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糖尿病を診断するための検査内容|その基準になる値についてもご説明 「糖尿病予備軍だね」周りからそういわれたものの、実際に糖尿病かどうかはどうやって診断するのかわからないという人も多いでしょう。きちんと検査をして糖尿病かどうか判断したいですよね。 この記事では、糖尿病であるかどうかどうやって判断するのかについて、検査方法や診断基準を踏まえて解説します。 糖尿病であると気づくきっかけ 糖尿病は以下の4つのケースで気付くというのが一般的です。 ・献血に行ったときに、糖尿病の可能性があることが分かった ・定期健康診断や人間ドックで判明した ・ほかの病気でお医者さんにかかったときに判明した ・合併症による症状が出て受診したときに判明した いずれの場合も、「糖尿病の検査をしよう」と思って検査をしたわけではなく、たまたま見付かったケースが目立ちます。 初期症状についてはこちら 糖尿病の初期症状を改善する!早期発見・治療が重要な理由 糖尿病を診断するための検査方法 糖尿病であるかどうかは以下の3つの血糖検査とHbA1c検査によって総合的に判断されます。 ・早朝空腹時血糖検査 ・随時血糖検査 ・75g経口ブドウ糖負荷試験 ・HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)検査 血糖値とHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー) 血糖値とは血液中のブドウ糖の濃度を示したものです。一方、HbA1cは糖化ヘモグロビン(糖と結合したヘモグロビン)の割合になります。 ヘモグロビンは赤血球にある色素で、各細胞に酸素を運ぶ役割があります。ヘモグロビンは生成されてから120日で消失するため、HbA1cには過去1~2ヶ月の平均の血糖値が反映されます。 こちらも併せてご参照ください 糖尿病と診断されるHbA1cと血糖値とは|目標値も解説 3つの血糖検査 前述の3つの血糖検査は、それぞれ別のタイミングで実施されます。 早朝空腹時血糖値 血糖値検査の当日、朝食を抜いた状態(空腹時)の血糖値を測定します。早朝空腹時血糖値が126mg/dl以上である場合は糖尿病型(糖尿病の疑いがある)と診断されます。糖尿病型の詳細については後述します。 随時血糖値 食後の時間を定めずに測定した血糖値のことをいいます。随時血糖値が200mg/dl以上の場合に糖尿病型と診断されます 75g経口ブドウ糖負荷試験 75g経口ブドウ糖負荷試験は75gのブドウ糖を摂取し、2時間経過したあとの血糖値を測定する検査で、75gOGTTとも呼ばれています。75g経口ブドウ糖負荷試験の血糖値が200mg/dl以上で糖尿病型と診断されます。 検査結果の診断 糖尿病の検査結果には判定基準があり、判定結果は3段階に分類されます。 血糖値の3段階の分類 糖尿病の検査結果は、血糖値の高さによって3段階に分かれます。それぞれ詳しく見ていきます。 糖尿病型 糖尿病型とは「糖尿病の疑いがある」ということです。 以下の①~④の4つの糖尿病検査の結果が一定の値を超えた場合は「糖尿病型(糖尿病の疑いがある)」と判断されます。さらに、①~④のいずれかと④が一定の値を超えた場合は「糖尿病」と診断されます。 ①早朝空腹時血糖検査 ②随時血糖検査 ③75g経口ブドウ糖負荷試験 ④HbA1c検査 境界型 境界型は糖尿病予備軍と呼ばれることもあります。検査結果が糖尿病型と正常型の間である場合に境界型と判定されます。 境界型は糖尿病ほど血糖値が高いわけではありません。しかし、境界型は正常値よりも血糖値が高く、糖尿病になりやすい状態です。 また、高血糖が続くと血管はダメージを受けます。そのため、境界型の段階で生活習慣を改善することが重要になります。 正常型 糖尿病検査の結果が正常値であるという意味です。以下の2つを満たす場合に正常型と判断されます。 ・早朝空腹時血糖値:110mg/dl未満 ・75g経口ブドウ糖負荷試験:140mg/dl未満 糖尿病の診断基準 糖尿病の診断は医師が下記の判定基準に従って行います。「糖尿病型」「正常型」いずれにも該当しない場合は境界型と判断されます。 引用元:東京都病院経営本部「糖代謝異常の判定区分と判定基準」 以下のいずれかに該当する場合、糖尿病と判断されます。 ・同日あるいは別の日に2回糖尿病型が確認された場合 ・表の(1)~(3)のいずれかと(4)が糖尿病型と診断された場合 まとめ 糖尿病の検査方法や判定基準について説明しました。「糖尿病予備軍」や「境界型」は糖尿病ではありませんが、糖尿病になりやすい状態です。「糖尿病じゃないから」と何の対処もせずにいると糖尿病を発症する可能性があります。 これらの判定を受けたら生活習慣の改善に努め、糖尿病を発症しないよう心がけましょう。
最終更新日:2022.10.31 -
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糖尿病が原因の指先の症状|手足の神経症状の原因と治療法 糖尿病はさまざまな原因で高血糖状態が続く病気です。初期段階では自覚症状はほとんどありませんが、そのまま放置しておくとさまざまな症状が現れます。 糖尿病が進行すると手や足に痛みやしびれなどの症状が現れることもあります。 糖尿病と手足の痛みやしびれは一見関係がなさそうに思えますが、なぜ糖尿病になると手足に痛みやしびれを感じるのでしょうか。 また、これらの症状が出たからといって自己判断は禁物です。糖尿病の神経障害は病状によって治療法が変わります。 この記事では、糖尿病によって手足にしびれや痛みを感じる理由や治療法について解説します。 糖尿病が指先に引き起こす症状 糖尿病を放置すると手足に以下のような症状が現れることがあります。 ・指先のしびれや痛み ・指先や手足の感覚が鈍くなる 以下で詳しく見ていきます。 指先のしびれや痛み 糖尿病の手足の症状としては、まず足の裏や足の指にしびれや痛みを感じるようになります。はじめのうちは手指に症状は現れません。しかし、糖尿病が進行すると手の指にもしびれや痛みなどの症状が現れるようになります。 指先や手足の感覚が鈍くなる さらに糖尿病が進行すると手足の感覚が鈍くなります。これは糖尿病の進行に伴って神経の働きが失われることによるものです。 手足の感覚が鈍くなると、ケガや火傷をしても痛みを感じないためケガをしていることに気付きにくくなります。 早い段階で処置をすれば治るような軽い傷であっても、傷があることに気付かずに放置してしまい、治りにくくなることがあります。最悪の場合、感染症にかかり、細胞が壊死することもあります。 糖尿病で指先に痛みが出る原因 糖尿病による手足の指先の痛みやしびれは糖尿病の合併症によるものです。 糖尿病の代表的な合併症として「糖尿病網膜症」「糖尿病神経障害」「糖尿病腎症」の3つがあります。糖尿病の手足の指先のしびれや痛みは糖尿病神経障害の症状になります。ではなぜ糖尿病が進行すると手足の指先にしびれや痛みなどの神経障害が生じるのでしょうか。 明確な原因はわかっていませんが、高血糖状態が続くことでソルビトールという神経障害を引き起こす物質が神経細胞に蓄積することが原因とする説があります。 こちらも併せてご参照ください 一方、高血糖状態が続くと毛細血管の血流が悪くなります。血流が悪くなると神経細胞にとって必要な栄養や酸素が運ばれにくくなるため神経障害が起こるという説もあります。 糖尿病の神経障害の治療法 糖尿病の神経障害が軽度の場合、生活習慣や内服薬によって血糖コントロールを行い、症状を進行させないことが重要です。症状によっては痛みや症状を軽減するための薬物療法を取り入れることもありますが、いずれにしても血糖コントロールは必須になります。 食事療法 糖尿病は高血糖が続く病気です。食事の量や食べ方、食事内容を調整する食事療法は血糖コントロールに有効です。 糖尿病の食事療法では以下の7つのポイントが重要になります。 ・1日分のエネルギー量を主治医に確認する ・栄養バランスの良い食事を1日3食規則正しく食べる ・よく噛み、ゆっくりと食べる ・夜食を避ける ・肉類の脂肪・塩分は減らす ・食物繊維を積極的に取る ・外食では一品料理を避け、油の少ない和食や魚を選ぶ 運動療法 一般的に、糖尿病の血糖コントロールは食事療法と運動療法を併せて行うことが効果的といわれています。 運動療法は肥満を解消してインスリンの働きを良くしたり、血中のブドウ糖を消費することで血糖値を下げる効果があります。 ただし、糖尿病の神経障害が重い場合は運動することは避けたほうが良いでしょう。 神経障害が重い患者の方が運動を行うと、ケガをしても気付かずに放置してしまうことがあります。また、自律神経に障害がある場合は低血糖が起こっても気付かず、意識障害を起こすこともあります。 運動療法を取り入れるべきかわからない、運動療法を取り入れたいといった場合は必ず医師に相談しましょう。 薬物療法 糖尿病の神経障害では、非ステロイド性消炎鎮痛剤や抗うつ剤、抗てんかん薬などでしびれや痛みなどの症状を抑える治療を行うことがあります。 また、状況によって症状をやわらげるためにアルドース還元酵素阻害薬を用いられることもあります。先ほど、糖尿病の神経障害はソルビトールという物質が神経細胞に蓄積することが原因といわれていると説明しました。 ソルビトールはアルドース還元酵素の働きによって体内でブドウ糖から生成されます。アルドース還元酵素阻害薬はアルドース還元酵素を阻害するため、ソルビトールの生成を抑える効果があるのです。 糖尿病の神経障害のチェックシート 糖尿病と診断され、手や足にしびれや痛みがある。 これは糖尿病による症状なのかどうか心配ですよね。糖尿病の神経障害に関しては以下のようなチェックリストがあります。こまめに自分の手足をチェックし、「おかしいな」と思ったら医師に相談してみると良いでしょう。 【足の症状のチェックリスト】 ・明日の先がピリピリ・ジンジンする ・足の先に痛みがある ・足の先がしびれる ・足の感覚に異常がある(痛みを感じにくい・感覚が鈍い・ザラザラした感触など) ・足がつる(こむら返り) 【足の外観のチェックリスト】 ・皮膚が赤くなったり、腫れている部分がある ・小さな傷が治りづらい ・まめやたこ、うおのめ、靴擦れができやすい ・皮膚が乾燥する ・皮膚にひび割れがある ・皮膚の硬い部分が増えてきた ・みずむしなどの感染症がある 日本医師会のウェブサイトでは以下のチェックシートを掲載しています。こちらも併せて参考にしてください。 引用元:日本医師会「糖尿病患者さん足チェックシート」 まとめ 糖尿病の手や足の指先に現れる症状や治療法について解説しました。 手足のしびれや痛みを糖尿病の症状だと気付かず放置してしまうと細胞が壊死し、最悪の場合、足を切断することもあります。特に足の裏や足の先は意識しなければ「じっくり観察しよう」なんて思いませんよね。 ここで紹介したチェックリストやチェックシートなどを利用し、こまめに手足のチェックを行うことが大切です。少しでも違和感を感じたら、自己判断せず必ず医師に相談しましょう。 尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。 https://africatime.com/topics/7771/
最終更新日:2022.09.29 -
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糖尿病で体重が減少することがある!その原因や症状を知ってコントロールする しっかり食べているにも関わらず体重が減り、周りから「糖尿病じゃないの?」と言われたことはありませんか?でも、「糖尿病は太っている人の病気」という印象が強いため、「糖尿病で体重が減る」と聞いてもピンとこない人もいるでしょう。 では、実際に糖尿病で体重が減ることはあるのでしょうか。この記事では糖尿病と体重の関係について分かりやすく解説していきます。 糖尿病で体重が減少することがある 実は糖尿病になると体重が減ることがあります。では、なぜ「糖尿病は太っている人がなるもの」というイメージが強いのでしょうか。 食事を摂ると血糖値が上がります。このとき、すい臓からインスリンが分泌されて血液中のブドウ糖を消費し、血糖値を下げます。糖尿病は、何らかの理由でインスリンの分泌量が低下したり、インスリンが効かなくなり、高血糖状態が続く病気です。 一方、インスリンの働きが悪くなると、食事で摂ったブドウ糖をエネルギーとして利用することができなくなります。その結果、筋肉や脂肪を分解してエネルギーとして利用するようになります。糖尿病で体重が減るのはこのためです。 実は「糖尿病は太っている人がなるもの」というイメージは、【日本の糖尿病患者の9割以上が2型糖尿病であるため】と考えられます。これについては後述します。 1型糖尿病と2型糖尿病 糖尿病にはいくつか種類がありますが、大別すると「1型糖尿病」と「2型糖尿病」に分かれます。 1型糖尿病と2型糖尿病の大きな違いは発症原因と症状の現れ方にあります。1型、2型いずれの糖尿病でも体重減少が見られますが、2型糖尿病は初期段階ではほとんど自覚症状がありません。一方、1型糖尿病は急激に症状が現れます。 1型糖尿病とは 1型糖尿病は突然症状が現れるというのが特徴です。若い方が糖尿病を発症した場合は1型糖尿病であることが多いですが、基本的には年齢や体型などに関係なく発症します。 以下で1型糖尿病の発症原因と主な症状について見ていきます。 1型糖尿病の原因 1型糖尿病は何らかの原因ですい臓にあるβ細胞が破壊される病気です。インスリンはこのβ細胞から分泌されるため、1型糖尿病になるとインスリンがほとんど分泌されなくなります。β細胞が破壊される原因は正確にはわかっていませんが、原因の1つに免疫反応の異常(自己免疫反応)があると考えられています。 1型糖尿病の症状 1型糖尿病も2型糖尿病も基本的には高血糖状態が続くことによる症状が現れます。ただし、1型糖尿病は以下のような症状が突然現れるという特徴があります。 ・急激な体重減少 ・多飲 ・頻尿 ・疲労感 など 2型糖尿病とは 日本の糖尿病患者の9割以上を占めるのが2型糖尿病です。1型糖尿病と違い、初期段階では自覚症状がほとんどありません。 2型糖尿病は遺伝や生活習慣などが原因で発症すると考えられているため、比較的過体重の方が発症するケースが多いです。「糖尿病は太っている人がなる病気」という印象が強いのは2型糖尿病によるものと考えられます。 以下で2型糖尿病の発症原因と主な症状について見ていきます。 2型糖尿病の原因 2型糖尿病になりやすい人には以下の特徴があります。 ・家族に糖尿病患者がいる ・過体重 ・運動不足 ・年齢が40歳以上 など 上記のように、2型糖尿病は体質などの遺伝的要因と生活習慣が組み合わさることで発症すると考えられています。 2型糖尿病の症状 1型糖尿病と違い、2型糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどありません。また、症状が現れる場合も以下のような症状がゆっくりと現れます。 ・空腹感 ・体重が減る ・多飲 ・頻尿 ・疲労感 ・目のかすみ ・皮膚の乾燥 ・ケガが治りにくい ・手足の感覚が鈍くなる など 糖尿病は放っておくと「糖尿病網膜症」「糖尿病神経障害」「糖尿病腎症」などの重篤な合併症を招くことがあります。最悪の場合、失明したり、足を切断することもあります。早い段階で治療に取り組み、病気を進行させないことが重要になります。 糖尿病の予防と治療 糖尿病は発症すると完治することができません。したがって、糖尿病は発症する前の段階で予防することが大切です。また、高血糖状態が続くとさまざまな合併症を引き起こします。糖尿病と診断されたら、適切な治療を行い、初期の段階で病気の進行を食い止めることが重要になります。 以下で糖尿病の予防法と治療方法について見ていきます。 1型糖尿病の場合 前述のとおり、1型糖尿病は原因がはっきりしていないため、予防法が確立されていません。また、1型糖尿病患者の方はインスリンがほとんど分泌されないため、体の外からインスリンを補充するインスリン治療を行う必要があります。 2型糖尿病の場合 2型糖尿病は遺伝的要因と生活習慣が組み合わさることで発症するといわれています。したがって、生活習慣を見直すことが糖尿病の予防につながります。 2型糖尿病の予防法 肥満はインスリンの作用を低下させることがわかっています。肥満と診断された方や過体重の方は、食事や運動などで肥満を解消し、体重を減らすことが重要です。 また、食べ過ぎると過剰にインスリンを分泌するのですい臓にも負担をかけます。そのため、バランスが良く、適切な量の食事を摂ることも大切です。 糖尿病を予防するためには以下のポイントを押さえた食事を心がけましょう。 ・食事は腹八分目を心がける ・間食を控えて規則正しく3食(朝・昼・晩)と食べる ・野菜やきのこなどの食物繊維を積極的に摂る ・外食をするときは和食の定食を選ぶ ・夜食は避ける また、運動も糖尿病予防に効果的です。適度な運動はインスリンの効果を高めることがわかっています。さらに運動をすると血液中のブドウ糖が消費されやすくなるため、血糖値を下げる効果があります。 糖尿病予防に運動を取り入れるときは以下のポイントに注意しましょう。 ・無理をせず体調に合わせる ・軽い運動から始める ・できるだけ毎日続ける このほか、ストレスや睡眠不足も糖尿病を招くといわれています。ストレス改善に努め、十分な睡眠を取ることを心がけましょう。 2型糖尿病の治療法 糖尿病は完治することはできませんが、血糖値をコントロールすることで健康な人と変わらない状態を保つことができます。 2型糖尿病の治療法には以下の3つがあります。 ・食事療法 ・運動療法 ・薬物療法 2型糖尿病と診断されたら、まずは食事療法と運動療法などの生活習慣を改善することで血糖値のコントロールを行います。 これらの治療を行っても血糖値が改善しない場合は薬物療法を行います。薬物療法には内服薬によるものと注射薬があります。薬物療法を行う場合も食事療法と運動療法は継続して行います。 内服薬にはインスリンの効きを良くする薬やインスリンの分泌量を高める薬、食後の高血糖を抑える薬などがあります。一方、注射薬には体の外からインスリンを補充する薬などがあります。 まとめ/糖尿病で体重が減少することも!その原因や症状を知ってコントロールする 糖尿病と体重の関係性について説明しました。 糖尿病は太っている人がなる病気と思われがちですが、糖尿病を発症すると体重が減ることがあるのです。糖尿病は放っておくと重篤な合併症を招く病気です。 反対に早い段階で治療すれば糖尿病の進行を食い止めることにつながります。「食べる量を減らしたわけでもないのに体重が減った」などという場合は、すぐに医師の診察を受けましょう。 ▼糖尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。 監修:リペアセルクリニック大阪院
最終更新日:2022.11.24 -
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「糖尿予備軍」そういわれたことがある人もいるでしょう。 「糖尿予備軍ということは糖尿病じゃないんでしょ?何もしなくて良いんでしょ?」と思っていませんか?糖尿病は糖尿病予備軍の段階で食い止め、糖尿病を発症しないことが非常に重要なのです。 実は糖尿病は以下の4つに大別されます。 ・1型糖尿病 ・2型糖尿病 ・妊娠糖尿病 ・特定の原因によるその他の型の糖尿病 現在、日本の成人の糖尿病患者の95%が2型糖尿病になります。 ここでは2型糖尿病について糖尿病の原因や発症のメカニズム、糖尿病の予防法について説明します。 2型糖尿病が発症する原因 2型糖尿病はもともと糖尿病の素質がある方にほかの原因が加わることで発症するといわれています。 2型糖尿病が発症する原因は主に以下の5つです。 ・偏った食習慣 ・運動不足 ・肥満 ・過度なストレス ・加齢 2型糖尿病のメカニズム 糖尿病の発症にはインスリンというホルモンが関係します。 通常、食事を摂ると血糖値が上昇します。このとき、すい臓からインスリンというホルモンが分泌されます。血液中のブドウ糖はインスリンの働きによって細胞に取り込むことができます。つまり、インスリンは血糖値を下げる働きがあるのです。 2型糖尿病の発症メカニズムにはインスリン分泌障害(不全)とインスリン抵抗性があります。以下で詳しく見ていきましょう。 インスリンの分泌障害による発症メカニズム 食事によって血糖値が上昇すると、すい臓からインスリンが分泌されます。 正常にインスリンが分泌されれば、血糖値が下がりますが、インスリンの分泌障害があると分泌されるインスリンの量が不足したり、インスリンが分泌されるまでに時間がかかることがあります。 インスリンは血糖値を下げるホルモンですから、インスリンの分泌障害があると高血糖の状態が続くことになります。 さらに、血糖の高い状態が続くとすい臓は頑張ってインスリンを分泌し、血糖値を下げようとします。この状態が続くとすい臓は疲弊してしまいます。 これによりインスリン分泌量が減り、高血糖が続くようになります。 インスリン抵抗性による発症メカニズム インスリンは十分分泌されていても、インスリンに対する反応が悪くなることで高血糖になることがあります。これをインスリン抵抗性といいます。 インスリン抵抗性は肥満や運動不足などで起こります。インスリン抵抗性の場合も血糖値を下げるためにすい臓はインスリンを分泌しようとします。 この状態が続くとすい臓が疲弊してしまい、インスリンの分泌量が減り、高血糖状態が続くことになります。 糖尿病の発症年齢 糖尿病は年齢が高くなるほど発症しやすくなります。厚生労働省の「平成28年国民健康・栄養調査結果の概要」 によると、「糖尿病が強く疑われる者」「糖尿病の可能性を否定できない者」のいずれも40歳を過ぎると急激に増え始めることがわかります。 引用元: 厚生労働省「平成28年 国民健康・栄養調査の概要」 年齢が高くなると体中のさまざまな機能が低下していきます。血液中のブドウ糖を取り込む力やすい臓のインスリン分泌力も低下してしまうのです。 糖尿病の発症率 前述の厚生労働省「平成28年 国民健康・栄養調査の概要」によると、20歳以上で「糖尿病が強く疑われる者」の割合は男性16.3%、女性9.3%となっています。 また同調査では「糖尿病の可能性を否定できない者」の割合は男性12.2%、女性12.1%となっています。これらの結果から、女性より男性のほうが糖尿病を発症しやすいといえます。 引用元: 厚生労働省「平成28年 国民健康・栄養調査の概要」 糖尿病の初期症状 2型糖尿病は初期段階では自覚症状はほとんどありません。しかし、高血糖状態が続くと以下のような症状が現れることがあります。 ・喉の渇き、水分をよく飲む ・尿の回数が増える(頻尿) ・体重が減る ・疲れやすくなる ・傷が治りにくい 上記のほかにもさまざまな症状があります。また、これらの症状は少しずつ、ゆっくりと現れます。「いつもと違う」と思ったら、自分で判断せずに医師に相談することが大切です。 糖尿病の予防法 2型糖尿病は発症してしまうと完治することはできません。したがって、糖尿病予備軍や糖尿病の可能性があるという段階で糖尿病を発症しないようにすることが大切です。 糖尿病は主に以下の4つの予防法があります。 ・運動不足を解消し、運動を習慣づける ・食生活を見直す ・ストレスを溜めない ・睡眠をしっかりとる 上記は糖尿病を進行させないためにも大切です。 こちらも併せてご参照ください まとめ 2型糖尿病の発症メカニズムと原因、予防法について解説しました。 糖尿病は発症してしまうと完治することはできません。また、発症しても初期段階では自覚症状がほとんどなく、症状が現れた頃には病気が進行している状態です。糖尿病が進行すると、失明や足の切断など重大な結果を招きます。 糖尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。 糖尿病ってどんな病気?
最終更新日:2024.01.22 -
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糖尿病は年齢が高くなるとリスクが高くなるって本当? 年齢を重ねると、糖尿病の危険性が高まるといわれています。特に親族に糖尿病と診断された方がいる場合では、自分もいずれ発症するかもしれないと不安を感じてしまうものです。 健康に暮らしていくために知っておきたい、年齢と糖尿病の関係について知っておきましょう。 高齢者は糖尿病の危険性が高くなる 糖尿病発症のリスクは加齢とともに高まります。特に注意すべきは40代以降です。厚生労働省「2017年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、糖尿病が強く疑われる人の割合は、40代男性で8.1%、女性で3.1%に達するという結果が報告されています。 50代では男性で14.6%、女性で5.1%と、大幅に数字が伸びており、高齢者ほど糖尿病を発症しやすいことが明らかになっています。 人間の体は、年齢を重ねるとさまざまな機能が低下します。加齢により運動機能が低下すると、体全体の筋肉量が減少し、その一方で内臓脂肪は増加します。 その結果、インスリンの働きが低下し血糖値が高くなりやすくなるため、若年層に比べて糖尿病を発症することが多くなるのです。糖尿病は、重症化するまで自覚症状はほとんどありません。 気づいたときには、すでに進行して合併症を発症している例も多く、動脈硬化などリスクが高い合併症も懸念されます。40代以降では、定期的に検査を受けることが大切です 高齢者が糖尿病になる原因 高齢者が糖尿病になる原因として、生活習慣の改善が困難であることが挙げられます。 糖尿病の予防や治療の基本である食事療法と運動療法では、主に生活習慣の改善が行われます。 しかし、高齢者にとって慣れ親しんだ生活習慣を変えることは、若年層と比較すると難しいものです。 さらに、加齢に伴う身体機能の低下で疲れやすくなる、介護が必要となっているなど自立した生活を送れない高齢者であれば、協力者がいなければ食生活や運動習慣を変えることはできません。 医師から生活指導を受けてもなかなか改善に至らず、糖尿病が進行してしまう例も見られます。 また、加齢にともなう身体機能の低下により、インスリンを分泌する働きが弱まることも原因のひとつです。体内で分泌されたインスリンの働きの低下は、糖尿病の発症を招きます。 また、身体機能の低下は、糖尿病の自覚症状を気づきにくくするという問題もあります。自覚症状を感じたとしても、加齢による症状だと思い込んでしまい、病気の発見が遅れてしまうこともあるのです。 男性と女性はどちらの糖尿病患者が多い? 国内で男性と女性の糖尿病有病者率を比較すると、男性の割合がより高くなっています。 厚生労働省が2017年に発表した「国民健康・栄養調査」の結果によると、糖尿病が強く疑われる人の割合は男性で18.1%、女性で10.5%となりました。 このような性別による差異と関連して、男性の肥満化も指摘されています。同調査では、BMIが25以上で肥満傾向にある人の割合は、男性で30.7%、女性で21.9%という分布になっています。 女性よりも男性のほうが、肥満の割合が高いことが分かります。 2型糖尿病は生活習慣とのかかわりが深い病気です。日常生活で食べ過ぎや運動不足が続き肥満になることも、糖尿病を引き起こす要因のひとつと考えられています。 また、性ホルモンの違いも、糖尿病有病者率に関係しているという見方もあります。動物実験の結果、オスの精巣を取り除いた個体では糖尿病の発病率が下がり、メスの卵巣を取り除いた個体では発病率が上がるという研究結果も報告されています。 高齢者の血糖値の特徴 高齢者が糖尿病治療を受ける場合に目標とするHbA1c値(ヘモグロビンA1c)は、認知機能にほとんど障害がなく、自立した日常生活を送れている方であれば、7.0%未満が目安となります。 薬物療法を行っている場合は、低血糖のリスクがあるため7.5~8.0未満が目標に設定されます。 高齢者が糖尿病治療を受ける場合は、低血糖に注意しなければなりません。糖尿病治療では、高くなりすぎた血糖値を下げるために、インスリン製剤や血糖降下薬を服用して改善を図る薬物治療が行われます。 ところが、医薬品の働きにより血糖値が下がりすぎ、低血糖に陥ってしまうおそれもあるのです。 低血糖の主な症状には、手足の震え・冷や汗をかく・頭痛などが挙げられ、重篤なケースでは意識障害なども生じます。 特に高齢者の場合は感覚が鈍くなっているため、低血糖症状に気づくのが遅れて重症化しやすい傾向があります。 低血糖が疑われる際は、すみやかにブドウ糖を摂取し、主治医の診察を受けましょう。 高齢者の血糖値の確認方法 高齢者の糖尿病は、発見が遅れて重症化することが少なくありません。病気をできるだけ早く発見し、正常値を目指して治療を行うために、定期的に検査を受けることが求められます。 血糖値は医療機関で検査をする以外に、自分で確認する方法もあります。 例えば、薬局などの施設に設置されている「ゆびさきセルフ測定室」では、手軽に血糖値を測定できます。測定は数分から10分程度で完了するため、利用してみるとよいでしょう。 自宅で血糖値を計測する場合は、血糖自己測定器や持続血糖測定器を用います。血糖自己測定器とは、指先から血液を採取して、ブドウ糖の濃度を測定できる医療機器です。 持続血糖測定器とは、体に専用のセンサーを装着し、細胞間にある液体「間質液」中の糖濃度を調べる医療機器です。 血管から間質液に移動したブドウ糖の濃度を計測した数値を血糖値に換算し、数日間の記録を残すことで、血糖値がどのように変動しているのかを確認できます。 高齢者でも運動療法は必要 高齢者の糖尿病治療においても、運動療法は効果的です。運動により筋肉が強化され、基礎代謝の向上が見込めます。 定番の運動である、ウォーキング・腹筋・腕立て伏せ・スクワットなどは、強度調整により、高齢者でも無理なく行えます。 筋肉が鍛えられると糖尿病の治療につながるだけでなく、正しい姿勢を維持することで腰痛を防ぐことにも役立ちます。 運動を行うのが難しい場合は、日常生活の中で歩く時間を増やしたり、正しい姿勢を保つよう意識するだけでも、健康効果が期待できます。 また、運動療法は血糖コントロールに有効であるだけでなく、生活習慣病の予防やストレスの発散にもつながります。血流の改善や、食欲の回復など、幅広い効果が期待されます。 運動療法で高齢者が注意すべき点 高齢者が運動療法に取り組む際は、運動の強度や可否について、必ず医師の指導を仰いでください。 特に糖尿病の合併症がある場合は、運動を避けなければいけないこともあるため、事前の確認が不可欠です。 主治医から運動療法の許可を受けた場合でも、はじめのうちは負荷の大きな運動は避け、軽い運動から取り組みましょう。 散歩や買い物など、日常生活で体を動かす頻度を増やす程度でも問題ありません。運動に慣れてきたら、軽いジョギングを取り入れるなど、少しずつ負荷を増やしていく流れが理想的です。 また、運動を行う前は準備運動、運動を終えたら整理運動を行ってください。 運動療法では、こまめな水分補給も大切です。運動による脱水症状に注意してください。 また、天候が運動に適さない場合であれば、屋内でできる運動だけでも構いません。無理のない範囲で続けられる運動を、自分の体力に合わせて実施しましょう。 まとめ 年齢を重ね身体機能が低下すると、糖尿病のリスクは高まります。特に高齢者は糖尿病の自覚症状に気づきにくく、生活習慣の改善も難しいことから、糖尿病を悪化させやすいリスクもはらんでいます。 また、薬物療法の副作用として生じる低血糖も懸念されます。食事療法や運動療法も含め、主治医の指導の下で治療に取り組みましょう。 こちらも併せてご参照ください
最終更新日:2022.10.31 -
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糖尿病の末期症状|手足の震えや視力の低下でわかる自覚症状 糖尿病は無自覚・無痛の状態から始まりますが、末期の患者さんは失明したり足を切断したり人工透析を受けたりしています。 したがって糖尿病患者の方やその家族の方は、糖尿病の末期症状について把握し、糖尿病をこれ以上進行させないようにしましょう。 この記事では糖尿病の末期症状とその予防方法を紹介します。 糖尿病の末期症状 高血糖の状態が長く続くとさまざまな合併症を引き起こしやすくなるといわれています。脳梗塞や心筋梗塞など命に関わる病気も糖尿病の合併症です。 合併症は、その病気に伴って引き起こされる病気のことで、合併症のほうが元の病気より深刻なこともあります。 特に糖尿病の合併症は糖尿病そのものよりも深刻な結果を招きます。 糖尿病の合併症は、血糖値が高い状態が続くことで、血管がぼろぼろになったり神経が侵されたりすることで起きます。 さらに、血管が損傷すると細胞に酸素や栄養が行き届かなくなるため、全身にさまざまな障害が起きます。 この記事では、以下の4つの合併症について解説していきます。 ●糖尿病性神経症 ●糖尿病性網膜症 ●糖尿病性腎症 ●尿毒症 上記4つのうち「糖尿病性神経症」「糖尿病網膜症」「糖尿病性腎症」の3つを糖尿病の三大合併症と呼んでいます。 こちらも併せてご参照ください 糖尿病性神経症 糖尿病の合併症のなかでも特に発症頻度が高いのが、糖尿病性神経症です。手足などに走っている末梢神経がダメージを受け、痛みやしびれが出てきます。 糖尿病性神経症のその他の症状には次のようなものがあります。 ●手足の痛みやしびれ ●安静時に足がつる ●顔面神経麻痺 ●感覚の鈍化 糖尿病性神経症は、高血糖の状態が続くことによってソルビトールという物質が神経細胞に蓄積することで起きると考えられています。 また、高血糖は毛細血管の血流を悪化させるので、末梢神経の細胞が毛細血管から酸素や栄養を受け取れなくなります。 その結果、神経細胞が壊されるのではないか、といわれています。糖尿病性神経症を引き起こす原因はほかにもあるとする説もありますが、いずれにせよ原因は明らかになっていません。 糖尿病性神経症を放置すると痛みなどの感覚を感じなくなるので、傷を負っても気がつかず治療を怠ってしまうことがあります。そうすると細菌に感染しやすくなり、細胞が壊死します。 壊死した細胞は再生できません。足の細胞が壊死したら足を切断することになってしまいます。 糖尿病性神経症も早期に発見して治療に取り組むことが重要です。 糖尿病性神経症の治療には、食事療法や運動療法、薬物療法などがあります。また痛みやしびれがある場合はそれを緩和させる治療を行うこともあります。 食事療法や運動療法に関しては後述します。 糖尿病性網膜症 糖尿病性網膜症は日本の成人の失明原因の上位になります。 網膜は目の眼底にある神経細胞が敷き詰められた膜です。網膜で光や色を感じ、その情報が脳に届くことで「見える」ようになります。 網膜には細い血管も張りめぐらされています。そのため高血糖状態が続くとその血管が損傷を受け、神経細胞に酸素と栄養が届かなくなります。 このとき、新しい血管(新生血管)をつくって神経細胞に酸素と栄養を届けようとします。 新しい血管ができるのであれば「良いこと」のように感じるかもしれませんが、そうではありません。新生血管は元の血管よりもろいので簡単に壊れて出血しやすくなるのです。 新生血管が出血するとかさぶたのような膜(増殖組織)ができます。 この膜が網膜を引っ張ってしまい、網膜剥離の原因となります。網膜剥離とは、網膜が眼球壁からがれることですので、網膜で光や色を感じられなくなり視力低下や失明を招きます。 糖尿病性網膜症には次の3種類があります。 ●単純糖尿病網膜症 ●前増殖糖尿病網膜症 ●増殖糖尿病網膜症 それぞれについて以下で説明します。 単純糖尿病網膜症 単純糖尿病網膜症は初期段階のことで、血管の瘤である毛細血管瘤ができたり、小さな出血がおきたりします。単純糖尿病網膜症では自覚症状がありません。 この段階で血糖コントロールなどを行い血糖値の改善ができれば改善できることもあります。 前増殖糖尿病網膜症 前増殖糖尿病網膜症は、単純糖尿病網膜症が進行した状態です。網膜の血管の障害が進むことで網膜に酸素が行き渡らなくなります。その結果、新生血管ができ始めます。 この状態になると目のかすみといった症状が現れます。この段階では網膜光凝固術という治療を行います。 これは血流の悪い部分にレーザーを当てることで低酸素状態を改善し、新生血管がつくられるのを予防したりする治療法です。 増殖糖尿病網膜症 前増殖糖尿病網膜症より重症化した状態が増殖糖尿病網膜症です。この状態になると、新生血管が伸び、網膜だけでなく硝子体という別の器官も障害されるようになります。 新生血管が破れると硝子体出血を起こします。出血が起こると黒いゴミのようなものが見える飛蚊症という症状を引き起こします。さらに進行すると視力低下を招きます。 新生血管が破れると増殖組織という膜ができますが、この膜が収縮すると網膜が引っ張られるため、網膜剥離を引き起こしてしまいます。 この段階になると硝子体手術という治療を行います。手術器具を使って眼球に穴を空け、増殖組織を取り除き、剥離した網膜を戻したりします。 ただし、視力や網膜が完全に元の状態に戻るわけではありません。 糖尿病性腎症 糖尿病性腎症とは糖尿病の合併症の1つで腎臓が障害される病気です。症状は段階的に進んでいきますが、ひどい場合には腎臓が完全に機能しなくなる腎不全に陥ることもあります。 腎不全まで進んだ場合は人工透析という治療が必要になります。国内の透析患者さんの約4割が糖尿病性腎症であるとの報告もあります。 糖尿病性腎症も初期は自覚症状がほとんどなく、発見しづらい病気ですが、進行すると次のような症状が現れます。 ●むくみ ●しびれや痛み ●満腹感 ●食欲不振 ●息切れ ●胸の苦しさ ●顔色の悪化 ●疲れやすくなる(易労感) ●嘔気、嘔吐 ●筋肉の強直 ●つりやすくなる ●筋肉や骨の痛み ●腹痛 ●発熱 糖尿病性腎症には病気の進行度合いに応じて第1期から5期までの「病期」が設定されています。第1期、第2期の段階ではほとんど自覚症状がありません。 第3期になると、むくみや胸の苦しさ、息切れなどの症状が出てきます。 さらに第4期、第5期と症状が進むと、筋肉や骨の痛み、つりやすくなる、顔色の悪化などが生じます。 糖尿病性腎症では病期によって以下の治療を行います。 第1期(腎症前期)では血糖コントロールになります。 第2期(早期腎症期)では血糖コントロールをより厳格に行い、降圧治療も開始します。 第3期(顕性腎症期)では治療にタンパク質制限が加わります。タンパク質の食材を食べないようにします。 第4期(腎不全期)では人工透析を導入します。人工透析を開始すると原則、中止できません。 第5期(透析療法期)では腎移植も検討に入ります。 第4期まで症状が進むと人工透析を行うことになります。人工透析は週3回、1回4時間かかるものです。 生活に大きな支障を来たしますので、病期を進めないように血糖コントロールや降圧治療、タンパク質制限などにしっかり取り組みましょう。 尿毒症 腎不全になると腎臓の機能が低下します。腎臓が機能しなくなることで体内の老廃物や毒素を尿によって体外に排泄することができなくなり、血液中の有害物質が多くなってしまうと尿毒症を発症することがあります。 尿毒症の症状は全身におよびます。主な症状は次のとおりです。 ●脳関連の症状:頭痛、不眠、けいれん、意識障害 ●目関連の症状:眼底出血、視力障害 ●口のなかの症状:味覚異常、歯肉出血 ●顔の症状:むくみ、顔色の悪化 ●心臓関連の症状:動悸、高血圧、脈の乱れ、心肥大 ●血管関連の症状:血管の石灰化(硬くなる) ●肺関連の症状:咳、息苦しさ ●血液関連:貧血など血液検査による数値の悪化 ●腎臓関連の症状:尿量が減る ●胃腸関連の症状:吐き気、嘔吐、下痢、食欲不振、胃潰瘍、十二指腸潰瘍 ●皮膚関連の症状:かゆみ、むくみ、色素沈着、皮下出血 ●神経関連の症状:感覚異常、いらいら ●骨の症状:高リン血症、低カルシウム血症 尿毒症を発症すると透析療法が必要になります。このように尿毒症は生活の質を大きく低下させる病気です。 糖尿病の予防方法 糖尿病は食べ過ぎ、運動不足、ストレス、不規則な生活などが原因で発症する場合があります。また、これらの生活習慣はインスリンの働きも妨げてしまいます。 糖尿病の原因となるうる生活習慣には以下のようなものがあります。 ●食べ過ぎ ●運動不足 ●過剰なストレス ●睡眠不足 糖尿病の進行を食い止め、合併症を引き起こさないためにもこれらの生活習慣を改善する必要があります。 必要量のエネルギーをとる 糖尿病を予防するには、必要エネルギー量の範囲内で炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルをバランス良くとることが大事です。 1日のエネルギー必要量は次のように算出します。 ・1日のエネルギー必要量=標準体重×身体活動量 ・標準体重=身長(m)×身長(m)×22 ・身体活動量 軽い労作(デスクワークなど)25~30Kcal/kg 普通の労作(立ち仕事など)30~35Kcal/kg 重い労作(力仕事など)35~Kcal/kg 軽めのウォーキングを継続する 糖尿病は運動不足や肥満が原因などの原因が重なることで発症するといわれています。したがって継続的な運動をすることで糖尿病の進行を防ぐことができる場合があります。 運動をすると筋肉でエネルギーが消費されるので、血糖値が下がる効果が期待できます。 また運動不足が原因で糖尿病を発症した方は運動によってインスリンの働きが改善することがあります。 運動不足の人は軽めのウォーキングから始めてみてはいかがでしょうか。 血糖値コントロールには食後1~2時間後にウォーキングを行うことが良いでしょう。1分間に80メートル進む程度の速さで1回1万歩、週3回以上行うようにしましょう。 ストレス源を遠ざける 糖尿病はストレスが原因で発症することもあります。 日常生活で完全にストレスをなくすことはできませんが、ストレスを感じるストレス源(ストレッサー)を取り除いたり、遠ざけることでストレスを減らすようにする必要はあります。 例えばストレスの対処法には次のようなものがあります。 ●環境を変える ●十分な休養をとる ●娯楽や趣味でリフレッシュする ●腹式呼吸をする ●専門家や友人に相談する ●仕事の環境を変える など 7~8時間以上の睡眠をとる 7~8時間程度の睡眠をとることも、糖尿病を末期症状にまで悪化させないために重要です。 睡眠不足だと空腹時血糖値が上昇し、インスリンの分泌が低下するといわれています。つまり、睡眠不足は糖尿病のリスクが高まるだけでなく、糖尿病の悪化にもつながるのです。 反対に睡眠時間を延長すると、空腹時血糖値を低下させたり、基礎インスリン分泌能が増大することもわかっています。 つまり十分に睡眠をとることは糖尿病のリスクを減らすことにつながるのです。 糖尿病を悪化させないためにも質の良い睡眠を心がけましょう。 まとめ 糖尿病は放っておくとさまざまな弊害が出る病気です。また、早い段階で適切な治療に取り組まないと病気が進行してしまううえ、健康な状態に戻ることができなくなります。 特に三大合併症は、進行すると失明や足の切断、人工透析にいたることもあります。 このような状況を防ぐためにも、食事療法や運動療法を取り入れ、十分な睡眠をとり、ストレス解消に取り組みましょう。
最終更新日:2022.10.31 -
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糖尿病の進行速度は症状でわかる|体重が減少し始めた人は要注意 糖尿病で懸念されるのが、症状の進行にともなう合併症です。動脈硬化や神経障害、脳梗塞、心疾患など、さまざまな症状が現れますが、発症からどれくらいの時期に合併症が引き起こされるのか、不安に思う方も少なくありません。 糖尿病の進行で現れる合併症とその種類、血糖値をコントロールするための治療法を解説します。 糖尿病の進行状況と合併症 初期段階の糖尿病は、自覚症状がない場合が多いです。しかし、この時点で動脈硬化が起こっている可能性もあり、そのまま放置すると脳梗塞や心筋梗塞などにつながるおそれがあります。 その後、5~10年にわたり症状が進行すると、以下のような合併症が引き起こされるリスクが高まります。 糖尿病の進行で現れる症状 引用元:メディマグ.糖尿病 糖尿病の初期段階では自覚症状はほぼありません。具体的な症状は現れはじめたときには、すでに相当進行していることが疑われます。 〈糖尿病の進行で現れる症状〉 ● 神経障害:高血糖が続き、神経障害が起こると、手や足の指先がしびれるようになる。 ● 壊疽:下肢閉塞性動脈硬化症により、足が壊疽し、最悪の場合切断するケースも。 ● 体重の減少:インスリンの働きの低下で、脂肪にブドウ糖が取り込まれず、たんぱく質が分解されて体重減少を招く。 神経障害 糖尿病の進行で注意しなければならないのが、神経障害です。高血糖が続くと末梢神経の代謝機能が低下し、老廃物が溜まったり、血管損傷で神経に栄養が行きわたらなくなったりと、神経の働きが阻害されます。 〈神経障害の症例〉 ● 感覚の異常:手足のしびれ、足の裏の違和感、痛み、冷感、ケガや傷みに鈍感になる、など ● 心臓の異常:無痛性の心筋梗塞や起立性低血圧 ● 目・顔面の異常:顔面神経麻痺、眼球運動機能の低下など ● 四肢の異常:筋力の低下や筋萎縮、足の変形など ● 泌尿器の異常:排尿障害、残尿など ● 胃腸器官の異常:自律神経の不調により、吐き気や食欲低下、便秘や下痢などの症状 壊疽 高血糖が原因で足の血管が硬化する閉塞性動脈硬化症を発症すると、血行が悪くなり、歩くだけで痛みをともなうようになります。さらに進行すると歩かなくても痛みを感じるようになり、最終的には壊疽(足が腐ってしまうこと)するまで悪化。最悪の場合は切断もありえます。 足の壊疽は神経障害に由来する側面もあります。神経が麻痺し、痛みを感じにくくなると、傷があっても放置してしまうからです。そのままだと敗血症を起こし、最悪の場合は死に至る危険性もあるため、必要に応じて切断の措置が取られます。 体重の減少 糖尿病といえば「肥満」のイメージですが、体重減少も起きやすい症状のひとつです。食事から取り入れたブドウ糖は、本来インスリンの働きによって細胞内にエネルギーとして取り込まれます。 ところが、糖尿病患者はインスリン分泌力が低下しているため、血管内に糖が蓄積されるだけとなり細胞内の糖が減少。これを補うために、脂肪や筋肉が分解され、体重が減ってしまうのです。 体重減少が認められる場合は相当な進行が予想され、自覚症状としては喉の渇きを強く覚えます。 同様の症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。 そのほかの合併症 高血糖の状態が続くと、はじめに影響を受けるのが血管です。損傷範囲は全身の血管におよぶため、前述した神経への障害のみならず、目や腎臓、心臓、脳など重要な器官にも障害が発生します。 ほとんどの場合、本人が気付かないうちに症状が進行し、さまざまな合併症が誘発される例も少なくありません。 〈合併症の症例〉 ● 神経の障害:糖尿病神経障害 ● 目の障害:糖尿病網膜症 ● 腎臓の障害:糖尿病腎症 また、糖尿病の初期段階で発生する症例として、動脈硬化があります。高脂血症や肥満、高血圧、メタボリックシンドロームを併発すればさらに高血糖状態が重症化するため、早期発見・早期治療が重要です。 心臓病や脳卒中など、重篤な症状を引き起こすリスクも考えられます。 糖尿病の進行を抑える方法 糖尿病の対症療法として、「食事療法」「運動療法」「薬物療法」があります。それぞれ進行状況に合わせ、適切な療法が選択されます。 〈糖尿病の進行を止める方法〉 ● インスリン注射で血糖値をコントロールする ● 内服薬で血糖値をコントロールする ● 日常生活の食事や運動でコントロールする 上記の内容について、以下で詳しく説明します。 インスリン注射で血糖値をコントロールする 高血糖状態が長期におよぶと、膵臓が疲弊し、インスリンを分泌する力が失われます。合わせてインスリン抵抗性が助長された結果、糖尿病を発症するわけですが、初期の段階では少量ながらもインスリンは分泌されます。 その後、症状が進行してほとんどインスリンが分泌されなくなった場合は、インスリンの外部注入により、血糖値の低下を図ります。 内服薬で血糖値をコントロールする 血糖値を下げるための内服薬も有効です。大きく分けて「インスリンの分泌をよくする薬」「インスリンの利きをよくする薬」「摂取した糖の分解・吸収を遅らせる薬」「糖の排泄を促す薬」の4種類があります。 進行具合や血糖値の推移、体質などを診て、医師が適切と思われる種類を選択します。なお、インスリン分泌を促すためのインスリン注射も、薬物療法の一種です。 日常生活の食事や運動でコントロールする 高血糖の予防・改善策としてまず試みられるのが、食事療法と運動療法です。糖は食事から取り込まれ、血管を通って細胞に蓄積されます。体に取り込む炭水化物の量をコントロールすることで、糖の量を調節し、健全な血糖値への誘導を図ります。 食事によって取り込まれた糖は、運動で消費されます。筋肉量が増えると、細胞に糖を取り込みやすくなるため、血糖コントロールにつながります。また、脂肪の減少は血糖値を抑制するインスリン機能を向上させ、糖が正常に蓄積される環境を整えていきます。 まとめ/糖尿病の進行速度は症状でわかる|体重が減少し始めた人は要注意 単に血糖値が高いだけでは異常に気付きにくく、合併症の進行を許してしまうのが糖尿病の怖いところです。 重症化すると血管や神経が阻害され、最悪の場合、心筋梗塞や脳梗塞、網膜や腎臓の障害などを引き起こすことから、定期的に検査を受けて早期に発見することが望まれます。 糖尿病と診断されても、生活習慣の見直しやインスリン注射、内服薬など有効な治療はありますので、主治医の指示にしたがいながら少しずつ改善を目指してください。 ▼こちらも併せてご参照ください 監修:リペアセルクリニック大阪院
最終更新日:2022.10.31 -
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糖尿病の検査指標|5つのコントロール指標とは 糖尿病と診断されるまでには、複数の検査が行われることがあります。それぞれの検査で糖尿病と診断される指標には、一体どのようなものがあるのでしょうか。 また、血糖値をはじめとする指標において、正常値と糖尿病型判定ではどれくらいの差があるものなのでしょうか。 医療機関で糖尿病の疑いがあると診断された方や、糖尿病予備軍と診断された方へ向けて、糖尿病の検査指標について紹介していきます。 糖尿病の検査指標 糖尿病の診断に用いられる主な検査方法には、採血による血糖値の検査、採血によるグリコヘモグロビン検査(HbA1c)、尿糖検査が挙げられます。血糖値の検査では、血液中のブドウ糖の濃度を調べます。食後は血糖値が高くなりやすいため、空腹時または食後に血糖値の測定を行います。 測定の結果からはっきりと判断できない場合は、ブドウ糖を摂取し高血糖状態としたうえで、経過時間ごとの血糖値を検査するブドウ糖負荷試験も行います。グリコヘモグロビン検査(HbA1c)は、血液中のグリコヘモグロビンの状態を調べることで、過去1~2カ月間の平均的な血糖値を明らかにする検査です。 血糖コントロールの状態が評価されます。 尿糖検査は、尿に含まれるブドウ糖の割合を調べます。糖尿病の治療効果を確認することはできますが、軽度の糖尿病では尿からブドウ糖は検出されないため、糖尿病を発見する目的では一般的に用いられない検査です。 糖尿病と診断される指標 糖尿病の検査を通じ、いずれかの検査値が基準値を鵜阿波回った場合に糖尿病型と判定され、さらに典型的な糖尿病の症状が見られる場合や、糖尿病網膜症が現れている場合には糖尿病と診断されます。 たとえば、血糖値の検査とグリコヘモグロビン検査の両方で糖尿病型の判定が出た場合は、糖尿病と判断されます。どちらか一方のみが糖尿病型と診断された場合は再検査を行います。 ●正常型・糖尿病型の指標 糖尿病のコントロール指標 糖尿病を改善するために、どれくらいの数値を目指すべきなのか。各検査値のコントロール指標を紹介します。ただし、実際に治療の目標となる数値は、年齢・罹患期間・臓器障害・低血糖のリスクなどを考慮したうえで設定されます。また、これらの指標は妊娠中の女性には該当されません。 コントロール指標におけるHbA1c値 糖尿病治療で血糖値の正常化を目指す場合、グリコヘモグロビン検査の目標値は6.0%未満となります。食事療法や運動療法のみで目標達成が可能な方や、薬物療法で副作用の心配がない方が、こちらの目標値に該当します。 一方、糖尿病の合併症を予防することが目的であれば、7.0%未満を目指します。また、薬物療法による低血糖など副作用のリスクが懸念され、治療の強化が難しい場合は、8.0%未満を目標としてコントロールが行われます。 コントロール指標における血糖値 血糖値が空腹時100mg/dL未満、食後2時間120mg/dL未満の方は、コントロール指標のうちで評価がもっとも高い「excellent(優)」に該当します。空腹時血糖値100~119mg/dL、食後2時間120~169mg/dLの場合は、「good(良)」と評価されます。 空腹時血糖120~139mg/dL未満、食後2時間170~199mg/dLの方の状態は「fair(可)」です。なお、空腹時血糖値には異常がないにもかかわらず、食後血糖値が高い状態が続く傾向であれば、食後高血糖のタイプであることが疑われます。 血糖値と併せてHbA1c値も確認が必要です。 コントロール指標における体重 肥満はさまざまな病気の原因となり、糖尿病や合併症のリスクを高めます。身長と体重から算出した「BMI」の数値が25を超えている場合は、すでに肥満の状態にあるため注意しなければいけません。 BMIは下記の計算式で求められます。 BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m) すでに肥満の状態にある方は、まずは25以下を目標に体重管理を行います。もっとも長命で有病率が少ない数値はBMI22であるため、最終的には20~24を目指すことが理想です。 コントロール指標における血圧 糖尿病患者のうち4~6割は高血圧といわれています。糖尿病による高血糖やインスリン抵抗性で体液や血液の量が増えると、血圧が高くなるためです。コントロール指標では、収縮期血圧 130mmHg未満、拡張期血圧85mmHg未満を目指します。 コントロール指標における血清脂質 血清脂質の数値は、血液中の脂肪の濃度を表します。糖尿病を含む、動脈硬化を引き起こす病気にかかっている場合は、特にコントロールの必要性が高まります。 糖尿病治療では、総コレステロールが200mg/dL未満、早朝空腹時の中性脂肪が150mg/dL未満、HDL-コレステロールが40mg/dL以上、LDL-コレステロールが120mg/dL未満を目指しましょう。 まとめ/糖尿病の検査指標|5つのコントロール指標とは 糖尿病の診断には、複数の検査方法が用いられています。糖尿病を発見するための検査として、主に血糖値の検査やグリコヘモグロビン検査(HbA1c)が行われ、両方で糖尿病型と判定が出た場合には、糖尿病と診断されます。 糖尿病を改善するためのコントロール指標では、HbA1c値・血糖値・体重・血圧・血清脂質などの検査項目で、それぞれ目標値が定められています。 糖尿病の進行を予防、または適切な治療を続けていくために、これらの目標値を参考にしてください。 ▼こちらも併せてご参照ください 監修:リペアセルクリニック大阪院
最終更新日:2022.10.31 -
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糖尿病の三大合併症とは|症状別の病期に現れる異常を知る 糖尿病に罹患している患者の体には、血糖値の上昇によりさまざまな問題が起こります。特に注意すべきは合併症となりますが、合併症の種類や症状について理解できていない糖尿病患者も少なくありません。 合併症の中でも「三大合併症」と呼ばれる症状にスポットを当て、症状や進行度、治療方法などについて紹介していきます。正しい知識を身に着け、予防に取り組んでいきましょう。 糖尿病の三大合併症 糖尿病はさまざまな臓器に影響をおよぼす病気です。根本的な治療を行わず糖尿病を放置していると、病気が進行した結果、糖尿病合併症を発症するおそれがあります。 特に、以下の病気は三大合併症と呼ばれ、糖尿病と密接な関係があるとされています。 ● 糖尿病性神経障害 ● 糖尿病性網膜症 ● 糖尿病性腎症 糖尿病の三大合併症は「神経障害」「網膜症(目の障害)」「腎症」の頭文字をとって「しめじ」と称されます。以下にて、それぞれの病気について詳しく紹介していき 糖尿病神経障害 糖尿病による高血糖状態が続くと、感覚神経や自律神経、運動神経などに異常が発生します。以下は神経障害による主な異常とその症状です。 〈神経障害による異常と症状〉 ● 感覚の異常 ・両手や両足先のしびれ、痛み ・皮膚感覚の低下 ● 心臓や血圧調整の異常 ・無痛性心筋梗塞 ・起立性低血圧 ● 目や顔面の異常 ・顔面の麻痺 ・眼球運動の異常 ● 胃腸運動の異常 ・下痢、便秘 神経障害によって起こる痛みには、内服薬での対処や生活習慣の見直しなど、改善のための血糖コントロールが欠かせません。 糖尿病性網膜症 糖尿病性網膜症は、高血糖により網膜の血管に異常が起こることで発症する、失明の原因にもなる深刻な合併症です。初期段階では自覚症状がほとんどないため、違和感を覚えたときには病状が悪化している可能性があります。 網膜に存在する視細胞は、目に入った光を視覚情報として変換する働きがあります。網膜症が進行して網膜の血管にダメージが生じると、詰まりや出血などが発生し、視界が不明瞭になる、視力が低下するなどの症状がみられるようになります。 糖尿病性網膜症の病期 引用元:スガオ眼科 糖尿病性網膜症の病気は以下の三段階に分けられます。 ● 単純網膜症 ● 増殖前網膜症 ● 増殖網膜症 進行のスピードは人によって異なりますが、40~50代など比較的若い層の患者は病状の悪化が早い傾向にあります。ただし、血糖コントロールを適切に行うことで、進行を遅らすことも可能です。 それぞれの進行段階について、詳しく見ていきましょう。 単純網膜症 単純網膜症は、糖尿病網膜症の初期症状です。視力には影響がないため、ほとんどの患者は発症していることに気づきません。 単純網膜症を発症すると、小さな点状の出血や、毛細血管が膨張しできる毛細血管瘤が生じます。また、硬性白斑という脂肪やたんぱく質の沈着によって起こるシミもみられます。 この時期であれば、血糖コントロールによって症状の改善が期待できます。 増殖前網膜症 単純網膜症が進行すると、増殖前網膜症に移行します。単純網膜症によって生じた血管の異常がさらに進むと、網膜に血液が十分に行きわたらなくなり、酸素不足が生じます。 そこで酸素欠乏を補うために、新しい血管(新生血管)をつくりだす準備がはじまります。また、軟性白斑という血管の詰まりによって生じるシミもみられます。 この段階でも視力への影響はなく自覚症状として気づくことはありませんが、かすみ目が生じる場合もあります。 増殖網膜症 増殖前網膜症がさらに進行した状態が、増殖網膜症です。この段階になると、新生血管が網膜や硝子体に広がってきます。新生血管は破れやすいのが特徴です。血管が破裂して硝子体出血が起こると、視界に黒い虫のようなものが見える飛蚊症が生じることがあります。 出血量が多ければ、視力低下を引き起こすおそれもあります。また、増殖膜が生じて網膜が引き寄せられ、牽引性の網膜剥離が生じることもあります。そうなると自然治癒は難しく、手術が必要となることもあります。 網膜剥離の際にも、飛蚊症や視力低下などの症状がみられます。 糖尿病性腎症 糖尿病性腎症は、糖尿病の経過中にみられる病気です。詳しい原因は明らかになっていませんが、高血糖状態が長引くことによる動脈硬化に発症の一因があると考えられています。 腎臓には毛細血管が集まってできた糸球体が存在します。糸球体は、血液内に含まれる老廃物などをろ過し、体外へ尿として排出する働きを担っています。糸球体の血管が動脈硬化によって破れたり詰まったりすると、腎臓の働きが悪くなってしまいます。 腎臓の機能が低下していくにつれ、尿に含まれるたんぱく質が増える、血圧が上昇するなどの症状がみられるようになります。腎症も初期段階では自覚症状が現れないため、気づかないうちに病気が進行していきます。 治療せずに放っておくと腎機能が低下し、最終的に慢性腎不全となるおそれもあります。 ▼こちらも併せてご参照ください 糖尿病性腎症の病期 糖尿病性腎症は、第1期~第5期の5段階で進行します。 ● 第1期(腎症前期) ● 第2期(早期腎症期) ● 第3期(顕性腎症期) ● 第4期(腎不全期) ● 第5期(透析療法期) ステージを分ける指標となるのは、尿アルブミン値または尿蛋白値と腎機能です。進行速度には個人差があり、どの段階にあるかによって治療方法も変わってきます。 第1期~第5期までのそれぞれの症状について、順に紹介していきます。 第1期(腎症前期) 腎症前期では自覚症状がなく、検査しても尿アルブミン値は正常のため、腎症と判断することはできません。腎症が進行することのないよう、普段の生活での食事療法による血糖コントロールや、血圧の管理が求められます。 また、この段階であれば食塩やカリウムの食事制限はありませんが、たんぱく質を摂りすぎないよう注意してください。 第2期(早期腎症期) 第2期にあたる早期腎症期では、尿検査を行うと微量のたんぱく質が検出されるようになります。これを微量アルブミン尿といいます。 ● 自覚症状 血圧が高くなる以外はほとんど自覚症状がみられません。 ● 検査方法 尿検査や血液検査 ● 治療方法 厳格な血糖コントロールと降圧治療を行います。同時に、食事ではたんぱく質の制限が行われます。この段階で適切な治療ができれば、たんぱく質が尿に含まれない状態まで戻すことも可能です。 第3期(顕性腎症期) 第3段階の顕性腎症期になると腎機能が低下し、さまざまな自覚症状がみられるようになります。尿に含まれるたんぱく質の量は、第2期より増えてしまいます。 ● 自覚症状 むくみ、息切れ、胸の苦しさ、食欲不振、満腹感 ● 検査方法 尿検査、血液検査 ● 治療方法 厳格な血糖コントロールや降圧治療のほか、たんぱく質・食塩・カリウムの制限を行います。人によっては水分も制限します。この段階になると、腎機能を完全に元通りにすることはできません。 第4期(腎不全期) 第4期の腎不全期になると、腎臓の糸球体で老廃物を十分に濾し取ることができなくなります。その結果、血中に毒素が蓄積されてしまい、尿毒症の発症を招きます。低血糖になりやすいことも腎不全期の特徴です。 ● 自覚症状 むくみ、倦怠感、掻痒感、頭痛、吐き気、食欲不振、手足の痛み、貧血など ● 検査方法 尿検査、血液検査 ● 治療方法 厳格な血糖コントロールや降圧治療、食事療法のほか、透析治療も行います。 第5期(透析療法期) 第5期の透析療法期になると、腎臓の働きはほとんど失われてしまいます。慢性透析療法が取り入れられ、基本的に週3回の人工透析が必要になるほか、透析治療患者用の食事療法が行われます。5年後の生存率は約50%と、予後は良好とはいえません。 人工透析の効果がみられなければ、腎移植や膵腎移植などの手術を行うこともあります。見てきた通り、糖尿病性腎症は進行するにつれて重篤な症状となるため、早期での発見が肝心です。 元の状態に戻すことも可能である、第2期までに腎症を発見し、適切な治療を行うことが大切です。 1型糖尿病で合併症を起こす確率 若年者の糖尿病では、1型糖尿病患者のほうが二型糖尿病患者と比較して合併症を起こす確率が低くなっています。糖尿病の治療に影響を与える肥満が、1型糖尿病患者には少ないためではないかと考えられています。 まとめ/糖尿病の三大合併症とは|症状別の病期に現れる異常を知る 糖尿病では「糖尿病性神経障害」「糖尿病性網膜症」「糖尿病性腎症」の三大合併症に注意を払わなければいけません。どれも初期段階では発症を自覚しにくく、気づいたときには病気が進行している可能性があります。こまめな検査で早期発見・治療を目指しましょう。 また、食事療法や運動療法、薬物療法などによる血糖コントロールでも、合併症のリスクは低下します。しっかりと糖尿病治療に取り組み、合併症を予防しましょう。 監修:リペアセルクリニック大阪院
最終更新日:2022.10.11 -
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糖尿病の運動療法における禁忌|血糖値を上げないためのポイント 糖尿病治療には多くの場合、運動療法が取り入れられます。ただし、患者の状態や併発している病気などによっては、運動が禁忌とされる場合もあります。 どのような状態だと運動を控えるべきなのか、糖尿病の中でも運動療法を行ってはいけないケースを紹介していきます。 また、運動療法が取り入れられる場合におすすめの運動方法についてもお伝えします。 糖尿病の運動療法を行ってはいけないケース 適切な運動は糖尿病の改善に効果的です。しかし、糖尿病治療に運動療法を取り入れるどうかは、医師や専門家の判断を仰いでください。 糖尿病合併症のある方やその他の疾患を持つ方が自己判断で運動を続けてしまうと、病状悪化を招く可能性があるからです。 以下のいずれかに当てはまる場合は、特に注意が必要です。 <運動療法を行ってはいけないケース> ● 単純網膜症を発症している ● 重症の高血圧 ● 糖尿病壊疽(えそ)の症状が出ている ここからは、上記の3つケースについて詳しく紹介します。 網膜症を発症している 糖尿病網膜症は糖尿病の三大合併症のひとつで、失明の原因にもなりえる病気です。 糖尿病網膜症を発症している場合、運動によって血圧が変化すると網膜の血管が破裂する可能性があります。また、低血糖で眼底出血が起こるリスクもはらみます。 網膜症は3段階に分けられ、「単純網膜症」「増殖前網膜症」「増殖網膜症」の順番に進行していきます。単純網膜症の場合、強すぎない運動であれば問題はありません。 増殖前網膜症の方であれば、目の治療を受けつつ、症状が安定しているのであれば軽い運動を行っても構いません。 一方、増殖網膜症になると運動療法を控えなければならないケースが多くなり、力んだり重いものを持ちあげたりしないよう指導されます。 こちらも併せてご参照ください 重症の高血圧 糖尿病患者の多くは高血圧も同時に発症しています。高血圧の改善には、適切な運動を継続して行うことが効果的ですが、条件によっては制限がかかります。 収縮期血圧が180mmHg以上、もしくは拡張期血圧が110mmHg以上になる重度の高血圧患者の場合、運動を控えなくてはなりません。 また、運動によって血圧が上がりすぎると、腎臓の血管に過剰な負荷がかかることから、腎症の進行スピードを速めてしまいます。 腎症を発症している方は注意してください。心臓や血管などにも負担がかかるため、心臓病や脳血管疾患を招く可能性もあります。 合併症により神経障害を発症している場合だと、心臓の痛みに気づかず、症状悪化の可能性が高まるリスクもあります。運動をはじめる前に、医療機関でチェックを受けるようにしてください。 こちらも併せてご参照ください 糖尿病壊疽の症状が出ている 糖尿病になると、糖尿病壊疽(手や足などの組織が壊れてしまう症状)を引き起こす可能性があります。症状が出ている場合に患部に負荷がかかる運動をすると、壊疽が悪化するおそれがあります。 ウォーキングのような軽い運動であっても、患部に負担がかかるようであれば控えなくてはなりません。 また、現段階で壊疽の症状がなくても、神経障害のある方は壊疽の発症に気を配りましょう。 感覚神経障害の影響で皮膚の感覚が鈍っていると、靴擦れや擦過傷など、運動によってできるケガに気づかないことがあります。 治療をしないまま放置していると感染症を招き、壊疽を引き起こすおそれも。運動後は体にケガがないか調べ、ケアを念入りに行いましょう。 こちらも併せてご参照ください 糖尿病改善のための効果的な運動方法 糖尿病の改善には、体中の筋肉を動かす有酸素運動が効果的といわれています。 適切な運動方法や時間は患者によって異なりますが、基本的には1回20分~40分、週3回の運動を行うよう推奨されています。 <有酸素運動例> ● ウォーキング ● サイクリング ● ジョギング ● スイミング 上記のような運動を日常生活に導入し、楽しみながら続けることが大切です。 継続して運動することで体重が減る、血糖値が下がるなどの効果があるほか、インスリンが効きやすくなる効果も期待できます。 また、インスリン療法や降圧薬を使用している場合は低血糖にも注意し、運動時にはブドウ糖を携帯するようにしましょう。 もちろん、運動療法をはじめる前に医師の診断を仰ぐことも大切です。 ウォーキング ウォーキングは、糖尿病改善のために効果的な運動のひとつです。特に肥満の方は、膝に負担のかかりやすいジョギングよりもウォーキングが推奨されています。 日常生活に無理なく取り入れられるため、これまで運動習慣がなかった方にもおすすめです。 ウォーキングの際は、ふつうに歩くより大きめの歩幅で、スピードを上げて歩くのがコツです。 少々息が荒くなるものの、隣の方とおしゃべりできる程度の速さが目安となります。姿勢のよさを意識し、腕を大きく振って歩きましょう。 また、食後30分~1時間後に10分間のウォーキングを取り入れると、食後の血糖値上昇を抑えるのに効果的です。 サイクリング 肥満が原因でウォーキング中に負担を感じる場合は、無理な継続は禁物です。膝や足首、腰など、体のさまざまな部位に問題が生じる可能性があります。 長期間継続して運動するために、体に負担のかからない方法を見つけましょう。 おすすめの運動のひとつがサイクリングです。足や膝、腰などへの負荷がかかりにくく、運動習慣のない方でも気軽に取り入れられます。 週に3回、1日に合計30分以上自転車運動する生活を3カ月続けたことで、減量やインスリンの働きが高まる効果がみられたという調査もあります。 また、自転車で走るのは爽快感があり、ストレス解消にもつながります。 ジョギング ジョギングは道具も場所もいらず、手軽にはじめられるスポーツです。ウォーキングやサイクリングなどと比べると体への負担は大きくなりますが、時間あたりのカロリー消費量も多くなります。 まずはウォーキングからはじめ、徐々にジョギングへ切り替えていくのもおすすめです。 走る際はフォームを意識し、ケガをしないように気をつけましょう。 歩幅は大きくとりすぎず、つま先から着地して体を小刻みに動かします。運動前にはストレッチや準備運動を行い、ケガの予防に努めてください。 体のケアと疲れを残さないために、運動後の整理運動も大切です。スピードはウォーキングと同様、おしゃべりしながら走れる速さが目安となります。 スイミング 体重による関節への影響が心配な方には、スイミングがおすすめです。水の浮力を利用できるため、足腰への負担も軽減されます。 また、神経障害や動脈硬化などの影響で下半身の血流が悪い方にも、負担のかかりにくいスイミングがすすめられています。 スイミングは陸上の運動よりもカロリー消費が高いことで知られています。水の抵抗や水圧などが体全体に加わることが理由のひとつです。また、水温が体温より低いことも、カロリー消費を促進します。 これは、体が体温を一定に保とうとエネルギーを燃やすためです。泳ぎに自信がない方はであれば、水中ウォーキングからはじめるのもおすすめです。 まとめ 糖尿病の改善には運動療法が効果的ですが、病状や合併症などに応じて、患者ごとに適した運動方法は異なります。 まずは運動をはじめる前に医師の診断を仰ぎ、自身に適切な運動療法を行いましょう。 運動をすすめられた場合には、継続的な有酸素運動に努めましょう。ウォーキングやサイクリングなら日常生活に取り入れやすく、手軽にはじめられます。 軽い運動からはじめて、ジョギングのように強めの運動へ移行していくのもおすすめです。 体重による負荷が心配な方は、スイミングや水中ウォーキングなど、体への負担が少ない運動を取り入れていきましょう。
最終更新日:2022.10.31 -
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糖尿病と血糖値の関係|正常値と目標値を把握しよう 年齢を重ね、普段の食生活を省みると、血糖値が気になってきてしまう。そのような時は、血糖値の正常値と目標値を確認してください。 これらの数値を把握することは、体調や糖尿病リスクを知る目安になります。同時に、糖尿病が疑われる数値や食後血糖値の上昇を表すGI値についても確認しましょう。 これらの情報をもとに、自身の血糖値レベルを把握することができます。 糖尿病と血糖値の関係 糖質(炭水化物)は体内に取り込まれるとブドウ糖になり、血液を介して細胞へ運ばれ、人が活動するうえでのエネルギー源になります。この際、インスリンにはブドウ糖を細胞へ取り込ませたり、筋肉や脂肪に蓄えたりする働きがあります。 インスリンの分泌量が少なくなるとブドウ糖がうまく細胞へ取り込まれなくなり、血糖値の上昇につながります。糖尿病とは、上昇した血糖値の数値が高いままになってしまう病気です。 糖尿病による高血糖の慢性化は、血管内に損傷を引き起こします。最小血管と呼ばれる細い血管がダメージを受け、網膜症や腎症を誘発。併せて末梢神経にも影響は及び、足の壊疽(えそ)など血管以外にも障害が広がります。 また、大血管(太い血管)への影響も小さくはなく、血管の壁が硬くなることにより、動脈硬化を引き起こす可能性があります。動脈硬化は、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの合併症を招く症状で、高血圧や脂質異常症など生活習慣病との併発に注意しなければいけません。 このように、血糖値の上昇はさまざまな症状や障害の原因になります。 血糖値の正常値 血糖値の正常値の基準は、空腹時で110mg/dl未満、食後2時間後で140mg/dl未満です。食後に血糖値が上がり、空腹時に下がるのは普通のことで、前述の数値の範囲内であれば問題ありません。 ただし、食後の血糖値が低下せずに140mg/dlほどの状態が続くと、「食後高血糖」と診断されます。糖尿病を発症してまだ日が浅い患者は、空腹時の血糖が正常であっても、食後に高血糖になりやすい傾向にあります。 糖尿病の進行を防ぐためには、空腹時と食後の血糖値を正確に測り、必要に応じて食事制限を行うなどの処置が必要となります。 正常な血糖値 ・空腹時で110mg/dl未満 ・食後2時間後で140mg/dl未満 血糖値の目標値 血糖の目標値は、日本糖尿病学会のガイドラインが指標になります。「糖尿病診療ガイドライン2002-2003」によると、空腹時の血糖値は100mg/dl未満、食後2時間血糖値なら120mg/dl未満がそれぞれ「優(excellent)」判定で、もっとも望ましい数値となっています。 ちなみに、空腹時血糖値は100-119mg/dl、食後2時間血糖値は120-169mg/dlが「良(good)」判定。もっとも悪い数値を意味する「負荷(poor)」判定は、空腹時血糖値が140mg/dl以上、食後2時間血糖値は200mg/dl以上とされています。 負荷判定の水準となると、生活指導や薬物療法でもコントロール不可とみなされ、早期の専門治療が求められます。 糖尿病が疑われる検査値 糖尿病の診断では、血糖値のほかHbA1cの推移もチェックされます。診断で「境界型」と判定されれば糖尿病予備軍、「糖尿病型」と判定された場合には、血糖値改善のための必要な治療が施されます。 境界型に分類されるのは、空腹時血糖値が110~126mg/dl、食後2時間血糖値が140~200mg/dlの場合です。このケースでは耐糖能異常の状態にあるため、動脈硬化の有無を検査します。 血糖値が糖尿病型に分類されるのは、空腹時血糖値が126mg/dl以上、食後血糖値が200mg/dl以上。HbA1c が糖尿病型と判断されるのは、HbA1cが6.5%以上の場合です。 糖尿病に分類される血糖値 ・空腹時血糖値が126mg/dl以上 ・食後血糖値が200mg/dl以上 ・HbA1cが6.5%以上 1回の検査で血糖値とHbA1cの両方が糖尿病型に属する人は糖尿病と診断され、いずれか一方のみが糖尿病型であれば再検査を受けることになります。 GI値(グリセミック指数とは) 糖尿病予備軍の人や、食後血糖値が高いままの「隠れ糖尿病」の人は、食後の血糖上昇値を食品別に把握することが大切です。そこで確認したいのがGI値です。GI値とは、糖質摂取後2時間までの血中糖濃度を計った数値のことで、糖質の吸収度合いを示します。 低G1食品は糖化の抑制に有効かつ内臓脂肪の増加を防ぐ効果も期待されるため、糖尿病予備軍のほか、肥満体質やメタボリックシンドロームの予防・改善対策としても知られています。 一般的に、炭水化物は血糖値の上昇を招きやすい栄養素です。食後の急激な血糖値上昇を防ぐには、同じ炭水化物食品でも食物繊維が豊富で、なおかつ低エネルギーのものが望ましいです。 普段どのような食生活を送っているかで、その人の糖尿病リスクの度合いも測れます。 GI値が高い食品の摂取が多いと、現在は健康であっても、将来的に食後血糖値の上昇を招く可能性もあるでしょう。そのような「隠れ糖尿病」の人を探す指標としても、GI値は役立つ指標です。 さまざまな食品のGI値 オーストラリアのシドニー大学では、食品を以下のように区分しています。 ● 高GI食品:GI値70以上 ● 中GI食品:GI値56~69 ● 低GI食品:GI値55以下 ※グルコースを100とした場合。以下は、代表的な食品をGI値の区分ごとに分けた表です。 低GI値に相当する食品はたくさんありますが、毎日調理する食材として徹底することは大変です。飲むだけで摂取できる牛乳や、調理の必要がない果物類など、加工の手間がかからない食品も糖尿病予防には効果的なので、積極的に取り入れていきましょう。 GI値を下げる食品 血糖値コントロールやGI値を低下させる効果が期待される食品について、その特徴を具体的に紹介していきます。 ・牛乳 朝食時に牛乳を飲むと、食後血糖値の上昇抑制が期待できます。カナダのゲルフ大学とトロント大学が共同で行った「朝食時の牛乳と水の比較実験」では、牛乳に食後の血糖値上昇を抑える働きがあることが確認されました。 それだけでなく、昼食以降の血糖値も押さえられる「セカンドミール効果」も期待できるそうです。セカンドミール効果とは、はじめの食事が次の食事の後の血糖値に影響をおよぼす現象です。この理論を活用すれば、朝食を起点とした1日の血糖値コントロールに期待が持てます。 ・わかめ 理研ビタミンと藤女子大学の共同研究では、わかめの摂取が食後の血糖値抑制に役立つことがわかりました。実施されたのは、健康的な成人女性9人を対象に行った「白米のみ」と「白米とわかめ」の比較実験。 結果は、白米だけより、わかめとの同時摂取のほうが、血糖値の上昇を食後15分、30分、120分にて抑制できたというものでした。この実験では、わかめとの同時摂取がGI値の低下につながることを示しています。わかめは日本人にとって身近で取り入れやすい食品です。 スープやみそ汁、サラダなどに積極的に取り入れて、血糖値コントロールに役立てましょう。 ・バナナ 食物繊維やビタミン、ミネラルなどの栄養素に恵まれたバナナには、血糖値下降作用を持つカリウムも含まれます。インスリンには、血液中の糖質をエネルギーとして蓄えるうえで重要な働きがありますが、カリウムには、このインスリンの効果を高める作用があります。 バナナも手軽に購入できる身近な食品ですので、朝食時に取り入れるなど糖尿病予防に役立てましょう。なお、バナナは高カロリーの果物ですので、1日1本までにとどめることが推奨されます。 まとめ/糖尿病の血糖値と関係|正常値と目標値を把握しよう 血糖値は食後に上昇するものではありますが、その後正常範囲に収まらなければ「食後高血糖」と診断されます。空腹時血糖値が正常だからといって安心せず、食後高血糖も合わせて確認しましょう。また、血糖値上昇にかかわるGI値は、適切な食品選びに役立ちます。 血糖値や肥満が気になる方は、GI値55以下の低GI値食品を普段から積極的に取り入れていきましょう。 監修:リペアセルクリニック大阪院 ▼こちらも併せてご参照ください
最終更新日:2022.10.31 -
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糖尿病の兆候は足、目、尿に出る|早期発見して予防しよう 糖尿病は発症当初、自覚症状がほとんどありません。体の異変を感じたときには、ある程度病状が進行していることがほとんどです。 糖尿病による初期症状が現れていても気がつかず「歳のせい」と放置してしまう人もいます。 糖尿病を放置すると重大な合併症を引き起こすことがあります。ここで糖尿病の症状を把握しておき、早期治療に取り組めるようにしてください。 今回は「足、目、尿」に着目して紹介してきます。 糖尿病の兆候 糖尿病は初期段階ではほとんど自覚症状がありません。また、症状が出たとしても少しずつ、ゆっくり現れます。 糖尿病の兆候には次のようなものがあります。 ・疲れやすくなる ・おなかが空きやすくなる ・皮膚が乾燥する ・皮膚がかゆい ・切り傷が治りにくくなる ・手足の感覚が鈍くなる ・手足にチクチクした痛みが走る ・目がかすむ ・頻尿なる ・尿量が増える ・感染症にかかりやすくなる ・勃起不全(ED)など性機能が低下する そのほかにも、いろいろな部位にさまざまな形で症状が現れますが、本稿では足、目、尿について詳しく紹介していきます。 こちらも併せてご参照ください 足に出る兆候 足に出る兆候には下記のようなものがあります。 ・巻き爪 ・靴擦れ ・爪が厚くなる ・かかとやつま先などが乾燥する ・水虫 ・タコや魚の目 ・しびれる ・痛む ・感覚がない ・こむら返り ・ほてる ・冷える ・歩くふくらはぎが痛む ・傷が治りにくい 糖尿病患者の方は免疫機能が低下しているので傷が治りづらく、さらに悪化すると足が壊死し、最悪の場合は切断にいたることもあります。 目に出る兆候 糖尿病患者の方の目に現れる兆候は次のとおりです。 ・目がかすむ ・飛蚊症 ・視野に黒みがかかる ・急に視力が低下する 飛蚊症とは蚊や煙の煤(すす)のようなものが飛んでいるように見える症状です。 これらの症状は、糖尿病の合併症である糖尿病網膜症が原因です。この病気は初期では自覚症状がなく、上記のような症状が出るころにはかなり進行しています。 最悪の場合、失明することになるので、目がかすむようなことがあれば、医者の診察を受けましょう。 尿に出る兆候 糖尿病患者の方の尿に現れる兆候とそれに関連した症状を紹介します。 ・尿量が多くなる ・尿が頻繁に出る ・喉が渇く 糖尿病で血液中の糖が増えると、大量の糖を薄めるために腎臓が過剰に水分を排出しようとします。そのため、尿が多く出て、身体が水分を欲して喉が渇くようになります。 その他の糖尿病チェックポイント 足、目、尿以外の糖尿病のチェックポイントは次のとおりです。 ・疲れやすい ・食欲が旺盛になる ・体重が急に減った ・物忘れが増える ・傷が治りにくい また、糖尿病には遺伝する傾向があります。症状がみられない場合であっても、家族や親族が糖尿病を発症していたり、心臓病や脳卒中を起こしていたりすると遺伝によって糖尿病のリスクが高まります。 糖尿病が進行すると合併症の危険性も高まる 糖尿病が恐いのは、進行すると命にかかわる合併症の発症リスクが高まることです。網膜症は失明を招き、腎症は腎不全を招き、神経障害は足の切断を招くことになりかねません。 さらに脳梗塞や心筋梗塞といった重い後遺症が残ったり、突然死のリスクが高い病気も発症しやすくなります。こうした重い病気を起こさないためには、症状を早めに感じ取り、糖尿病を早期発見して予防に努めることが大切です。 では、どのようなことに取り組めば糖尿病の進行を防げるのか、みていきましょう。 糖尿病を予防するには 糖尿病の進行を防ぐには、食事療法・運動療法・ストレス対策の3つに取り組む必要があります。 どのようなことをすれば良いのか、ひとつずつみていきましょう。 <食事療法> 糖尿病の食事療法では、摂取エネルギーと栄養素に着目します。 糖尿病患者の方は、1日の摂取エネルギーを「標準体重×身体活動量」以下にするようにしましょう。標準体重と身体活動量は以下のとおりです。 ・標準体重=身長(m)×身長(m)×22 ・身体活動量 軽い労作(デスクワークが主な人):25~30kcal/kg 普通の労作(立ち仕事が多い):30~35kcal/kg 重い労作(力仕事が多い) :35~kcal/kg 例えば、身長160センチ(1.6m)の普通の労作の人の1日の摂取カロリーは1,690~1,971kcalです。 計算式は以下のとおりです。 ・1日の摂取カロリー=1.6m×1.6m×22×30~35kcal/kg=1,689.6~1,971.2kcal 栄養素はバランスよく摂ることが大切です。 1日の摂取カロリーの内訳を次のように配分するように心がけましょう。 ・炭水化物:55~60% ・たんぱく質:標準体重1kgあたり1.0~1.2g ・脂質:残り さらにビタミンやミネラルも意識して摂るようにしてください。 こちらも併せてご参照ください。 https://africatime.com/topics/1688/ <運動療法> 糖尿病患者の方のなかには、運動が苦手な方や運動する時間がない方も多いと思いますが、運動をするとインスリンが効きやすい体になります。 インスリンは血糖値を下げるホルモンですから、運動は糖尿病予防に効果的なのです。 特に糖尿病治療に有効とされているのは、ウォーキング、ラジオ体操、自転車、ジョギング、水泳などの有酸素運動です。これらの運動を1回20~40分、週3回を目安に実施してください。 運動習慣がない方が急に負荷が大きい運動を始めると低血糖を引き起こしたり関節に負担がかかったりしますので、無理のない範囲から始めてください。 <ストレス対策> 糖尿病は、患者の方の心の動きや置かれている社会環境の影響を受けます。過度なストレスを受けるとストレスによって分泌されるホルモンの関係で血糖コントロールが難しくなるためです。 したがって、意識的にストレスを解消することは糖尿病の悪化の予防と改善に繋がります。 しかし、ストレスを解消しなければいけないことはわかっているけど、「どのようにストレスを解消したら良いのかわからない」という方も少なくないと思います。 そこで「休息」「気分転換」「ストレス原因から離れる」の3つに取り組んでみてください。 まずは、 ・休息を取る ・趣味や好きなことをして気分転換をする ・ストレスの原因から離れる といったことを積極的に取り入れましょう。 例えば、職場の理解を得て休みをとり、趣味や旅行で息抜きをしてみるとよいでしょう。心に余裕ができると、どんなことにストレスに感じていたのか気づくかもしれません。 まとめ 今回は糖尿病の症状のうち、足、目、尿に注目してみました。 糖尿病は初期段階では自覚症状がありませんが、必ず自覚症状が出てきます。わずかな自覚症状が出た段階で予防・改善に進まなければ、合併症を招き、悲惨な結末を迎えてしまいます。 ですから、足、目、尿はじめとした身体の「小さな変化」を見逃さないようにしてください。 「いつもと何かおかしい…」「糖尿病の症状かもしれない」と感じたら、近所の内科クリニックや糖尿病専門のクリニックを受診してください。 糖尿病対策に「早すぎる」ことはありません。 監修:院長 坂本貞範
最終更新日:2022.10.18