでは血糖値が大きく上下するおそれがあり、嘔吐や吐き気などの症状や低血糖などの合併症も懸念されます。シックデイルールに従って生活することを心がけましょう。 ルールの細部や具体的な部分については、主治医との相談のうえで決めるようにしてください。何事も自己判断は禁物です。薬の量の調節なども含め、主治医の指示を遵守しながらシックデイを適切に過ごしましょう。 監修:院長 坂本貞範
最終更新日:2022.10.11 -
- 糖尿病
糖尿病の生命予後|経過時間と進行する症状|内科専門医師が配信 糖尿病の治療におけるキーワードのひとつに「生命予後」があります。生命予後とは、病気を発症した後や治療をした後の「命の予測」や「健康の予測」のことです。 すなわち糖尿病は「命に関わる病気」と位置付けられているのです。 糖尿病の生命予後を解説したうえで、治療法について紹介していきます。 糖尿病の生命予後 病気を発症しても自然に治ることがあります。また治療によって病気の症状が消えることもあります。 その一方で、死に至る病や治療をしても完全には治せない病気もあります。 そのような病気や治療では、医師たちは「命をどの程度維持できるか」「どの程度健康が回復するか」「生活の質(QOL)はどの程度保たれるか」といったことを予測します。 なかでも、「命をどの程度維持できるか」を予測したものを生命予後といいます。 糖尿病は、治療を徹底することで生命予後を改善することもできます。 一方、いい加減に治療をしていると失明や足の切断、腎不全などの生活の質を著しく低下させる状況に陥ったり、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気につながることもあります。 このように目や足や腎臓などの臓器や器官などに支障が出ることを「機能予後の悪化」といいます。 糖尿病による合併症は生命予後や機能予後に大きな影響を与えます。さらに、合併症がどのくらい進行しているかによっても予後が変わってきます。 糖尿病の病期分類 糖尿病の症状は病気が進行すると著しく悪化していきます。そして糖尿病患者の方が警戒しなければならないのは次の3つの合併症です。 ・糖尿病性腎症 ・糖尿病性神経障害 ・糖尿病性網膜症 上記はそれぞれ、腎臓の病気、神経の病気、目の病気です。 糖尿病には「前期」「初期」「早期」「中期」「晩期」「末期」の6つの病期があり、3つの合併症も病期が進むにしたがって重症化していきます。 糖尿病の病期は発症からの年月数や血液検査の結果、症状の悪化の度合い、合併症の状態によって決まります。 末期症状としては、糖尿病性腎症の場合は人工透析が必要になり、糖尿病性神経障害の場合は知覚が消失し、糖尿病性網膜症の場合は失明した状態になります。 こちらも併せてご参照ください 1998~2012年に実施された米国疾病予防管理センターの追跡調査によると、糖尿を持つ人はそうでない人と比べて4.6年早く死亡し、日常生活動作への障害が6~7年早く進行することがわかりました。 日常生活動作とは食事をしたり排泄をしたり着替えをしたりする生活の基本動作のことです。 一方で、日本の多くの医師や糖尿病の研究者たちが「糖尿病を発症しても治療次第で普通の人となんら変わらない生活を送ることができる」と言います。 寿命が短くなることも普通の生活を送れることも事実です。この明暗をわけるものは早期治療や適切な治療や生活の改善などです。 もし病期が進行したり合併症を発症しても、その病期や予後、合併症に応じた治療があります。 症状によって異なる予後 糖尿病には以下の2種類があります。 <糖尿病の種類> ●1型糖尿病 ●2型糖尿病 それぞれの生命予後をみてみましょう。 <1型糖尿病の生命予後> 1型糖尿病は、インスリンを分泌するすい臓のβ細胞が損傷し、インスリンがほとんど分泌されなくなることで発症します。 したがって1型糖尿病の治療は体外からインスリンを補充するインスリン注射が主になります。 インスリン注射は基本的に、患者自身が朝、昼、夕の3食後に自分の体に打ちます。これを自己注射といいます。 1型糖尿病の患者の方は生涯にわたってインスリンの自己注射を続ける必要があります。インスリン注射をしないと高血糖になって合併症を引き起こすことになりますが、インスリンの投与量を多くしてしまうと低血糖になるため健康を著しく害します。 したがって、インスリンと血糖値をいかにコントロールするかが患者の方ご自身の生活の質(QOL)を左右することになります。 <2型糖尿病の生命予後> 1型、2型に関わらず、糖尿病の生命予後に大きな影を落とすのは合併症です。糖尿病に高血圧、肥満、高脂血症を加えた4つの症状が合併していることを「死の四重奏」と呼ぶこともあります。 特に2型糖尿病は食生活や運動不足などの生活習慣が原因で発症することが多いといわれています。 また、高血圧や高脂血症も生活習慣によって発症することが多い病気です。 そのため、2型糖尿病患者の方にとっては合併症を発症させないことが生命予後を左右することになります。 糖尿病の治療方法 糖尿病の治療には大きく次の3つのアプローチがあります。 <糖尿病の治療方法> ●インスリン治療における血糖管理 ●食事療法で血糖値を抑える ●運動療法で血糖値を下げる それぞれについて解説します。 インスリン治療における血糖管理 糖尿病の薬には飲み薬もありますが、ここではインスリン治療について解説します。 インスリン治療とは不足しているインスリンを注射を使って体外から補充する治療法です。これにより血糖値をコントロールすることができます。 インスリン治療に用いられる薬(インスリン製剤)には次の6種類があります。 医師は患者の方の血液検査の結果や体調、生活環境などを勘案し、適切なインスリン製剤を選択します。 <インスリン製剤の種類> ●超速効型インスリン製剤 ●速効型インスリン製剤 ●中間型インスリン製剤 ●持効型溶解インスリン製剤 ●混合型インスリン製剤 ●配合溶解インスリン製剤 それぞれの特徴を紹介します。 <超速効型インスリン製剤> インスリン製剤の効果が注射後10~20分に現れます。効果スピードが最も早いインスリン製剤です。ただ作用する時間は3~5時間しかありません。毎食前に投与します。 <速効型インスリン製剤> 注射後30分~1時間程度で効果が出ます。作用時間は5~8時間です。毎食、約30分前に投与します。 <中間型インスリン製剤> 速効型と持効型の中間に位置するインスリン製剤で、効果が現れるのは注射後30分~3時間後です。作用時間は18~24時間です。朝食前に投与します。 <持効型溶解インスリン製剤> 1日1回投与します。効果が現れるのは注射後1~2時間で、1日中作用します。 <混合型インスリン製剤> 「超速効型または速効型」と「中間型」を混合したインスリン製剤です。食事の直前または食事の30分前に注射することが一般的です。 持続時間は中間型インスリン製剤とほとんど同じです。 一方、混合型インスリン製剤は、作用時間の異なる薬を混合しているため、超速効型(または速効型)と中間型それぞれの作用時間で効果が見られるという特徴があります。 混合されているインスリンの種類によって注射を打つ時間が変わってきます。 <配合溶解インスリン製剤> 持効型7:超速効型3の割合で配合したインスリン製剤です。医師が指定した食事の前に注射します。早く効果が出ながら、作用時間が1日中作用します。 食事療法で血糖値を抑える 食事療法で血糖値を抑えるポイントは次の7点です。 ●1日3回の規則正しい食事を心がける ●ゆっくり食べる ●よく噛んで食べる ●炭水化物とたんぱく質と脂質をバランスよく摂る ●満腹にしない(腹八分目を心がける) ●夜遅く食事をしない ●寝る直前に食事しない 糖尿病治療では「食事療法」といっても食べてはいけないものはありません。 むしろ、バランスよくいろいろなものを食べることが大切です。特に野菜が苦手な方は意識して野菜を多く食べましょう。 また食事の量も重要ですので、医師が指示した「1日の摂取エネルギー」は厳格に守ってください。 運動療法で血糖値を下げる 食事療法だけでなく、運動療法も糖尿病治療に効果的です。運動することによって糖が細胞に取り込まれやすくなるからです。 血糖値を下げる効果が期待できるのは次の2つの運動です。 ●有酸素運動 ●筋力トレーニング 有酸素運動とはウォーキングや水泳やジョギングなどのことです。 有酸素運動によって糖が筋肉へ取り込まれ、血中の糖が消費されやすくなることで、血糖値を下げる効果が期待できます。 筋肉が増えるとインスリンの効果が高まるので、筋力トレーニングも血糖値を下げる効果が期待できます。 まとめ 糖尿病は放っておくと命に関わる病気へと進行していきます。その一方、しっかり治療に取り組めば普通の生活を送ることが期待できます。 生命予後を決めるのは適切な治療と生活習慣の改善です。そして糖尿病の初期段階から治療に取り組むことも生命予後によい効果をもたらします。 「糖尿病かな?」と感じたら、お近くの内科クリニックや糖尿病専門クリニックにかかるようにしてください。 監修:院長 坂本貞範
最終更新日:2022.10.31 -
- 糖尿病
糖尿病の早期発見のために必要な初期症状の見抜き方 糖尿病は一度発症すると完治が難しい病気です。 しかし、糖尿病の初期段階の方や糖尿病予備軍と呼ばれている方、生活習慣病が気になる方に知っていただきたいのは、「初期段階で治療に取り組んで生活習慣を改善すれば、一般の人と変わらない生活を送れる」ということです。 これから紹介する糖尿病の症状をしっかり押さえたうえで、早期発見と早期治療、療養の継続に努めましょう。 糖尿病は治すことが難しい病気 糖尿病は、血糖を下げる働きをするインスリンというホルモン自体を生成できなかったり、何らかの理由により少なくなったり、働きが悪くなり、血液中の糖の濃度が高くなることで発症します。 そして一度、糖尿病を発症すると、元の状態に治すことは極めて難しいとされています。 インスリンはすい臓にあるβ細胞でつくられており、このβ細胞が壊れると現代医学では再生できないからです。そのため医師によっては患者の方に「糖尿病は治らない」「糖尿病を治すことは難しい」と説明しています。 糖尿病は血液のなかの糖の割合(血糖値)が高くなる病気です。糖尿病を治すことはできなくても、血糖値を正常値に保つことはできます。すなわち血糖値を正常値の範囲内にとどめておけば、一般の人とまったく変わらない生活を送ることができます。 糖尿病には成因によって1型と2型に分けられます。1型糖尿病の原因はいまだ解明されていませんが、2型糖尿病は生活習慣の悪化などが引き金となって発症します。 1型と2型は発症の原因に違いはありますが、すい臓やβ細胞やインスリンの分泌に支障が生じる点では同じです。 糖尿病は早期発見が重要 生活習慣の悪化などによって発症する2型糖尿の場合、完治は難しくても早期発見と早期治療と治療の継続によって健康な人とほぼ同じ生活を営むことができます。 糖尿病の治療の基本方針は「血糖値のコントロール」です。糖尿病は血糖値が高くなりすぎる病気ですが、糖尿病治療薬を飲みすぎて血糖値が下がりすぎても健康を害してしまいます。 そこで「血糖値を下げる」だけでなく「下げすぎない」ことも必要になります。そこから「血糖値のコントロール」という言葉が使われるのです。 血糖値をコントロールするには、薬のほかに食事と運動が鍵を握ります。糖尿病の初期段階ではまずは食事療法と運動療法を行い、それでも効果が出なかったら薬物療法を取り入れます。 食事療法と運動療法は、糖尿病治療の基本なので薬物療法を始めてからも継続する必要があります。つまり糖尿病の治療は「生活習慣を見直す」ことが重要になります。 糖尿病の初期症状 糖尿病の初期症状を紹介します。初期段階での自覚症状は気づきにくいものが多いですが、少しでも疑わしい症状があれば医師に相談することをおすすめします。 高血糖状態 糖尿病は初期症状に気づきにくい病気のひとつです。それは、糖尿病の初期段階では自覚症状がほとんどないうえに、ほかの要因でも起きうる症状が多いからです。 糖尿病の主な初期症状 ・喉や口の中や舌が渇く ・水分を多く摂るようになる ・尿の回数や量が増える ・強い空腹に襲われる ・体重が急に減少する ・疲れやすくなる 例えば、運動をして汗をかけば喉が渇きます。高齢になると尿の回数が増えます。胃や腸の病気でも体重減少が現れます。したがって常に糖尿病を警戒していないと、喉が渇いても、尿の回数が増えていても、体重が減っても、糖尿病を疑うことができないかもしれません。 厚生労働省の調査では、糖尿病の患者の方が初めて医師に「糖尿病である」と診断されたとき、約4割の方は自覚症状を持ってなかったことが分かっています。上記のような症状が現れたら、医者にかかり検査をうけることを、おすすめします。 初期段階から進行した場合 糖尿病の初期症状を放置すると病気が進行し、次のような症状が現れます。 ・手足がしびれる ・手足にチクチクするような痛みが走る ・皮膚が乾燥しやすくなる ・肌がかゆくなる ・目がかすむ ・小さな傷でもすぐに化膿する ・勃起不全(ED)など性機能に支障が出る この状態に陥っても放置していると、足の切断や失明、腎不全といった合併症を発症してしまいます。また心筋梗塞や脳梗塞といった「命に関わる病気」の発症リスクも高まります。 数値で見る初期症状 先ほど、糖尿病は初期症状を把握しにくい病気である、と解説しました。糖尿病は「見えにくい」病気ですが、「病気を数値で見る」ことがあります。それは健康診断などの血液検査で実施する血糖値の測定です。 以下の数値になると、糖尿病と診断されます。 ・空腹時血糖値が126mg/dl以上 ・随時血糖値が200mg/dl以上 ・HbA1c値が6.5%以上 健康診断でこれに近い数値が出ると、医療機関で再検査や精密検査を受けるようアドバイスされるはずです。その場合は再検査や精密検査を必ず受けるようにしてください。 自覚症状がないのに、糖尿病を疑って医療機関を受診した患者の方の約5割は「健康診断や人間ドックで指摘された」ことがきっかけでした。 まとめ・糖尿病の早期発見のために必要な初期症状の見抜き方 初期段階では自覚症状がほとんどないのに、放置すると重大な病気を引き起こすというのが糖尿病の恐ろしいところです。一方、初期段階のうちに、医療機関にかかると治療効果が大きいのも糖尿病の特徴です。 糖尿病予備軍の方や生活習慣病が気になる方は、初期症状を確実につかむことが重要です。早期治療で糖尿病の進行を防ぐことができれば、健康な人と変わらない生活を送ることが可能です。 そして初期段階で治療に取り組むことができた方は、油断せずに血糖値のコントロールを地道に継続することが大切です。 監修:院長 坂本貞範 こちらも併せてご参照ください
最終更新日:2022.10.31 -
- 糖尿病
糖尿病を発症すると皮膚に影響が出ることがあります。多くの糖尿病患者の方が、乾燥やかゆみ、痛みなどの肌のトラブルに悩まされています。 糖尿病患者の方に皮膚の病気が出てしまう原因を解説しながら、予防法についても紹介します。 皮膚に影響がでてしまう原因 糖尿病の患者の方に現れる症状のうち、皮膚や肌に関係するものは次のとおりです。 ・乾燥する ・かゆい ・ちくちくと指すような痛みがある ・手足の感覚がない ・切り傷が治りにくい 血糖値が上がると、皮膚の水分が失われ乾燥肌になりやすくなります。乾燥した皮膚は傷つきやすいので、かゆみが生じたり、痛みが走ったりします。 さらに皮膚の傷から、感染症を引き起こす細菌やウイルスが体内に侵入しやすくなります。 しかも糖尿病患者の方は免疫が落ちているので細菌やウイルスと闘えなくなり、感染症が発症しやすくなるのです。 免疫は外界の攻撃や刺激から皮膚を守る機能を備えています。では、なぜ糖尿病を発症すると免疫が低下してしまうのでしょうか。 免疫の機能を担っているのは白血球です。白血球は、体内に侵入しようとするウイルスや細菌と闘います。糖尿病患者は血流が悪くなり、特に細い血管に血液が届きにくくなります。 血液が届かないということは、血液中の白血球も届かないということです。さらに高血糖になると白血球や免疫機能が低下してしまいます。 その結果、ウイルスや細菌に負けてしまい、感染症を起こしやすくなるのです。また、感染症に起こしてしまうと治療に時間がかかることになります。 こちらも併せてご参照ください 皮膚に影響がでる合併症の種類 糖尿病患者の皮膚のトラブルとして知られているのは次の病気です。 ・陰部、爪、趾間(足の指と指の間)のカンジダ症 ・足の白癬(水虫) ・足底(足の裏)や下腿(膝から足首までの部位)の水疱症 カンジダ症や白癬は真菌という細菌に感染することによって発症します。糖尿病患者の方は真菌を排除する力が弱っているので、常に体を清潔に保つ必要があります。 また糖尿病患者の方は、足底や下腿に「いつの間にか」水泡がでてきていることがあります。水泡が破裂すると、そこがウイルスや細菌の「入口」になり感染症につながってしまいます。 組織を壊疽させる(腐らせる)感染症にかかると、最悪、足を切断することになりかねません。 足の合併症を事前に防ぐ方法 糖尿病患者の方が足のトラブルを回避するには、患者の方ご自身が自分の足を毎日確認することが欠かせません。 足に異変を感じたら、すぐに主治医に相談してください。 足の観察やケアは以下のように行ってください。 ・ちょうどよいサイズの靴を履く(靴で足を傷つけないようにする) ・足を常に清潔に保つ(ウイルスや細菌を常に排除する) ・爪を切るとき深爪をしない(ウイルスや細菌の侵入経路をつくらない) ・やけどに注意する 糖尿病患者の方は感覚に関与する神経が障害されるので、合併症ややけどなどによる異変や痛みを感じにくくなっています。そのため「意識的に」足をチェックする必要があるのです。 まとめ 糖尿病を発症すると免疫力が低下します。免疫は体の「防御壁」の1つですので、糖尿病患者の方は常に無防備にある、といっても過言ではありません。 そのため、患者の方は一般の人より、ウイルスや細菌、感染症、皮膚の異常に敏感になる必要があります。体を清潔に保ったり、こまめに足の観察を行うようにしてください。 監修:院長 坂本貞範 糖尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。 糖尿病ってどんな病気?
最終更新日:2023.12.28 -
- 糖尿病
糖尿病と風邪薬の服用について|内科専門医師が配信 糖尿病の治療中に風邪をひいたら、風邪薬と糖尿病の薬の飲み合わせに注意しなければいけません。 「薬の飲み合わせ」とは複数の薬を飲むことで相互作用が働き、本来の効果が出なかったり、逆に効果が出すぎてしまう現象のことをいい、健康に悪影響を及ぼすこともあります。 風邪の治療のために、糖尿病治療を受けている医療機関以外のクリニックにかかったり、市販の風邪薬を服用するときは、医師や薬剤師に必ず現在使っている糖尿病治療薬の名称を伝えてください。 また、患者の方は自身でも気をつけて飲み合わせに注意する必要があります。 糖尿病で服用している薬を確認 飲み合わせを注意するには、まずは糖尿病の治療で服用している薬を確認しておく必要があります。 日本の医療機関では糖尿病の治療で主に次の7種類の薬を使っています。 ・インスリンの抵抗性を改善する:①ビグアナイド薬、②チアゾリジン薬 ・インスリンの分泌を促進する:③スルフォニル尿素薬、④グリニド薬、⑤DPP-4阻害薬 ・糖の吸収や排泄を調整する:⑥α-グルコシダーゼ阻害薬、⑦SGLT2阻害薬 自分の糖尿病治療薬がどれに該当するのか知っておいてください。 いずれも、飲み合わせで効果が効きすぎたり効果が出なかったりすると血糖値が極端に上昇したり下降するなどをはじめに、健康に害を及ぼしたり、治療に影響が出る可能性があります。 こちらも併せてご参照ください 担当の主治医に確認 糖尿病治療の薬の注意点については、事前に主治医に尋ねておくことが大切です。医師に「別の薬を飲むときに気をつけることを教えてください」といえば、注意点を教えてもらえるはずです。 もし確認をする前に次のような症状が起きてしまい、別の医療機関にかかることになったら、すぐに主治医に薬の注意点を確認してください。 ・嘔吐が止まらない ・下痢が止まらない ・熱が38度以上ある ・食欲がない ・血糖値が350㎎/dl以上ある ・意識の状態がおかしい もし主治医にすぐに連絡が取れない場合は、別の医療機関の医師に、現在使っている糖尿病の薬の情報を伝えてください。そうすれば、飲み合わせの悪い薬をすすめられることを回避できるはずです。 注意が必要な相互作用 風邪をひいたときに特に注意しなければならないのは鎮痛剤です。 総合感冒薬や解熱鎮痛剤のなかに含まれているアスピリンという成分が、糖尿病の薬の血糖を下げる効果を増強させてしまうことがあります。 したがってアスピリンと糖尿病の薬を飲み合わせることで、血糖値が下がりすぎてしまう危険があるのです。 また、咳や痰を止める薬に含まれているメチルエフェドリンや麻黄という成分には、糖代謝を促進させ血糖値を上昇させる効果があります。 つまり、血糖値を下げる糖尿病治療薬の効果が抑制される可能性があるのです。 相互作用の予防方法 風邪薬と糖尿病の薬の「悪い飲み合わせ」や「悪い相互作用」を予防するには、医師や薬剤師の服用指示を守ることが大切です。 医師の指示を忘れないように、メモに書いておくなどの予防策を講じておきましょう。 また、単に「糖尿病の薬」と覚えるのではなく、「血糖値の上昇を抑える薬」「血糖値を下げる薬」「インスリンの抵抗性を改善する薬」「インスリンの分泌を促進する薬」「糖の吸収や排泄を調整する薬」といったように、効果について覚えておきましょう。 効果を覚えておくことで、ほかの薬との相互作用を、よりいっそう気をつけることができます。 薬と同様に漢方薬やサプリメントにも注意が必要 漢方薬やサプリメント(以下、サプリ)にも、糖尿病治療薬との相性が悪いものがあります。 風邪をひいたときに処方される漢方薬に麻黄湯(まおうとう)や葛根湯(かっこんとう)があり、これらには麻黄という成分が含まれています。 さきほど「麻黄には血糖値を上昇させる効果がある」と紹介しましたが、それ以外にも麻黄には血管を収縮させる作用があり血圧が上がってしまうことがあります。 糖尿病患者の方は高血圧を併発している場合も多いので、注意が必要です。 逆に血圧を下げすぎてしまうのがセサミンです。糖尿病患者の方のなかには降圧薬を服用していることも多いですが、降圧薬を服用中にセサミンを飲み合わせると血圧が下がりすぎてしまう危険があります。 DHA(ドコサヘキサエン酸)もサプリでは人気の成分ですが、血糖値を高めてしまう効果が確認されています。 DHAは、血糖値を下げる糖尿病治療薬の効果を弱めてしまうかもしれないです。 「漢方薬やサプリは薬ではない」というのは間違いではないですが、飲み合わせで生じるリスクは薬と同様です。健康のために服用している以上、身体への影響はゼロではないのです。 まとめ 医師は糖尿病治療薬を選択するときに、患者の方の状態や体調や生活環境を詳しく調べます。それは、糖尿病の薬の効果が「出なくても」「出すぎても」健康に悪影響を及ぼすからです。 そのため医師は、患者の方それぞれに合わせて薬の効果を厳格にコントロールしています。 したがって糖尿病の患者の方は、「風邪薬や漢方薬やサプリが、そのコントロールを狂わせることがある」と覚えておいてください。 新しい薬や新しいサプリを飲み始める前に、糖尿病治療の主治医か、かかりつけ薬剤師に相談する「くせ」をつけておいてください。 監修:院長 坂本貞範 糖尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。
最終更新日:2022.10.10 -
- 糖尿病
糖尿病を放置すると、生活の質(QOL)を著しく低下させるより重い病気に進行してしまいます。糖尿病は成因によって1型糖尿病と2型糖尿部分類されます。 1型糖尿病はいまだ原因が不明とされていますが、糖尿病の9割を占める2型糖尿病は環境や生活習慣が原因とも言われています。 2型糖尿病であれば、初期のうちに対策に乗り出すことで進行を食い止めることが可能です。 今回は、この2型糖尿病について原因や改善策を解説していきます。「自分は糖尿病かもしれない」と思っている方は、ここで紹介する初期症状を把握し、異変を感じたらすぐに改善・予防策に取り組むようにしてください。 初期の糖尿病の症状 糖尿病の初期の段階では、症状があまり出ないため、病気に気付きにくいという特徴があります。 ただし、高血糖状態が長く続くと次のような症状が出てきます。 ・喉や口の中が乾く ・水分をたくさん摂りたくなる ・尿の回数が増える ・1回の尿量が多くなる ・空腹になりやすい ・体重が急激に減る ・疲れやすい これらの症状が出たとしても、糖尿病の自覚はないかもしれません。しかし、この段階で異変に気付き、治療や対策に乗り出すことが重要です。 ここで放置してしまうと糖尿病が進行してしまい、以下のような症状が現れてきます。 ・手がしびれる ・皮膚にかゆみが生じる ・ものが見づらくなる ・小さな傷でもすぐに化膿する こちらも併せてご参照ください 糖尿病の症状が出る原因 初期症状が起きるメカニズムをみていきましょう。 例えば尿量が増えるのは、腎臓が血糖値を下げようとして尿をたくさん生成するからです。尿が排出することで体内の水分が失われます。 その結果、体は失った水分を補おうとして喉が渇き、水分を多飲するようになります。 尿が増えると体重が減るのは、カロリーが尿で失われるためです。また、糖尿病は細胞のエネルギー吸収を助けるインスリンを減らすので、細胞は痩せ細り、さらなる体重減を引き起こします。 この体重減は健康的なダイエットによるものではありません。さらに、疲労感や眼のかすみといった症状も生じてしまいます。 また糖尿病は神経障害を引き起こしやすく、初期段階では手足がしびれることがあります。しかし、発症理由については明確になっておらず、初期の段階で自覚症状がある人は少ないです。 初期の糖尿病を改善&進行を予防するためにできること 糖尿病の初期症状が現れたら、食生活を改善し、適度な運動に取り組みましょう。「食と運動」は、糖尿病の初期から重度の患者の方まで共通で取り組むべき基本の対策です。 では、糖尿病の改善と進行の予防のために「具体的に何をすべきか」を紹介します。 食事の献立を見直して痩せる 食事による糖尿病対策では、量と質に注目し健康的なダイエットを目指します。 まず量ですが、1日あたりの適正エネルギー量を次の計算式で算出し、それ以上食べないようにします。 ・1日の適正エネルギー量(kcal)=標準体重(kg)×身体活動量(kcal/kg) 標準体重は「身長(m)×身長(m)×22」で算出します。 身体活動量は以下のとおりです。 ・軽労作(デスクワークが多い):25~30(kcal/kg) ・普通の労作(立ち仕事が多い):30~35(kcal/kg) ・重い労作(力仕事が多い):35~(kcal/kg) 例えば、身長170㎝(1.7m)の普通の労作の仕事に就いている人の1日適正エネルギー量は「1,907.4~2,225.3kcal」で、次のように計算します。 ・標準体重=1.7m×1.7m×22=63.58㎏ ・1日の適正エネルギー量=63.58㎏×30~35kcal/kg=1,907.4~2,225.3kcal 次に食事の質について見ていきます。 ポイントは、炭水化物とたんぱく質と脂質のバランスです。理想のバランスは以下のとおりです。 ・炭水化物:1日の適正エネルギー量の50~60% ・たんぱく質:1.0~1.2g×標準体重の数字(例:標準体重60㎏の人なら、60~72g) ・脂質:1日の適正エネルギー量の20~25% 理想の食事は、主食1品、主菜1品、副菜2品です。次のような食材を摂ることをおすすめします。 ・主食:ご飯、パン、めん類など ・主菜:良質なたんぱく質、魚類、大豆製品、卵、肉など ・副菜:野菜、キノコ類、こんにゃく、海藻など ・その他:牛乳、ヨーグルト、果物 しかし、性別、年齢、糖尿病の進行状況、合併症などによって上記の計算が当てはまらない場合があります。 必ず主治医と相談しながら決めてください。 運動して痩せる 糖尿病予防や、初期の糖尿病対策としておすすめしたい運動は、有酸素運動と筋力トレーニングです。この2つの運動に取り組んで、標準体重を目指しましょう。 有酸素運動には、ウォーキングやジョギング、水泳などがあります。最も手軽なのがウォーキングです。ウォーキングは1回15~30分、1日2回を目指しましょう。 また、運動の時間を確保しづらい場合は、通勤や買い物などの日常の歩行とウォーキングを合わせ、1日1万歩を目標にしてください。 これまで運動習慣がなかった人がいきなり激しい動きをすると体調を崩しかねませんので、必ず柔軟体操などの準備運動をしてから始めるようにしてください。筋力トレーニングは週2~3回取り組むようにしましょう。 ただ、重度の糖尿病の方や高齢の方は負荷が大きい筋力トレーニングをすると血圧の上昇を招き、心臓や血管に悪影響を及ぼすので注意してください。 なお、運動や筋力トレーニングの量やメニューは主治医と相談して決めることをおすすめします。 初期のうちに治療するべき理由 糖尿病は初期の段階では自覚症状がほとんどありませんが、放置しておくと合併症を引き起こす可能性があります。 糖尿病の合併症には、目の病気、神経の病気、腎臓の病気、血管の病気、心臓の病気、脳の血管の病気などさまざまです。 病名としては、糖尿病網膜症、糖尿病神経障害、糖尿病腎症、足の壊疽、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などがあります。 心筋梗塞や脳梗塞は「死を招く」と言われるほど危険な病気で、死に至らないまでも失明や足の切断といった生活の質(QOL)を著しく落とす事態になりかねません。 これらの合併症は、糖尿病が進行することで発症します。つまり、合併症を起こさないためにも、初期の段階で糖尿病の進行を食い止め、改善に向けて治療する必要があるのです。 まとめ 糖尿病は完治の難しい病気ですが、初期段階で食事療法や運動療法に取り組めば、進行を食い止め正常な人と同様の生活を送ることができます。 初期症状に気がついたら、糖尿病の治療を専門にしている医師を訪ねたり、内科のクリニックを受診してみてください。 早期発見をして、合併症を引き起こす前に生活習慣の改善に取り組みましょう。 監修:院長 坂本貞範 糖尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。 https://africatime.com/topics/7771/
最終更新日:2022.09.21 -
- 糖尿病
食事療法や運動療法を試みても血糖値が下がらない。そんな糖尿病患者の方には、体質や症状に合う薬物治療が必要となります。 こちらでは、2型糖尿病の方に適用される治療薬の詳細情報を紹介していきます。 経口血糖降下薬とは 糖尿病に有効な薬物療法のうち、とくに2型糖尿病の治療で広く使われているのが、経口血糖降下薬です。 食事療法や運動療法による血糖コントロールが難しい場合、病状やそれにともなうコンディション、高血糖状態に合わせて経口血糖降下薬が用いられます。 経口血糖降下薬の特徴は、次の3つに集約されます。 ● インスリンの分泌を増やす ● インスリンの作用を向上させる ● 糖の吸収を助け、排泄を調節する 3つの作用機序により分類された薬を、合併症の有無や病態に応じて使用し、経過をみる方法が一般的です。1剤もしくは2剤以上を併用します。 スルホニル尿素(SU)薬 スルホニル尿素(SU)薬の特徴を簡潔にまとめると、次のとおりです。 ● もっとも古いタイプの経口血糖降下薬:1950年代に登場。これまでに多くの薬剤が販売される。 ● 血糖値の確実な下降に期待:強力なインスリン分泌刺激作用は服用後すぐに効果を発揮 ● まずは少量投与から:効き目が強いため、少量投与であっても低血糖のリスクあり。 薬の作用 インスリンを活発化させて血糖値の上昇を抑制する治療薬です。 有効成分がすい臓のランゲルハンス島に浸透し、そこのβ細胞に直接働きかけてインスリン分泌を促進。基礎分泌量および追加分泌量を増加させることで、血糖を下げていきます。 インスリンへの分泌刺激はしばらく持続し、血糖コントロールを助けます。 主な副作用 血糖値の改善がみられる一方、低血糖に注意する必要があります。食前や、いつもと違う時間に食事をとったりすると、影響を受けやすくなるでしょう。 そのほかにも、腎機能・肝機能が低下した方、高齢者の方は、低血糖への十分な配慮が求められます。 SU薬はインスリン分泌刺激作用がとくに強い薬のため、血糖を下げる力が極めて強力です。服用時は、低血糖になった場合の対処法について熟知し、何かあればすぐに主治医に相談しましょう。 こちらも併せてご参照ください この薬での治療が向いている患者 食事療法・運動療法だけではインスリン分泌量に改善がみられず、空腹時血糖値が高め、かつ肥満でない人に用いられる薬です。 すい臓でインスリンは分泌できるものの、十分な分泌量をキープできないため血糖値の上昇は止められないので、インスリン分泌をサポートする目的で使用されています。 飲み方の注意点 SU薬は、食事療法や運動療法をしっかりこなした状態で服用してこそ効果が持続します。 食事・運動療法ができていない状態で服用を続けていると、食べすぎや運動不足から肥満化が進み、血糖値が上昇してしまいます。 その結果、薬を増量しなければ対応できず、体に負担がかかってしまいます。 食事・運動でコンディションを整えた状態でも、次第にSU薬の効果が薄れるケースもあります。 高血糖状態が続き、薬を長期使用しているとβ細胞の働きが低下してしまい、インスリン分泌の働きが弱くなってしまうのです。 この場合では、他の薬との併用や切り替え、あるいはインスリン療法へ移行するなど柔軟な対応が望まれます。 一般名・商品名一覧 現在7種のスルホニル尿素(SU)薬が販売されています。 種類により、使用する時間・効き目の強さなどが異なります。 患者の方の血糖値やインスリンの働き具合を計測しつつ、薬剤の特性と照らし合わせながら、最適とおもわれる商品を医師が選択します。 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬) 速攻型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)の特徴は次の3点です。 ● メカニズムはSU薬と酷似:作用メカニズムはSU薬と同じながら、吸収・分解がさらに速い ● 服用は主に食後:服用から約30分後に効果が現れ、約60分後に最大化、約4時間後に消失 ● 副作用は低血糖:肝機能・腎機能障害がある方はとくに注意 薬の作用 インスリンの分泌力が低下している2型糖尿病の方は、血糖を速やかに低下させる力が慢性的に落ちている状態です。 これを改善するには、血糖の上昇にインスリン分泌のスピードを合わせる働きかけが必要となります。速攻型インスリン分泌促進薬は、そのスピードを高め、食後の血糖上昇を抑える効果を持っています。 分泌スピードに重きを置く薬のため、食後のインスリン分泌量の増加はSU薬ほど認められません。 主な副作用 効果の現れがはやい反面、こちらも低血糖を招く可能性があります。毎食直前の服用時間をきちんと守るようにしてください。 同時に、低血糖の症状やその対策について把握しておくことも大切です。対処法としては、ショ糖(砂糖)20gを常に携行する、などがあります。 この薬での治療が向いている患者 インスリン依存がみられず、食事・運動療法といったアプローチでも改善がなかなかみられない、なおかつ食後に高血糖がみられる。 そのような状況の2型糖尿病の方に向いています。すでにSU薬を使って治療を受けている患者さんには不向きの治療薬です。 飲み方の注意点 速攻型インスリン分泌促進薬を使う前提として、食事療法・運動療法がきちんとこなせている状態が求められます。 服用のタイミングは毎食の食前。食後の服用は絶対に避けてください。また、SU薬との併用も禁止です。 はやいタイミングでの服用は低血糖リスクを高めるため、服用時間を必ず守るようにしましょう。 この薬は原則、「SU薬を用いる前に使用する薬」という位置付です。SU薬を使用しても効果がみられない状態は、糖尿病がかなり進行していると予想されます。 その場合は病態とインスリン分泌力に合わせ、別の治療薬が用いられます。 一般名・商品名一覧 現在、3種類の速攻型インスリン分泌促進薬が販売されています。 DPP-4阻害薬 DPP-4阻害薬の主な特徴は以下のとおりです。 ● 低血糖リスクが小さい:単独使用では低血糖の可能性は低い ● 肥満防止に役立つ:血糖コントロールの改善で体重が増加しにくい 薬の作用 血糖値が高いときにインスリンの分泌を促す「インクレチン」と呼ばれるホルモンの働きを助ける治療薬です。 インクレチンには、血糖値を上げるホルモン「グルカゴン」の分泌を抑制する作用も持ちます。 主な副作用 低血糖、便秘などの副作用に注意してください。とくに、スルホニル尿素(SU)薬の服用経験があるうえでの使用は、低血糖のリスクが高まります。 この薬での治療が向いている患者 DPP-4阻害薬は、単独使用であれば低血糖のリスクを軽減できます。ほかの薬に頼らず、DPP-4阻害薬のみの服用で血糖値をコントロールできる人に向いた薬です。 経口血糖降下薬のなかでも低血糖のリスクは低い薬ですが、肝障害、腎障害を抱えた患者さんは用心してください。 飲み方の注意点 ほかの薬と併用すると、低血糖が起きやすくなるので、なるべく単独で使用がすすめられています。スルホニル尿素(SU)薬と併用、肝障害、腎障害の方はとくに気をつけてください。 一般名・商品名一覧 現在、DPP-4阻害薬は次の9種が市販されています。 ほかの治療薬と同様、患者の方の症状、糖尿病の進行度合いなどをみて、医師が最適な薬を選択します。 ビグアナイド薬 ビグアナイド薬の主な特徴は以下のとおりです。 ● SU薬の後発:SU薬より数年遅れて販売される ● 主に肝臓に作用:肝臓の糖の放出を抑制 ● 低血糖になりにくい:インスリン分泌を刺激しないため、他の薬を併用しない限り低血糖の危険性が低い 薬の作用 ビグアナイド薬は、インスリン抵抗性で過剰になった肝臓の糖新生を抑制する働きを持つ治療薬です。 糖新生とは、肝臓で乳酸やアミノ酸などのブドウ糖以外の物質から糖を産生する過程をいいます。 インスリンはこの糖新生を適度にコントロールする働きがあるのですが、インスリン分泌機能が低下した2型糖尿病の方は、糖新生が慢性的に過剰状態となります。 過剰になった糖新生を抑え、空腹時血糖を下げる目的で、このビグアナイド薬が用いられます。 主な副作用 消化器系統が影響を受けやすく、吐き気や食欲不振、下痢などを起こす場合があります。 また、倦怠感や筋肉痛なども報告されているため、万が一これらの症状が確認されたら必ず主治医に相談してください。 この薬での治療が向いている患者 肥満型で、インスリン抵抗性による高インスリン血症が認められる2型糖尿病との相性がよい薬です。肥満でない方が使用しても血糖コントロールが改善される場合もあります。 飲み方の注意点 服用と同時にアルコールの摂取、そのほかの薬剤およびインスリン療法治療薬との併用は、低血糖リスクを高めます。 まれにですが、血液中に乳酸がたまり、意識障害を起こす「乳酸アシドーシス」を発症することがあります。 また、心臓・肝臓・腎臓・肺に障害がある方や循環器系に障害がある場合の服用は認められていません。 一般名・商品名一覧 現在、ビグアナイド薬として利用できるのは以下の2種類です。 肥満体質でない方も服用できますが、最終的には主治医が判断します。 インスリン抵抗性改善薬(チアゾリジン薬) インスリン抵抗性改善薬(チアゾリジン薬)の特徴は以下のとおりです。 ● 血糖値降下作用:インスリンに対する感受性を高め、血糖値を下げる ● 低血糖の可能性は低い:単独使用であれば、低血糖のリスクを軽減できる 薬の作用 インスリン抵抗性改善薬には、インスリン抵抗性の主因である脂肪組織に働きかけ、抵抗物質を減少させる作用があります。 インスリンの分泌力に問題がなくても、肝臓や骨の組織、脂肪組織でのインスリン反応が鈍化していれば、その効き目は弱まり、血糖値の上昇を招く可能性が高まってしまいます。 そのインスリン抵抗性を引き起こす主な原因が肥満のため、インスリン抵抗性の改善では脂肪組織への作用が重要なのです。 主な副作用 まれに肝機能障害を引き起こすことがあります。もともと肝臓に不安のある方は、定期的な肝機能検査が必要です。肝機能障害の重症度によっては、服用が認められません。 本薬を使用すると、体内に水分がたまりやすくなります。そのため、心不全の合併、もしくは過去に心不全を起こしている場合は、インスリン抵抗性改善薬は使用できません。 また、低血糖の可能性は低いものの、浮腫、貧血などの副作用が起こることもありえます。血清LDH、血清CPKの上昇にも注意が必要です。 この薬での治療が向いている患者 肥満タイプで、インスリン抵抗性による高血糖が原因の糖尿病患者の方に有効です。肥満でない方が用いても問題ありません。SU薬との併用でも用いられます。 飲み方の注意点 食事療法で体質改善ができていない状態で服用すると、体重が増加してインスリン抵抗性状態に逆戻りする場合があります。そのため、食事療法も並行してしっかりと行うことが大切です。 一般名・商品名一覧 現在、インスリン抵抗性改善薬は「ビオグリタゾン塩酸塩」のみ販売されています。 肥満タイプでインスリン抵抗性の激しい糖尿病患者さんに有効です。 α-グルコシダーゼ阻害薬 α-グルコシダーゼ阻害薬の特徴は下記のとおりです。 ● 小腸の糖の消化・吸収を遅らせる:α-グルコシダーゼの働きを阻害し、糖質の分解を抑制 ● 体重が増加しにくい:食後の血糖値を抑えるため、肥満防止につながる ● 低血糖になりにくい:単独使用であれば低血糖の心配はなし 薬の作用 α-グルコシダーゼ阻害薬は、小腸でブドウ糖を分解する「α-グルコシダーゼ」という酵素の働きを阻害することで、食後の血糖値の上昇を抑える効果を持ちます。 インスリンには、分解されて血液中に送られたブドウ糖をエネルギーに変え、各組織に送る役割があります。 健康体であればブドウ糖の処理もスムーズですが、インスリン分泌力が低下している糖尿病の方だとブドウ糖の処理が間に合わず、血糖値の上昇を招くことになるのです。 このアンバランスを改善するには、α-グルコシダーゼの働きを阻害し、ブドウ糖の消化吸収を遅らせる必要があります。この作用により、食後の血糖値上昇を防ぐことができるのです。 主な副作用 初期はお腹の張りやおならの増加、下痢など消化器系統の症状に悩まされる場合もあります。 これらの症状は一時的なもので、服用をしばらく続けるうちに改善していくため過度に心配することはありません。 この薬での治療が向いている患者 空腹時血糖値は高くないが食後に血糖が上がってしまう、軽度の2型糖尿病の方に処方されます。中レベルの症状の方に対しては、ほかの薬との併用パターンで治療が試みられます。 飲み方の注意点 食前の服用が大原則です。単独使用では低血糖の可能性は低いのですが、SU薬などほかの薬との併用では血糖値の異常低下が起こりえます。 本薬を使用中に低血糖が起こった場合は、必ずブドウ糖を摂取してください。ただしブドウ糖の分解を抑えているため、低血糖はすぐには改善されません。 一般名・商品名一覧 現在、α-グルコシダーゼ阻害薬は3種の商品が販売されています。 ※上記商品一覧は代表する一部の商品です 軽症の2型糖尿病の方に使用される薬ですが、医師の判断によりほかの薬との併用もあります。 SGLT2阻害薬 SGLT2阻害薬の主な特徴は次のとおりです。 ● 腎臓に作用して血糖を下げる:尿中に糖を排出させることで、血糖を下げる ● 腎臓機能の負担はなし:腎機能が低下している人でも影響はない ● ほかの治療薬への影響は少ない:ほかの薬との併用でなければ低血糖のリスクなし 薬の作用 SGLT2阻害薬は、腎臓内のブドウ糖の吸収を抑えることで、血糖コントロールを是正します。 腎臓には「糸球体」と呼ばれる、原尿を生成する、ろ過装置がありますが、血液中の糖分はここを通らずそのまま尿として排泄されます。 その一方で、体に取り込むための糖は腎臓の尿細管を通り、そこで再度取り込まれ、血液に戻されます。 SGLT2阻害薬は、この尿細管を通るブドウ糖の血中取り込みを防ぎ、尿中に糖を放出して血糖値を下げる作用があるのです。 主な副作用 服用中は性感染症や脱水症状、頻尿などに注意してください。インスリン分泌への働きかけはないため単独使用では低血糖の恐れはありません。 ただし、ほかの薬との併用には注意する必要があります。また、高齢者には上記以外の副作用も考えられますので、医師から説明を受けたうえで服用するようにしてください。 この薬での治療が向いている患者 食事療法・運動療法では十分な血糖値の改善がみられない方に使用されます。肥満傾向の方への服用例も少なくありません。 飲み方の注意点 薬だけに頼るのではなく、医師管理のもとでの食事、適度な運動も治療として取り入れながら改善を目指しましょう。 飲み忘れや決められた時間以外での服用は、効果が弱くなるので注意が必要です。生活上の理由で服用が困難な場合は、医師に相談し、ライフスタイルに合う服薬の方法を提案してもらいましょう。 一般名・商品名一覧 現在、SGLT2阻害薬は6種類の商品が販売されています。 いずれを選ぶにしても、症状や経過をみて医師が判断します。 配合薬 配合薬とは、いくつかの薬を組み合わせた治療薬です。飲む薬の数を減らせるため、服薬が楽になるメリットがあります。 薬の作用 配合されるそれぞれの薬の持つ作用機序を利用して、血糖値の改善を試みます。 具体的な例を挙げれば、「ピオグリタゾン塩酸塩+メトホルミン塩酸塩(メタクト配合錠LD/HD)」があります。ピオグリタゾン塩酸塩はチアゾリジン薬で、インスリン抵抗性の改善効果を持つ治療薬です。 メトホルミン塩酸塩は、ビグアナイド薬で、これは糖新生を抑えて血糖値をコントロールする働きがあります。 主な副作用 配合される薬の副作用に注意が必要です。インスリン分泌に直接作用を及ぼす薬は、低血糖のリスクがあります。 この薬での治療が向いている患者 配合対象の薬と、患者さんの病態、インスリン分泌力をみながら、医師がどの薬との配合が適切か判断します。 肝機能や腎機能に障害を抱える方は、肝臓・腎臓への負担が少ない薬が選ばれるでしょう。 飲み方の注意点 それぞれの薬の特徴、服用時の注意点に合わせて飲むようにしてください。体に合わない、体調不良などの異変を感じた場合は、すみやかに医師に相談しましょう。 一般名・商品名一覧 現在、配合薬は以下の8種の商品が販売されています。 配合薬を選ぶ場合も、患者さんの状態をよく知る主治医が最終的に判断します。 まとめ 今回紹介した経口血糖降下薬を、「インスリンに作用するもの」「インスリン以外に作用するもの」「インスリンにもインスリン以外にも作用するもの」に分類します。
最終更新日:2022.09.21