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幹細胞治療という言葉を聞いたことがあるでしょうか。実は現代の医療で最先端の、副作用などがほとんどとなくそれでいて大きな効果が期待できる治療方法なのです。この幹細胞治療はあらゆる分野で活用され始めていますが、美容の世界などでも積極的に取り入れられています。そこでここでは、幹細胞治療とはいったいどういうものなのか、そしてどのような効果が期待できるのかという点について解説して行きます。 幹細胞治療とは何か? そもそも幹細胞治療とはどのようなものなのでしょうか。 幹細胞治療とは再生医療の一種 再生医療という言葉は聞いたことがあるでしょうか。幹細胞治療とは再生医療の1つの方法です。 人間は約60兆個の細胞で構成されていますが、その細胞の中に幹細胞というものがあります。幹細胞とは、細胞分裂の元になるもので、いわば細胞の母体です。再生医療とはこの幹細胞を身体に注入することで、身体の欠落している部分を再生させたり、減少して来ている部分を補ったりする、最先端の治療法です。既存の医薬品では治療が困難な病気やケガ、あるいは治療法が確立されていない病気に対して、効果をもたらすものとして注目されています。 近年、日本人を始め人間の平均寿命は大きく伸長しましたが、同時に細胞の老化が元となっている慢性的な病気も増えており、このような病気を完全に治す治療法はまだ見つかっていません。しかし再生医療であれば、そのような今まで医師が治療をあきらめていた病気の場合でも、治療を施すことができるのです。 ただし再生医療や幹細胞治療はどのような病院、どのような医師でも行うことができるものではありません。再生医療は使い方を間違えるととんでもない悲劇を巻き起こす可能性があります。したがって、再生医療や幹細胞治療を行う場合には、その実施機関や実施方法について、法律に基づく厳しいチェックがなされます。ですから再生医療や幹細胞治療を受ける場合には、治療のための治療計画を厚生労働省に提出し、認可されている医療機関を選ぶことが非常に重要です。また再生医療や幹細胞治療を行う医師にも高い専門知識と十分な経験が必要です。この点にいても、治療を受ける場合には事前の確認が必要でしょう。 幹細胞治療とは注射で幹細胞を注入する方法 約60兆個の細胞からできあがっている人間の身体ですが、しかしその最初はたった1個の受精卵です。この受精卵が細胞分裂を繰り返し、身体のあらゆる部分の形も機能も異なった多様な細胞に成長します。皮膚、脳、心臓、手足は全く違う臓器であり身体の一部ですが、元は1個の受精卵だと思うと非常に不思議でしょう。このような細胞が多様な組織や臓器に変わっていくことを「分化」と言います。 しかし細胞には寿命があります。細胞の寿命が来ると、その細胞は分化することも、増殖することもできなくなり、やがて死んでしまいます。たとえば、皮膚から垢が出ますが、これは皮膚の細胞が死んで、身体からはがれ落ちていくことです。しかしそれでも皮膚が一定の状態を保てているのは、古い皮膚が死んでも、また新しい皮膚の細胞が補充できているからです。このような分化して完全に身体の臓器や、皮膚、や血液などに分化し終わった細胞を「体細胞」、これから多様な分化を行う細胞を「幹細胞」と言います。 幹細胞には「体性幹細胞」と、受精卵から培養して作られる「ES細胞」、人工的に作成「iPS細胞」があります。 この3つの中で現在最も再生医療に使われているものが「体性幹細胞」です。体性幹細胞は人間の身体の中にある細胞が元になっているので、使用しても身体に副作用を起こりにくく、最も治療に応用しやすいものです。さらに体性幹細胞にもいくつか種類があります。その代表的なものは「間葉系幹細胞」です。そして間葉系幹細胞の中でも、最も治療に多く用いられているのものが脂肪から抽出されたものです。これを脂肪性幹細胞とも言います。 脂肪性幹細胞は、ES細胞やiPS細胞などの幹細胞に比べ発がんのリスクが非常に低く、また身体の中から取り出すことも簡単で、患者に負担をかけないため、現在どんどん医療の最前線で使われています。 具体的に脂肪幹細胞を使った幹細胞治療はどのようなものかと言うと、聞いてしまえば意外に簡単です。それは身体の脂肪を採取し、その中の幹細胞を増やして、また身体の中に戻してやり、欠落した組織や減ってしまった細胞をそこから増やして、再生させる方法です。 このように治療行為としては非常にシンプルなので、幹細胞治療は入院の必要さえありません。基本的には日帰り治療で可能な方法です。 幹細胞治療の効果は?どのような種類がある? では幹細胞治療はどのような悩みに効果があるのでしょうか。 美容治療として 1つは美容のための治療に活用されているということです。たとえば顔のシワは顔の皮膚の奥深くにある真皮層が加齢などのために減少し、その減ってしまった真皮層の部分が、皮膚表面で凹んでしまうことによって発生します。しかし幹細胞治療は、その真皮層になるべき幹細胞を注入するので、真皮細胞が再生し、その結果シワが消えてしまうというものです。 シワを改善させる美容医療には、ボトックスやヒアルロンなどと言った、薬剤や身体の成分そのものを皮膚に注入して行う方法が今までは一般的でしたが、しかしそれらは薬剤が代謝されてしまうことで、効果が生まれている期間に上限がありました。しかし幹細胞治療であれば、そもそもの細胞の増える母体を注入してあげることなので、期間的な上限はありません。原則として、幹細胞治療を行えば、不足している、あるいは欠落している細胞が増殖していきますから、いつまで若々しい肌でいられるのです。 このように幹細胞治療は美容の世界において画期的なシワ、たるみなどの防止、改善効果をもたらすものなのです。 またボトックスにしてもコラーゲン注入にしても、何度も繰り返さなければならないため、トータルとして治療費は非常に高くなってしまいます。しかし幹細胞治療は原則として1回で済むので、トータルでの治療費も非常に安く済むのです。その意味で幹細胞治療による細胞治療による美容医療は極めてコストパフォーマンスが高いと言えるでしょう。 関節炎などの改善 主に加齢によって生じる膝などの関節炎は非常につらいものですが、これらの関節炎は関節の軟骨がすり減ったり、関節の接続をスムーズにするコラーゲンなどの成分が減少することによって起こるものなので、抜本的な治療法がない悩みでした。 しかし幹細胞治療によって、軟骨やコラーゲンの元となる幹細胞を注入できるので、関節は若いころのように再生し、嘘のようにその悩みを解消してくれるのです。 関節炎の幹細胞治療には2つの方法があります。1つは関節鏡を用いる方法で、これは関節にカメラを差し込み、患部を見ながら幹細胞を注入するものです。もう1つは注射を用いる方法で、患部に幹細胞の含まれる薬剤を注入するものです。関節鏡を用いる方法は患部に確実に幹細胞を送り届けられるので確実ですが、身体に小さな穴を開けるので、患者には多少の負担がかかり、場合によっては数日の入院が必要になります。しかし注射であれば、治療後、患者はすぐに身体を動かすことができるので、日帰りで治療を受けることが可能です。 肝炎の治療 肝炎は肝臓の一部の細胞が壊死、あるいは機能不全になっている状態です。この肝炎にも幹細胞治療を行うと、壊死している肝臓に代替する肝臓を再生させることができるので、飛躍的な改善が期待できます。ただし、肝臓の場合はカメラを挿入することも、注射で幹細胞を注入することも難しいため、方法としては点滴で幹細胞を送り込む方法になります。点滴で輸入された幹細胞は血液に乗って肝臓に到達し、壊死した肝臓や機能していない肝臓の細胞を修復し再生させます。 糖尿病の治療 糖尿病は、血液中の血糖(ブドウ糖)が多くなる病気です。これは、すい臓が何かしらの原因で本来持っている血糖値を一定範囲におさめる働きができなくなる病気です。また、糖尿病は一度発症したら完治しない病気と言われています。しかし、幹細胞治療をすることにより、すい臓が本来持つ機能を取り戻すように幹細胞が働きかけ、正常に血糖値をコントロールするようになる可能性があります。 脳の疾患の治療 今まで脳梗塞などによって機能不全になってしまった脳には効果的な治療の方法がありませんでした。しかし幹細胞治療によって、幹細胞を脳に送り込んでやれば、機能不全になっている脳細胞を再生させることができるため、脳の損傷によって起こっていたさまざまな障害を改善させることができるようになってきました。 自己免疫疾患の治療 自己免疫疾患とは、自分の細胞が暴走し身体に害を働くようになった病気で、これもまた抜本的な治療法がないものでした。たとえば膠原病や、慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、慢性甲状腺炎などがそれに当たります。できることはせいぜいステロイドなど身体に大きな副作用のある薬剤を注入して、病気の発症を抑えたり、症状を緩和させることでした。 しかし幹細胞治療によって注入される幹細胞には、身体の免疫を調節したり、過度な反応を抑制する作用があるので、このような治療方法が見つからない自己免疫疾患に対しても極めて高い治療効果が得られるようになりました。 幹細胞治療の流れは 幹細胞治療の流れは以下のようなものです。 最初に専用の器具によって、腹部など脂肪が豊富にある部位から脂肪を少量、具体的には1/1000g(米粒2つから3つ分程)という単位で採取します。採取時間は数分で、局所麻酔を使うため、痛みはほぼありません。 そして採取した脂肪から幹細胞を分離させ、培養します。 その培養した幹細胞を患部に注入します。また培養した幹細胞は冷凍保存できるので、治療を再度行いたい場合でも、その凍結している幹細胞を利用することができます。 幹細胞治療にはリスクはあるのか? このように画期的で、今まで治療が難しいと思われていた病気に大きな効果をもたらす幹細胞治療ですが、リスクはあるのでしょうか。 幹細胞治療は、自分自身の幹細胞を使用して損傷または弱ってきた組織を修復することで、痛みを無くしたり、失われた人体機能を回復させる治療です。 そのため、拒絶反応が起こりにくくリスクはほとんどありません。 まとめ いかがですか。 幹細胞治療は今まで治療が不可能だと思われていたさまざまな病気を治してくれる画期的な治療方法です。もしも上で挙げたような悩みを持っているようであれば、幹細胞治療を検討してはいかがでしょうか。
2021.01.06 -
- 糖尿病
目次 糖尿病とは インスリン 1型糖尿病と2型糖尿病 関連する合併症 検査と診断 治療 糖尿病とは 普段わたしたちが食べている食べ物は大きく分けてたんぱく質・脂質・炭水化物の三大栄養素に分けられます。健康な人でも炭水化物(ブドウ糖)を摂ると一時的に血糖値が高くなりますが、時間とともに正常値に収まります。 糖尿病の人の場合、この血糖値が正常値に戻らず高い状態になります。これは「インスリン」という膵臓から分泌されるホルモンの分泌が少なかったり、「インスリン」が正常に働かないことが原因です。 この国の糖尿病患者は生活習慣(食生活など)や社会環境の影響もあり昨今増加しています。糖尿病は一度発症すると、完全に治癒することはありません。放置すると網膜症・腎症・神経障害などの重篤な合併症により失明や透析治療を要することもあります。 糖尿病は発症する原因によって「1型糖尿病」「2型糖尿病」「その他」「妊娠糖尿病」のタイプに分けられます。 インスリン インスリンは血糖値(からだの中のブドウ糖の量)を減らすホルモンです。インスリンは膵臓(すいぞう)のランゲルハンス島とよばれる場所にあるβ細胞(ベータさいぼう)で作られています。 炭水化物は消化酵素のはたらきにより、ブドウ糖に分解され、小腸から吸収されます。このとき、小腸からGLP-1とよばれるホルモンが血中に放出されます。 血液のなかのブドウ糖が増えると、このホルモンが血液を介して膵臓にインスリンを放出するように命令します。その結果、ブドウ糖を臓器や筋肉に取り込ませます。また体の中の筋肉などに送りこまれたブドウ糖を、解糖系と呼ばれる体を動かすエネルギーに変えることを促進します。このようにしてインスリンは血糖値を調整するはたらきを持っています。 1型糖尿病と2型糖尿病 1型糖尿病 1型糖尿病はこどもや青年に多く、若年性糖尿病とよばれることもあります。膵臓のランゲルハンス島のβ細胞が壊されたり、障害されることで発症します。 最初に風邪の様な症状があり、そのあと喉が渇いたり尿の量が多くなったり急激にやせるなどの症状がみられます。原因はまだ不明なことが多いですが、自己免疫性が発症の90%を占めています。 自己免疫は本来、体の外の敵から自分の体を守るためにはたらくものですが、誤って自分のからだのβ細胞を標的にしてしまうことが発生の原因と言われています。この発症にはウイルス感染と関連があるといわれています。主なものエンテロウイルス(いわゆる風邪)・ムンプス(おたふく風邪)などです。 1型糖尿病はインスリン依存型糖尿病(IDDM)とよばれ、ほとんどの場合インスリン療法が必要不可欠となります。 2型糖尿病 2型糖尿病は最も一般的な糖尿病で、糖尿病のうち90%以上がこの2型糖尿病です。40歳を超えたあたりで発症することが多いです。この国では男性にやや多く発症します。 太っている人・または過去に太っていた人に多いといわれていますが、太っていなくてもインスリン感受性の低い人は発症することがあるので注意が必要です。原因はさまざまで、体質や、高カロリーな食生活・高脂肪食・運動不足などの生活環境の組み合わせでの発症が考えられます。 遺伝によって発症することも知られており、親が糖尿病だったという人が多いのもこのタイプの糖尿病の特長です。その結果、インスリンの分泌量や作用不足(効きにくくなる)が起こります。このインスリンの作用不足はインスリンの分泌能が低くなるという原因と、肝臓や筋肉がインスリンに対する抵抗性(効きにくくなる)が原因となります。 インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)ともよばれますが、治療にインスリンを用いることもあります。 症状は2型糖尿病の場合、初期症状はほとんどなく、早期発見が難しいです。悪化するにしたがって、口の中が渇く(口渇)、喉が渇きやすくなる(水分を多く摂るようになる)、トイレが近くなる、体重が減る、疲れやすくなるといったような症状がみられます。また、血糖値が上がりすぎると、意識障害を起こすことがあります。 さらに悪化すると、糖尿病網膜症(目の網膜にある血管に出血がおこったり、異常な血管が出来てしまうことで視力が低下したり失明などを引き起こす)、糖尿病性腎症(腎臓の血管が破壊されることにより、腎臓の機能が低下し、腎不全などを起こす)といった合併症がみられます。 一度発症すると完全に治ることはありません。 要因 2型糖尿病は遺伝によっても発症しますが、ストレスや肥満や過食・運動不足によっても発症する生活習慣病の一つです。そのため、このような要因を心がけていれば未然に防ぎ糖尿病になりにくい日常生活を送ることが出来ます。 昨今、2型糖尿病が増えている背景には急速な食の欧米化が挙げられます。もともとアジア人はインスリンの分泌能が低いため、こうした食の欧米化に膵臓が対応できず、血糖値の高い状態となります。このような食生活を改善し、カロリーを必要以上に摂ることなく生活を送ることが食事療法の基本となります。 関連する合併症 合併症の中には急性合併症と慢性合併症があります。急性合併症は、糖尿病ケトアシドーシスと高血糖高浸透圧症候群があります。慢性合併症は血糖値が高い状態を放置していると、血管をボロボロに傷付け、動脈の老化を進めることで起こります。血管病には大きい血管が障害される大血管症と、小さい血管が障害される細小血管症に分けられます。 糖尿病ケトアシドーシス 糖尿病ケトアシドーシスは血糖値を下げるインスリンが作用しないことで起こります。ブドウ糖をエネルギーとして利用できなくなるため、からだは代わりに脂肪をエネルギーとして分解しエネルギーを作り出します。脂肪を分解するとケトン体という物質が血液中に増えます。これにより血液中が酸性になり、ケトアシドーシスになります。 重度な脱水状態になり、急に喉が渇いて水をたくさん飲んだり、尿がたくさん出て全身のだるさがみられます。吐き気や腹痛がみられることもあります。また、高血糖状態により意識障害や昏睡になることもあります。 インスリンの不足で起こるので、1型糖尿病を発症したときや、インスリンを適切に投与されなかったときなどに起こります。また、適切に投与していた場合でも、全身状態が悪い時などは高血糖状態となりケトアシドーシスとなることがありますので、こまめな血糖値測定が必要となります。 1型糖尿病だけでなく、2型糖尿病でもジュースを大量に飲んだ時などに起こることがあります。これはソフトドリンクケトーシスとよばれ、1日に何リットルもジュースを飲んだ際などに大量の糖が血中を流れ、血糖値の急上昇が起こります。それにより昏睡状態になることがあります。インスリン注射を必要としていない患者さんにも起こり得るので注意が必要です。 高浸透圧高血糖症候群 高浸透圧高血糖症候群は糖尿病ケトアシドーシスと同じく高血糖をきたす急性合併症です。重度の高血糖状態と極度の脱水や意識障害を引き起こします。高齢者に多く、感染症や嘔吐・下痢による脱水などの糖尿病以外の病気が引き金になることもあります。 大血管症 高血糖状態が続くと、大血管では動脈硬化が進行します。動脈硬化は糖尿病をはじめとして、高脂血症や高血圧症、喫煙などでも起こりやすいです。初期の動脈硬化は動脈の内側の壁にさまざまな物質が沈着して分厚くなったり、硬化したり、プラークとよばれる隆起ができます。このプラークが剥がれることによって血管で詰まることにより、脳梗塞、心筋梗塞、末梢動脈疾患(PAD)などさまざまな合併症を起こします。 脳梗塞は脳の血管が詰まることで発症します。突然の意識障害や意識消失、左右どちらかの手足の麻痺、ろれつが回らなくなるといった症状を引き起こします。場合によっては一時的に症状が治まることもありますが、時間が経つにつれて症状は悪化しますので注意が必要です。早期に受診出来るかが今後の予後に大きくかかわるので早急に医療機関へ受診しなければいけません。 心筋梗塞は心臓の血管が動脈硬化により狭くなることで発症します。狭くなった心臓の血管に血栓などが詰まることにより心筋が酸素不足になり壊死します。血流が止まると約20分で心筋の壊死がはじまり、一度壊死した心筋細胞は元には戻らないので早期に処置が必要となります。初期には体を動かすときに胸が痛くなり、安静にしていると収まる狭心痛が特徴的です。 細小血管症 細小血管症は細い血管が集中している場所で合併症が起こります。主に、眼・腎臓・神経です。 まず眼の網膜の中の血管に障害(網膜の中の血管に出血したり、異常な血管ができる)によって、視力の低下や、失明が起こります。 腎臓は血液をろ過し、体に不要なものを体の外へ排出する役割を持っています。このろ過に関与する糸球体とよばれる場所の毛細血管が壊されることによって腎臓の機能が低下します。これを腎不全といいます。 腎症が進行するにしたがって、薬で血圧を下げなければならなくなったり、たんぱく質を厳しく制限された食事療法などが必要となります。さらに進行すると、人工透析により機械で血液をろ過することが必要となります。 神経は細い血管によって栄養されています。神経細胞への血流が障害されることで、神経に障害が起こります。手足にしびれがでたり、感覚や痛みにも鈍感になっていたり感じにくくなっているため、足のケガややけどに気付かずに壊疽(えそ)になることがあります。場合によっては足を切断することになります。 その他の合併症 その他の合併症は感染症や歯周病があります。糖尿病の患者さんは肺結核・尿路感染症・皮膚感染症などの感染症にかかりやすい状態になっています。とくに足の皮膚感染症は壊疽につながりますので注意が必要です。また、口内での細菌感染が起こりやすいので、歯周病が悪化することが知られています。 検査と診断 糖尿病の検査では血糖値の測定があります。健康な人でも食事のあとは血糖値の上昇がみられますが、インスリンの分泌により血糖値は徐々に下がります。 早期空腹時血糖検査では検査当日の朝食を食べていない状態での血糖値を測定します。早期空腹時血糖検査で126mg/dl以上で糖尿病型と診断されます。 随時血糖検査では食後からの時間は定めずに血糖値を測定する検査です。随時血糖値が200mg/dl以上の場合は糖尿病型と診断されます。 75gOGTT検査では検査当日の朝までに10時間絶食した状態で血糖値を測定したのち、75gのブドウ糖を溶かした水溶液を飲んで30分と1時間後と2時間後に再度測定するという検査です。この検査は高血糖状態で行うとさらなる高血糖状態を招くことになるので、明らかな自覚症状がある場合は診断に必要ではない検査です。 HbA1cは血液中の赤血球の一種であるヘモグロビン(全身の細胞に酸素を送るはたらきをしている)にくっついている糖化ヘモグロビンを測定する検査です。高血糖状態であればあるほどヘモグロビンに結合するブドウ糖の量は増えます。赤血球の寿命は約120日であり、過去1~2ヶ月の血糖値を測定することができますので、検査直前の食事や運動などの影響は受けない検査となります。 以上の検査で、 ・早期空腹時血糖値126mg/dl以上 ・75gOGTT2時間閾値200mg/dl以上 ・随時血糖値200mg/dl以上 ・HbA1cが6.5%以上 のいずれかで糖尿病型と判定されます。さらに別の日に同様の検査をして再び異常があれば糖尿病の確定診断となります。 また、この検査で「糖尿病型」「正常型」を判定する際に、どちらともいえない「境界型」とよばれる判定が存在します。これは将来糖尿病の発症のリスクが高いことが示唆されますので、6ヶ月~1年で定期的な検査をすることを推奨されます。 また早期に食事療法や運動療法を行うことで未然に防ぐことができますので、生活習慣を見直すことが推奨されます。 治療 糖尿病の治療において最も重要なことは血糖値をコントロールすることです。 薬物療法では、「経口血糖降下薬」「注射療法」が挙げられます。 経口血糖降下薬 ・SU薬(スルホニル尿素薬)は膵臓のβ細胞に作用し、インスリン分泌を促す薬です。 ・BG薬(ビグアナイト薬)は肝臓での糖新生を防ぐ薬です。また、筋肉のブドウ糖利用を促す働きもあります。 ・インスリン抵抗性改善薬は脂肪細胞に作用することでインスリン抵抗性を改善し、インスリンの作用を高めることが出来る薬です。 ・α-グルコダーゼ阻害薬は糖質の分解を抑えることで急激な血糖値の上昇を防ぐ薬です。 注射療法 血糖値を下げるホルモンであるインスリンを直接補充する治療法で、1型糖尿病の患者さんには不可欠な治療となります。2型糖尿病では以前は末期にのみ行われる治療でしたが、食事療法や運動療法、前述の経口血糖降下薬での血糖のコントロールが出来なかった場合や、治療開始時や治療中断時に高血糖状態の場合に用いることも増えました。インスリン製剤は効果時間や持続時間によって超即効型・即効型・混合型・配合溶解・中間型・持続型溶解などのタイプがあり、患者さんの状態に合わせて使用されます。 小腸のL細胞から分泌されるホルモンであるGLP-1(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド-1)は血糖値を下げるはたらきがあります。GLP-1受容体作動薬は、そのはたらきを注射によって補う治療となります。 空腹時にははたらかず、食事により血糖値が上がった際にはたらくため、低血糖を起こしにくいですが、他の薬との併用での低血糖に注意が必要となります。また、食欲を抑える作用もあるとされています。 その他の治療法 薬物療法以外にも、食事療法や運動療法が不可欠となります。 食事療法での適切なカロリー摂取量は、年齢・性別・体格・運動量によって異なります。その患者さんに合った指示カロリー量を超えないことが基本です。特定の栄養素を制限する必要はなく、適正なカロリーを規則正しく摂取することが大切になってきます。 運動療法は糖尿病治療の基本の1つです。運動を行うと筋肉でブドウ糖や脂肪の利用が促進され、血糖値が低下します。さらに、インスリンの作用もよくなり、血糖のコントロールもよくなります。運動の種類としては、散歩や自転車、水泳といった有酸素運動を中心に、筋トレなどの無酸素運動をバランスよく組み合わせるとよいでしょう。 一度発症すると完全に治ることのない糖尿病ですが、血糖値をコントロールすることにより、健康な人と同じように生活を送ることが可能な病気ですので生活習慣や食生活や運動療法を継続して行うことが重要となります。 まずは予防についてもご覧ください
2020.07.21 -
- 糖尿病
- 再生治療
「糖尿病は一生かけてつきあう病気」というイメージは、確かにその通りではあります。 そんな糖尿病治療に用いられる「インスリン注射」は、やはり一生にわたって利用し続けなければならないのでしょうか? こちらも併せてご参照ください そこで、糖尿病患者さんが一生インスリン注射から逃れられないのかについて解説します。 一生にわたってインスリン注射が必要なケース どの糖尿病患者さんでも、一生にわたってインスリン注射が必要になるというわけではありません。 そもそも「治療にインスリン注射が必要な糖尿病患者」となると、以下の2つのケースが考えられます。 ・Ⅰ型糖尿病の患者さん ・Ⅱ型糖尿病の患者さんで、血糖値コントロールが上手くいっていない場合 Ⅰ型糖尿病とは 「Ⅰ型糖尿病」とは、何らかの原因により体内でインスリンを十分に作り出すことができない病気のことです。 本来、高くなった血糖値を下げるために、体内では「インスリン」というホルモンが分泌され、必要に応じて血糖値を下げています。 Ⅰ型糖尿病の場合、インスリンを分泌する機能が極端に低い、あるいは全く分泌できない状態であるため、自身では血糖値を必要なだけ下げることができないのです。 そのため、人工的に(外部から)インスリンを注射という形で補うことで治療を進める必要があります。 従来の治療法では糖尿病を完治させることができなかったため、インスリン注射も一生にわたって必要になるのです。 Ⅱ型糖尿病とは 「Ⅱ型糖尿病」とは、遺伝的要因や生活習慣などの影響でインスリンの効き目が弱まってしまう病気です。 血糖値が高くなるような生活習慣を続けていると、次第にインスリンの分泌や効き目が弱まってしまい、高血糖状態が続いてしまいます。 基本的に生活習慣(食事と運動)の改善により治療を進めるのですが、それだけでは十分に血糖値をコントロールできない場合があります。 飲み薬や注射の形でインスリンの分泌を促す治療や、Ⅰ型糖尿病の患者さんと同じくインスリンそのものを補う治療を必要とする場合もあるのです。 一生にわたってインスリン注射が必要かどうかは、治療開始時の血糖値の状態や年齢などの条件次第だといえます。 インスリン注射をなくすための治療 Ⅱ型糖尿病の患者さんの場合、血糖値コントロールの状況次第では薬物療法をやめることができる可能性があり、一生にわたって薬物療法を続けなければならないというわけではありません。 その手助けになる可能性がある新しい治療法として「再生医療」が注目されています。 再生医療はすい臓の機能を改善することで、インスリンの分泌機能を修復できる可能性があり、完治とまではいかないものの(個人差はありますが)症状の改善により血糖値コントロールを良好な状態に近づけることができる可能性があるのです。 まとめ 「一生インスリン注射とつきあうのか…」となると憂鬱な気持ちになる患者さんも多いでしょう。 そんな状況を改善できる可能性がある再生医療、利用できる医療機関は限定的ではありますが一考の価値がある治療法だといえます。
2020.04.26 -
- 糖尿病
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健康的でたくましい肉体美を理想とする「ボディビルダー」は、実は「糖尿病」の患者さんと共通する部分があることをご存知でしょうか? そこで、ボディビルダーと糖尿病患者さんの意外な共通点について解説します。 ボディビルダーと糖尿病患者の共通点 ボディビルダーと糖尿病患者さんの共通点とは、ずばり「インスリン」です。 インスリンとは「血糖値を下げる」という働きをもったホルモンであり、すい臓(β細胞)から分泌されています。 糖尿病について理解する上で外せないインスリンですが、ボディビルという分野においてもインスリンの存在は無視できないのです。 こちらも併せてご参照ください ボディビルダーがインスリンの存在を無視できない理由 糖尿病ではないボディビルダーがインスリンについて注目する理由は、1つ目に「筋肉グリコーゲン」という貯蔵された炭水化物です。 インスリンは余分な炭水化物を筋肉や肝臓に貯蔵し、筋肉に貯蔵された物を筋肉グリコーゲンというのですが、これが少ないと筋肉がエネルギーに分解されてしまう可能性があります。 そのため、トレーニングによる筋肉成長を阻害しないためにインスリンの分泌を促し、筋肉グリコーゲンを必要な量だけ貯めておく必要があるのです。 2つ目に「BCAA(Branched Chain Amino Achids)を筋肉に運ぶ働き」があります。 インスリンはBCAAというアミノ酸を筋肉に運ぶ働きがあり、これにより筋肉の回復を促進するのです。 ボディビルダーと糖尿病患者のもう1つの共通点 ボディビルダーと糖尿病患者さんの共通点は、もう1つあります。 それは「血糖値が自分の命に直結する可能性がある」という点です。 糖尿病患者さんは自身で血糖値をコントロールすることが難しい状態であり、高血糖によるさまざまな合併症により命の危険にさらされる可能性があります。 では、トレーニングで血糖値コントロールができるボディビルダーが何をもって命の危険にさらされるのかといえば、それは「低血糖による命の危機」です。 前述の通りインスリンは血糖値を下げるホルモンであり、注射薬などの形で外部からインスリンを取り込むことができます。 過剰にインスリンを摂取することで血糖値が過剰に下げられてしまい「低血糖」になると、これも命を脅かす可能性があるのです。 実際、インスリンを原因として死亡したと考えられているボディビルダーは何人か存在します。 再生医療で糖尿病治療 ボディビルダーの場合は、インスリンがなくても命の危機にさらされることは少ないです。 しかし、糖尿病患者さん、特に薬物療法が必要なほど血糖値の状態が良くない患者さんの場合はインスリン注射の存在が欠かせないというケースも珍しくありません。 そして、従来の治療法では根本的に糖尿病を治療することはできず、血糖値をコントロールする生活をずっと続けなければなりませんでした。 それを変えたのが「再生医療」という新しい治療法であり、これは壊れた組織を修復する機能を持った幹細胞を利用してすい臓の機能を改善するものです。 この治療により、糖尿病の根本的な原因を治療することができる可能性があります。 まとめ インスリン注射はボディビルダーにとっては必要不可欠というわけではありません。しかし、インスリン注射が一生必要不可欠となる糖尿病患者さんもいます。また、治療に負担を感じている患者さんも多いでしょう。 治療の負担を少しでも減らしたいというのであれば、症状を改善できる可能性を秘めた再生医療という方法もあります。再生医療による治療について、検討してみてはいかがでしょうか。
2020.03.30 -
- 糖尿病
- 再生治療
- 幹細胞治療
糖尿病治療にはさまざまな方法がありますが、薬物療法の一種に「インスリン注射」があります。 「一生、治らない病気」と呼ばれる糖尿病の患者さんは、このインスリン注射をやめることはできないのでしょうか? 今回は、糖尿病のインスリン注射をやめる方法について解説します。 こちらも併せてご参照ください 糖尿病患者がインスリン注射をやめるには? 糖尿病患者さんが必要とする治療法は、大きく分けて以下の3種類です。 ・食事療法(食事制限により糖質やエネルギー摂取量をコントロールする) ・運動療法(運動により血糖の消費やインスリンの働きをコントロールする) ・薬物療法(薬物により血糖値の状態をコントロールする) このうち「インスリン注射」は、「薬物療法」に属します。 一般的な糖尿病治療は、「食事療法」と「運動療法」をベースに、それでも血糖値をコントロールできない場合に薬物療法が併用されることが多いです。 つまり、薬物療法を併用していた患者さんでも、治療の結果により血糖値の状態が改善されれば薬物療法を中断し、食事療法と運動療法で血糖値をコントロールするスタイルに移行できる可能性があります。 糖尿病患者さんがインスリン注射をやめるためには、薬物療法に頼らなくても良いと診断されるレベルまで治療を進めなければなりません。 誰もが薬物療法をやめることができるわけではない 糖尿病患者さんのすべてが薬物療法をやめることができるわけではありません。 例えば、糖尿病治療には「運動療法」が重要なポイントの1つとなりますが、年齢や身体機能の関係で治療に十分な運動をできない場合もあります。 また、合併症などの関係で糖尿病が重症化し、治療がなかなか奏功しないケースもあるでしょう。 このように、患者さんによっては食事療法と運動療法だけで十分に血糖値をコントロールできるレベルまで症状が改善しない場合もあり、その場合は飲み薬やインスリン注射を利用しなければならないのです。 インスリン注射をやめる治療法「再生医療」の可能性 糖尿病の治療法の1つとして、「再生医療」に注目が集まっています。 再生医療は、壊れた組織(細胞)を修復する機能を持った「幹細胞」の働きを利用し、体の自己再生機能を促進することでさまざまな病気・怪我の治療に役立つ可能性が注目されています。 糖尿病もその1つであり、糖尿病に深く関係する「すい臓」の機能を修復することでインスリンの働きを改善し、インスリン注射をやめるのに十分なレベルまで症状を改善できる可能性があるのです。 まとめ 再生医療の成果は個人差があるので一概には言えませんが、糖尿病の症状が改善することで治療方針を大幅に変化させられる可能性を秘めていることは間違いありません。 インスリン注射をやめるためには症状の改善が必要不可欠です。再生医療による治療を検討してみてはいかがでしょうか。 糖尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。
2020.03.05 -
- 糖尿病
- 再生治療
従来、糖尿病という病気は「治らない病気」「一生かけてつきあっていく病気」というレッテルの貼られた病気でした。 しかし、医療技術の進歩により、ついに糖尿病が治る時代を迎えるに至ったのです。 今回は、治る時代となった糖尿病の治療法について解説します。 今や糖尿病は治る時代になった そもそも、糖尿病は「治らない病気」と言われていました。 糖尿病であると診断された患者さんは、「食事療法」「運動療法」といった生活スタイルに関係する治療法を中心に、必要に応じて「薬物療法」を組み合わせて血糖値をコントロールする生活を一生にわたって続ける必要があったのです。 これらの治療法は患者さんの血糖値をコントロールすることには寄与しますが、糖尿病の根本的な原因を治療するには至りませんでした。 しかし、新しい治療法である「再生医療」は、糖尿病を根本的に治療できる可能性を秘めた治療法として注目されているのです。 再生医療とは? 「再生医療」とは、「幹細胞」と呼ばれる細胞を利用した治療法です。 「幹細胞」とは、さまざまな細胞に変化することができる細胞であり、体の中の細胞の状態に応じて損傷・不足している細胞を補う働きをしています。 そして、再生医療は幹細胞のその働きに注目し、患者さん自身では修復することが難しい体の部位(内臓や皮膚、骨など)を再生することを目的とした治療法なのです。 再生医療は、これまで「治すことの難しい病気」を治療できる可能性や、「完治までに時間がかかる病気や怪我」を短期間で治せる可能性を秘めています。 こちらも併せてご参照ください 糖尿病を再生医療で治療する 再生医療の仕組みについて理解できたところで、糖尿病の原因についてもう少し詳しく解説しておきます。 糖尿病とは、簡単に言うと「血糖値をコントロールできていない状態」のことであり、体内で血糖値を下げる働きをするホルモンは「インスリン」です。 このインスリンを分泌しているのが「すい臓」であり、厳密には「β細胞」という細胞がすい臓内でインスリンの分泌を行うのですが、糖尿病ではこのβ細胞が壊れてしまいます。 そして、従来の治療法ではβ細胞を修復することは難しく、低下した血糖値コントロール機能を生活習慣の改善や薬物治療で補うのが従来の糖尿病の治療方針でした。 一方、再生医療では、弱ったすい臓で幹細胞が働くことによって機能の改善を図る効果が期待できます。つまり、糖尿病の根本的な原因を改善できる可能性があるのです。 まとめ 糖尿病はもはや治らない病気ではなく治る時代が到来しており、糖尿病治療に悩んでいる人にとって一筋の光明であることは間違いありません。 再生医療の成果は個人差もありますので確実ではありませんが、完治には至らずとも症状の改善につながる可能性は十分に秘めています。 興味を持たれた方は、再生医療による治療も選択肢の1つとして検討してみてはいかがでしょうか。
2020.02.20 -
- 糖尿病
- 再生治療
「糖尿病」と聞くと「一生つきあっていかなければならない病気」「治療には薬を飲まなければならない」「注射をしなければならない」というイメージをお持ちの方も多いと思います。 しかし、糖尿病には「薬に頼らない治療法」も存在します。 今回は、薬に頼らない糖尿病の治療法について解説します。 薬に頼らないで糖尿病は治療できる? 糖尿病の治療と聞くと「血糖値に関係する薬を使用しなければならない」というイメージをお持ちの方も少なくありませんが、必ずしも薬物療法を必要とするわけではありません。 そもそも、糖尿病の治療法大きく分けて3つの治療法があります ・食事療法 ・運動療法 ・薬物療法 「食事療法」とは、食事によって体に取り込む糖質やエネルギー量をコントロールする治療法です。 「運動療法」とは、日常的な運動によって対内の糖をエネルギーとして消費し、減量によってインスリン(血糖値を下げるホルモン)の働きを良くします。 糖尿病治療の基本はこれら2種類の治療法であり、血糖値など患者さんの健康状態に応じて飲み薬や注射薬などの薬物療法を組み合わせます。 つまり、どのような治療法を実行するかは患者さん(医師の診断)次第であり、人によっては薬に頼らないで糖尿病とつきあっていくスタイルで十分だという場合もあるのです。 逆に、薬さえ利用すれば食事療法や運動療法が不要というわけではなく、どちらかといえば薬に頼らない糖尿病治療の質が患者さんの健康状態を大きく左右するともいえます。 こちらも併せてご参照ください 糖尿病は「治らない病気」なの? 糖尿病を薬に頼らないで治療を進めることは可能ですが、「治す」となると極めて難しいことだといえます。 わかりやすく言えば、糖尿病は「治らない病気」であり、糖尿病であると診断されたら一生に渡ってつきあい続けなければならない病気と言っても過言ではないのです。 糖尿病は、治療によって「治す病気」というよりも「コントロールする病気」という方がしっくりきます。 患者さんの血糖値の状態をコントロールすることで重症化や合併症の発症を防ぐことが基本となり、根治療法は存在しないとされていたのです。 糖尿病は「再生医療」で治すという選択肢もある!? そんな糖尿病治療ですが、薬に頼らないうえに「治す」ことが可能になるかもしれない治療法が注目されています。 それは「再生医療」で、これは「幹細胞」と呼ばれる細胞を利用することで体の機能を修復する新しい治療法です。 糖尿病に対して再生医療を利用することにより、糖尿病に深く関係する「すい臓」の機能を修復し、血糖値をコントロールする機能を改善できる可能性があります。 再生医療は、従来の治療法では成し得なかった「糖尿病を根本的に治療する」ことが可能になるかもしれないのです。 まとめ 従来の糖尿病治療では、薬に頼らない治療法もありますが、仮に薬を利用したとしても根治治療にはなりませんでした。 しかし、幹細胞を利用する再生医療であれば、すい臓に作用することで糖尿病を根本的に治療できる可能性があるのです。 再生医療の結果には個人差があるので100%糖尿病を完治させられるわけではありませんが、根治治療になる可能性があるという点では画期的な治療法であるといえます。
2020.02.14 -
- 糖尿病
糖尿病とは血糖値が高い状態が続くことです。 いまや糖尿病は「国民病」と呼ばれるほどポピュラーな病気ですが、場合によっては入院となるケースもあります。 この記事では血糖値がどの程度だと入院と判断されるのか、極度の高血糖による合併症の症状や予防法について解説します。 血糖値だけで入院の判断はされない 血糖値は食生活の乱れや肥満、運動量の低下、ストレス、年齢などによって高くなることがあります。血糖値が高いからといってすぐに入院するわけではありません。以下で詳しく見ていきます。 血糖値が高く持病や合併症がある場合は検査入院 検査結果によって、医師から「専門医の診察が必要」と判断されることがあります。専門医の診察が必要と判断されるケースには以下のようなものがあります。 ・血糖コントロールが不可の状態が3か月以上続く ・インスリン療養が必要なインスリン依存状態 ・糖尿病ケトアシドーシスなどの急性合併症がある場合 特に、動脈硬化などの合併症や視神経や腎臓に持病がある場合は「検査入院が必要」と判断されることが多いです。一方、糖尿病ケトアシドーシスや意識障害など高血糖による急性合併症がある場合は、インスリン治療などの治療入院になります。 血糖値をコントロールするための教育入院 糖尿病で入院するケースとしては、検査入院や治療入院のほかに教育入院もあります。教育入院とは、14日程度入院し、血糖値を下げるための食事療法や運動療法、薬物療法を行い、知識や手法を習得する目的で行うものです。 糖尿病教育入院によって血糖値を下げることはできますが、下がった血糖値を維持するためには自宅に戻ってからも食事療法や運動療法などを継続して行う必要があります。 血糖値500mg/dl以上は意識障害を招く可能性があるので即入院の可能性も 「糖尿病の疑いがある」と判断される血糖値は空腹時血糖値126mg/dl以上(随時血糖値または75g経口ブドウ糖負荷試験2時間血糖値が200mg/dl以上)になります。血糖値が500mg/dl以上になると、極度の脱水症状を起こし、意識障害につながることがあります。 糖尿病は発症原因によって大きく1型糖尿病と2型糖尿病に大別されます。1型糖尿病はほとんどインスリンを分泌することができない(インスリンの絶対的不足)ため高血糖を引き起こします。 一方、2型糖尿病はインスリン抵抗性によってインスリンが分泌されても作用しにくくなることやインスリンの分泌量が減ること(インスリンの相対的不足)によって高血糖になるといわれています。 インスリンの相対的不足の状態と暴飲暴食や風邪などの感染症、ストレスなどが重なると血糖値が500mg/dl以上になることもあります。 意識障害の兆候としては、のどが異常に乾くことや多尿による脱水症状などがあります。この脱水症状によって体のなかの電解質のバランスが崩れ、下痢や腹痛、全身の倦怠感を引き起こします。 症状が進行してしまうと昏睡状態に陥るため、早急に入院する必要があります。 異常な高血糖で意識障害や昏睡を招く急性合併症 血糖値が異常に高くなると急性合併症を発症し、意識障害や昏睡を引き起こすことがあります。意識障害や昏睡を招く急性合併症とはどのようなものか見ていきます。 糖尿病性ケトアシドーシス性昏睡の症状 糖尿病性ケトアシドーシスは高血糖の症状や嘔吐、悪心、脱水症状、低血圧などの症状を起こします。子供の場合はこれらの症状に加えて腹痛を起こすこともあります。さらに、糖尿病性ケトアシドーシスは血液中にケトン体が増えるため、呼気に含まれるアセトンによって果物のような香りの息を吐くことがあります。 糖尿病性ケトアシドーシスの症状が進行すると意識障害や昏睡状態に陥り、最悪の場合は死にいたる可能性もあります。 1型糖尿病の場合に糖尿病性ケトアシドーシス性昏睡が起きる原因 糖尿病性ケトアシドーシス性昏睡は1型糖尿病患者に多く見られます。 1型糖尿病患者では、インスリン投与を中断したことや、感染症などの生理的ストレスによって、インスリンをいつもと同じように投与してもインスリンが代謝されてしまい高血糖になることが原因で発症します。 生理的ストレスになりうるものには、ほかにも心筋梗塞や外傷、すい炎、脳卒中などがあります。 インスリンの作用不足があると血液中のブドウ糖をエネルギーとして使うことができません。そのため、筋肉などのたんぱく質や脂肪細胞を分解してエネルギーを得ることになります。 このとき脂肪分解で産生されたケトン体が体に溜まり、血液が酸性に傾くことでケトアシドーシスを起こします。 2型糖尿病の場合に糖尿病性ケトアシドーシス性昏睡が起きる原因 糖尿病性ケトアシドーシスは1型糖尿病患者に多く見られ、2型糖尿病患者が発症する頻度は多くありません。 しかし、感染症などの異常な生理的ストレスが重なると2型糖尿病でも糖尿病性ケトアシドーシスを発症することがあります。 さらに、2型糖尿病患者は清涼飲料水を飲みすぎることでが糖尿病性ケトアシドーシスを引き起こすこともあります。これをペットボトル症候群(清涼飲料水アシドーシス)といいます。 高浸透圧性高血糖性昏睡の症状 高浸透圧性高血糖になると、極度の脱水症状や著しい高血糖が起こり、以下のような症状を引き起こします。 ・意識障害 ・皮膚や粘膜の乾燥 ・けいれん ・血圧の低下 ・脈が速くなる ・尿の量が減る 高浸透圧性高血糖は以前は高血糖性高浸透圧性昏睡や非ケトン性高浸透圧昏睡、非ケトン性高浸透圧症候群などと呼ばれていましたが、現在は高浸透圧性高血糖と呼ばれることが多くなっています。 2型糖尿病や高齢者に多く起きる原因 高浸透圧性高血糖は主に2型糖尿病患者が手術や脳血管障害、感染症、高カロリー輸液、ステロイド薬の投与などでインスリンの作用不足が起こり、高血糖になることで発症します。高浸透圧性高血糖は2型糖尿病の合併症だけでなく、高齢者にも多く見られる症状です。 高齢者が発症しやすい理由には以下のようなものがあります。 ・飲む水の量が減る ・身体機能の低下 高齢になると、のどの渇きを感じる口渇中枢の機能が低下します。そのため、水分が必要な状態にも関わらず、のどの渇きを感じにくくなり、飲む水の量が減ってしまうのです。 高血糖の急性合併症の治療と予防 高血糖による急性合併症を発症した場合は以下の方法で治療を行うことになります。 ・十分な輸液や電解質を補充して脱水症状を緩和させる ・インスリンを適切に投与する ・発症した原因を排除する 糖尿病性ケトアシドーシスも高浸透圧性高血糖も感染症が引き金で起こることがあります。そのため、感染症を発症しないことが意識障害や昏睡の予防につながります。 特に糖尿病性ケトアシドーシスは極度のインスリン不足で起こることがあります。 糖尿病治療中は風邪などで食欲がないという場合であってもスープなど食べやすいものを摂り、飲み薬やインスリンを中断しないことが大切です。 さらに、体調が悪いときは体力を消耗しないためにも安静にして抵抗力を温存しておくことも重要です。 ただし、嘔吐や下痢が止まらなかったり、250mg/dl以上の高血糖が続く場合や食事が摂れず薬も投与できないとき、高熱が続くといった場合はすぐに医師の診察を受けましょう。 まとめ 糖尿病で入院が必要と判断される基準や急性合併症により意識障害を招いた場合の対処法について説明しました。 極度の高血糖になると、昏睡状態に陥り、最悪の場合死にいたることもあります。日ごろから教育入院などを利用して血糖コントロールに努め、インスリンの投与をおこたらないことが大切です。もし昏睡や意識障害の兆候が現れたらすぐに医師の診察を受けましょう。 監修:院長 坂本貞範
2019.07.07 -
- 糖尿病
最近は機能性食品のCMなどで「血糖値の上昇を抑える」「糖の吸収を抑える」というキャッチコピーを聞くことが増えてきました。 血糖値が急激に上昇すると何が問題なのでしょうか。 この記事では血糖値が急上昇すると何が問題なのか、また血糖値が急上昇するリスクや血糖値の上昇を抑える方法について解説します。 食後に血糖値が急上昇したまま戻らないのは病気の可能性 健康な人であっても、食事をすると血糖値が上がります。しかし、健康な人であれば食後しばらくすると上昇した血糖値が下がります。食後、時間が経っても血糖値が上がったままという場合は食後高血糖になっている可能性があります。 食後血糖値とは 食事で摂ったブドウ糖は腸で吸収されたあと血液に入り、すい臓から分泌されたインスリンによって筋肉や肝臓など全身の組織や細胞に取り込まれ、エネルギーとして利用されます。つまり、食後は血糖値が上昇するのです。 健康な人であれば、食後2時間ほど経てば140mg/dl未満(平常時の血糖値)に血糖値が下がりますが、食後高血糖の場合は140mg/dl以上の状態が続きます。 定期健康診断では空腹時(前日の夜から10時間以上絶食)血糖値を測定するため、血糖値が下がった状態の血糖値を見ていることになります。 しかし、食後高血糖は食後のみ症状が現れるため、空腹時血糖値では異常が見られず、健康診断で「正常」と判定されることがあるのです。 食後高血糖が起きる原因 食後はどんな人でも血糖値が上がりますが、健康であればすい臓からインスリンが分泌されるため、食後2時間後には空腹時の血糖値まで下がっていきます。 しかし、インスリンの分泌量が少なかったり、なかなか分泌されない場合は血糖値が下がらず食後も高血糖の状態が続きます。 食後高血糖にひそむ危険な病気 食後高血糖は食後に現れる高血糖です。空腹時は正常値に戻るため、通常の健康診断では高血糖を見逃されてしまい、気付かないうちにさまざまなリスクが起こる可能性があります。 糖尿病を発症するリスク 健康な人であれば、食事で上がった血糖値は食後2時間ほどで下がります。しかし、食後高血糖のある方は食後2時間経っても血糖値が下がりません。 食後血糖値が下がらない原因としては、すい臓から分泌されるインスリンの働きや分泌量そのものが低下していることによると考えられています。 インスリンの働きや分泌量の低下は糖尿病の原因でもあるため、放置すると糖尿病の発症リスクが高くなります。 さらに、食後高血糖は食後しばらくの間しか高血糖であることが確認できないため、一般的な健康診断では見逃されてしまうことが多くあります。 そのため、食後高血糖は隠れ糖尿病とも呼ばれています。 食後高血糖は気づきにくく放置してしまう傾向があるため、糖尿病を発症しやすくなります。 がん・認知症を発症するリスク 健康な人であれば、食事をするとインスリンがうまく働くため、血液中の糖をスムーズに細胞に取り込むことができます。 しかし、生まれ持った体質や生活習慣の乱れが原因で、インスリンが効きにくくなり、血液中の糖を細胞に取り込みにくくなると血糖値が急上昇してしまいます。 また、上昇した血糖値を正常に戻すために、すい臓は大量にインスリンを分泌するため、血糖値の上がり下がりが激しくなります。この急激な血糖値の上がり下がりのことを血糖値スパイクといいます。 実は、このようにインスリンが極度に多い状態は記憶力が衰える原因になるといわれています。ネズミによる実験では、インスリンが極度に多いとき、脳にアルツハイマー型認知症の原因といわれるアミロイドベータという物質が蓄積していることがわかってきています。 つまり、インスリンが極度に多い状態はアルツハイマー型認知症の原因になりうるということになります。 一方、脳に届くインスリンの量が少なくなることでも記憶力が低下するといわれているため、記憶力や認知症を抑えるためにも血糖コントロールが重要になります。一方、糖尿病はがんの発症リスクも高めます。 実はインスリンは細胞のがん化やがん細胞の増殖を引き起こすといわれています。また、糖尿病によって高インスリン血症や慢性炎症などを起こすこともがんを招く原因になると考えられています。 特に食後高血糖は血糖値の上がり下がりが繰り返されるため、インスリンが極端に多い状態による影響が大きくなります。そのため、食後高血糖はがんや認知症のリスクが高くなるのです。 心筋梗塞や脳卒中を発症するリスク 食後高血糖の場合、インスリンの分泌量や働きが低下しているため、上昇した血糖値を正常値に戻す力が非常に弱く、耐糖能異常の状態であるといえます。耐糖能異常は動脈硬化の引き金になることがわかっています。 また、食後高血糖は活性酸素の発生をうながすため、血管にストレスを与えたり、炎症を起こすことで動脈硬化を引き起こすともいわれています。 このように、耐糖能異常によって動脈硬化が起こると脳卒中や心筋梗塞など糖尿病の合併症を引き起こす可能性が高くなります。 血糖値の急上昇を抑える食事法 食後の血糖値の急上昇を抑え、高血糖を抑えるにはどうすれば良いのでしょうか。 食後の血糖値が上がりにくい食べ物を選んで食べると食後の血糖値の上昇が穏やかになります。ただし、食後高血糖を防ぐには食べ方にもポイントがあります。 規則正しい3食の食生活 朝食を抜くと、昼食後に血糖値スパイクが発生することがわかっています。これは、朝食を抜くことで空腹の時間が長くなるため、昼と夜(残り2食)の食事後の血糖値が急上昇しやすくなるためです。 そのため、3食規則正しく食べることが食後の急激な血糖値の上昇を抑えることにつながります。 食べる順番は野菜から 食事をする際は野菜から食べることが血糖値の急上昇を抑えることにつながります。 野菜は食物繊維が豊富なため、最初に野菜を食べると食物繊維が腸の壁をコーティングするため、あとから食べるものの吸収速度を緩やかにする効果があります。なお、最初に食べるのは野菜だけでなく、きのこや海藻もおすすめです。 野菜の次に食べるならたんぱく質が豊富な肉や魚がおすすめです。肉や魚などを食べると、胃から腸に運ばれる際に脂質やたんぱく質と反応することでインクレチンというホルモンが分泌されます。 インクレチンは胃の内容物を排出するスピードを遅くする働きがあるため、あとに食べるご飯などの炭水化物の消化吸収速度が遅くなり、血糖値の上昇が緩やかになります。 飲食中に気を付けるポイント 食後の血糖値の急激な上昇を抑えるためには食べる順番だけでなく、ゆっくりと食べることも大切です。早食いはインスリンの働きが追いつかず、食後の血糖値を急激に上昇させてしまいます。 早食いの習慣がある場合は、一口食べたら箸を置くことを意識すると自然と早食いが抑えられ、食事の時間を長くすることができます。 食後は軽い運動をする 運動には血糖値を下げる効果があります。したがって、食後に軽い運動を行うと食後高血糖を防ぐ効果があります。 血糖値は食後30分~1時間後に上昇します。そのため、このタイミングで運動を行うと血糖値の上昇を穏やかにする効果があります。運動は散歩やウォーキングだけでなく、体操や家事をするといったことでもかまいません。少しでも良いので食後に体を動かすことが大切です。 一方、食後15分間は胃腸の働きが活発になり、食事で摂った糖が腸から吸収されるため血糖値が上がりやすいといわれています。 したがって食後15分後に運動すると血液が筋肉や手足に奪われるため、胃腸の働きが低下して血糖値の症状も抑えられるといわれています。ただし、食後すぐの運動は消化不良を招く可能性もあるため、注意が必要です。 血糖値を下げる食べ物・上げにくい食べ物 食後高血糖を抑えるには、血糖値を下げる食べ物や血糖値が上がりにくい食べ物を選ぶのも効果的です。血糖値を下げる食べ物または血糖値が上がりにくい食べ物には以下のようなものがあります。 ・野菜類(玉ねぎ、オクラ、トマト、レタス、キャベツなど) ・キノコ類 ・海藻類 ・食物繊維を含む食べ物(発芽玄米や大麦、オートミールなど) ・酢 ・柑橘類 ・大豆製品 ・乳製品 玉ねぎは料理に取り入れやすく、ミネラルも豊富なため、血糖値を気にする方には特におすすめの食材です。ただし、水にさらすと水溶性のビタミンが溶け出してしまうため、水にさらさずに調理することをおすすめします。 血糖値を上げるNG食べ物 食後高血糖を抑えるためには血糖値を上げる食べ物は避けましょう。血糖値を上げやすい食品には以下のようなものがあります。 ・ご飯・食パン・菓子パン ・麺類(うどん、そば、パスタなど) ・イモ類(里芋、ジャガイモなど) ・大豆以外の豆類(おたふく豆やインゲン豆など) ・甘いもの・甘い飲み物(饅頭やケーキ、スナック菓子、ジュースなど) 野菜は血糖値を上げにくいものが多いですが、とうもろこしやかぼちゃといった澱粉質の多いものは血糖値を上げやすいため、摂りすぎないようにしましょう。 まとめ 血糖値が急上昇するリスクや血糖値の上昇を抑える食べ物や食事方法について説明しました。 食後高血糖を放置すると脳卒中やがん、認知症などさまざまなリスクを引き起こすことがあります。食後高血糖が気になったら医師に相談しましょう。 また、医師から食後高血糖といわれた場合は食事や運動に気を付け、糖尿病の進行を抑えることが大切です。 監修:院長 坂本貞範
2019.07.07 -
- 糖尿病
糖尿病治療中は食事内容や食べ方に注意が必要です。 糖尿病の食事療法では間食を避け、3食規則正しく食べることが基本になります。とはいえ、たまには間食をしたいと思うこともあるでしょう。 この記事では糖尿病患者は間食をしても良いのか、間食をして良い場合はどのようなものを選べば良いかを解説します。 間食が基本的にはNGな理由 食事を摂るとすい臓のβ細胞からインスリンが分泌され、血液中のブドウ糖を細胞に取り込みやすくなります。細胞に取り込まれた糖はエネルギーとして利用されます。 糖尿病は何らかの理由でインスリンの作用不足が起こり、高血糖状態が続く病気です。高血糖状態が続くと血管を傷つけ、さまざまな合併症を引き起こしやすくなります。 糖尿病は発症原因によって1型糖尿病と2型糖尿病に大別されます。 1型糖尿病は何らかの原因ですい臓のβ細胞が破壊されることによって発症するため、体内でほとんどインスリンを作ることができません。一方、2型糖尿病は遺伝的要因と肥満や食べすぎなどの生活習慣によってインスリンの効きが悪くなったり、インスリンの分泌量が減少することで発症します。 現在、日本の糖尿病患者の9割が2型糖尿病患者といわれており、糖尿病というと2型糖尿病のことを指すことが多いです。 では、なぜ糖尿病では間食はNGといわれるのでしょうか。 食事を摂ると血糖値が上がりますが、しばらくすると下がります。しかし、間食を摂ると血糖値が下がりきらずに高血糖状態が続くことになるため、体に悪影響をおよぼしやすくなるのです。 間食するときの守る3つのポイント 糖尿病患者の方は基本的に間食を避けることが望ましいです。しかし、「絶対に」食べてはいけないかというと、状況によって、工夫をすれば間食を摂っても良いケースもあります。 糖尿病治療中に間食をする際に守るべき3つのポイントを説明します。 食べるタイミング 糖尿病治療中に間食を摂りたいという場合は、午前中、できれば運動など活動を始める前が良いでしょう。また、おやつを間食として(ほかの食事とわけて)食べるのではなく、3度の食事の一部として食べるのも良いでしょう。 反対に夜に間食(夜食)を摂ると血糖値が高いまま就寝することになるため避けましょう。 食べ物のチョイス 間食を摂る場合は何を食べても良いというわけではありません。なるべく急激に血糖値が上昇しにくいものを選ぶことが重要です。間食する際に食べ物を選ぶポイントには以下の5つがあります。 ・せんべいや菓子パンなどの炭水化物のおやつは避ける ・和菓子は脂質が少ないが砂糖が多いため注意が必要 ・スナック菓子は食感が軽いので量に注意する ・大袋やお徳用のお菓子は避ける ・甘い清涼飲料水は避ける 食べるカロリー量 糖尿病患者の方が間食を摂る場合は1日200kcalまでに抑えることが大切です。 もし1食あたり200kcal以上あるものを食べたいという場合は、1日で全部食べるのではなく、1日200kcalを超えないようにわけて食べると良いでしょう。 また、1日200kcal以内だからといって毎日食べるのではなく、どうしても食べたいときだけ食べるようにしましょう。 ただし、間食はあくまで3食きちんと食べたうえでの「おまけ」です。おやつを食べたいから、食べすぎたからといって3食のうち1食を減らすというようなことはしてはいけません。 間食におすすめの食べ物 糖尿病治療中は血糖値の上昇が穏やかになるものを間食に選ぶのが好ましいとされています。 ここからは糖尿病治療中におすすめの食べ物を紹介していきます。特に糖尿病治療中の間食にはナッツやフルーツ、乳製品がおすすめです。これら3つの食材は日ごろの食事だけでは不足しがちな栄養を補うことができます。 ナッツ ナッツ類は、マグネシウムや亜鉛、カリウム、鉄といったミネラルや食物繊維、ビタミン、不飽和脂肪酸などさまざまな栄養素を持つ健康食材です。 ただし、ナッツはカロリーが高いため、食べすぎてはいけません。ナッツ類を食べる場合は1日20~25粒程度に抑えることが重要です。おつまみ用に販売されているナッツは油で揚げてあったり、食塩が加えられているものが多くあります。 このようなタイプは食べすぎを招き、肥満の原因となるため、無塩タイプで素焼きしたものを選ぶことも大切です。 フルーツ お菓子やジュースはショ糖(砂糖の主成分)などの糖質が含まれますが、果物にも果糖やブドウ糖などの糖質が含まれます。糖質のなかで血糖値を上げやすいほうからブドウ糖、ショ糖、果糖という順番になります。 果物はショ糖が少なく、果糖や食物繊維が豊富に含まれています。一方、果物はブドウ糖も含みますが、食物繊維の効果で血糖値の上昇は緩やかになります。そのため、果物はお菓子やジュースよりも血糖値を上げにくい食べ物といえるでしょう。 特にキウイはビタミンCや食物繊維が豊富なうえ、生で食べることができるため血糖値を上げずに効率よくビタミンCなどの栄養素を摂取することができます。 ただし、果物も食べすぎると中性脂肪に変わってしまうため、果物を食べる際は80kcalまで抑えることも大切です。キウイの場合は1個半、グレープフルーツなら半分が80kcalの目安です。 乳製品 ヨーグルトやチーズ、牛乳などの乳製品はカルシウムや良質のたんぱく質が豊富なため、積極的に摂りたい食品です。 また、ヨーグルトを食べるときは無糖のものを選びましょう。どうしても甘味を足したい場合は、はちみつなどの血糖値を上げにくい甘味料を使うようにしましょう。 たんぱく質 糖質と一緒にたんぱく質を摂ると血糖値の上昇が穏やかになるといわれています。特に卵は鉄、カルシウム、亜鉛などのミネラルや必須アミノ酸、ビタミンなどが豊富に含まれるためおすすめの食材です。卵は1個80kcal程度ですので、ゆでたまごを間食にするのも良いでしょう。 酢昆布や干し芋など食物繊維が豊富なもの 食物繊維は血糖値の上昇を穏やかにする働きがあります。食物繊維が豊富な海藻や芋が原料の酢昆布や干し芋などは手軽に食物繊維を摂取できる食品ですので糖尿病治療中の間食におすすめです。 間食OKなお菓子レシピ 糖尿病治療中は市販のお菓子より、手作りのおやつのほうが原料やカロリーを把握しやすくなります。 ここでは低カロリーで簡単に作れるおすすめのレシピを紹介します。 86Kcalレアチーズケーキ 引用元:糖尿病とうまくつきあう「レアチーズケーキ」 【材料】2人分 粉ゼラチン 1/3袋(約2g) 胚芽ビスケット 1枚 水 大さじ1(15g) ミント葉 あれば 小プラカップ・デザートカップ 2個 ~A~ 無糖ヨーグルト 100g カッテージチーズ(うらごし) 50g ラム酒 小さじ1/2 アスパルテーム 小さじ1(5g) 【作り方】 1.分量の水に粉ゼラチンを振り入れ、混ぜたあとしばらく置いておく。電子レンジで20秒程度加熱し、粉ゼラチンを溶かす 2.ポリ袋にビスケットを入れ、すりこぎや麺棒で粗く砕き、プラカップに敷き詰める 3.泡だて器でなめらかになるまでAを混ぜ合わせる 4.3に1を入れ、よく混ぜたらラムを加える 5.プラカップに4を注ぎ、冷蔵庫で冷やし固め、お好みでミントの葉を飾る ケーキは糖質が多く、カロリーが高いため、糖尿病治療中の人は避けたほうが良いとされています。 このケーキはチーズや無糖ヨーグルトを使い、低カロリーで簡単に作ることができますので、糖尿病治療中の方におすすめです。 86Kcalあずきと抹茶の「羊羹」 引用元:糖尿病とうまくつきあう「あずきと抹茶の『羊羹』」」 【材料(2人分)】 ~A~ こしあん・つぶあん 60g 寒天粉末 2g 水 120ml ~B~ 抹茶 小さじ1強(6g) 寒天粉末 2g 砂糖 大さじ1強(16g) 湯 30ml 水 120ml 【作り方】 あずき羊羹 1.粉末寒天2gと水120mlを鍋に入れ、中火にかけ、沸騰したら弱火にして2分程度混ぜながら煮溶かす 2.寒天が溶けたらあんこを入れて混ぜ2分程度煮る 3.2をバットに流しいれ、粗熱が取れたら、冷蔵庫に入れて冷やす 抹茶羊羹 4.湯30mlで抹茶を溶かす 5.粉末寒天2gと水120mlを鍋に入れ、中火にかけ、沸騰したら弱火にして2分程度混ぜながら煮溶かす 6.砂糖と4で溶かした抹茶を入れて1分程度混ぜる 7.6を容器に流しいれ、粗熱が取れたら冷蔵庫に入れて冷やす 8.抹茶・あずきともに固まったら適当な大きさに切って盛り付ける 羊羹などの甘いものは、粉寒天を使うことでカロリーダウンができます。 まとめ 糖尿病患者の方が間食をする場合の食べ方やおすすめの食材について説明しました。 糖尿病治療中は栄養バランスの良いメニューを3食しっかり食べることが基本です。医師と相談のうえ、「間食をしても良い」という場合は食べ方を工夫し、ここで紹介した食材を選ぶことで血糖値の上昇を抑えながら間食やおやつを楽しむことができます。 監修:院長 坂本貞範 糖尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。 糖尿病ってどんな病気? こちらも併せてご参照ください
2019.07.06 -
- 糖尿病
「糖尿病でインスリン治療を始めることになったけど、どうやって購入するの?」「インスリン注射の使い方は?」「どうやって針を捨てれば良いの?」などインスリンを初めて使う方はわからないことが多いでしょう。 この記事では、インスリン注射の購入から使い方、針の廃棄方法まで詳しく解説します。 糖尿病の注射薬にはインスリン以外にも種類がある 通常、食事をするとすい臓からインスリンが分泌されることで血糖値が一定に保たれます。一方、糖尿病は何らかの原因でインスリンの作用不足が起こることで高血糖状態が続く病気です。 糖尿病は発症原因によって1型糖尿病と2型糖尿病に大別されます。1型糖尿病はインスリンをほとんど分泌することができないため、インスリン注射が必須になります。 一方、2型糖尿病は最初は食事療法や運動療法など生活習慣を改善することで治療を行いますが、それでも改善されない場合は飲み薬やインスリン注射などの注射薬を導入します。 糖尿病の注射薬には大きくGLP-1受容体作動薬とインスリン製剤に分かれます。 GLP-1(ジーエルピーワン)受容体作動薬 GLP-1受容体作動薬はこれまでの糖尿病治療薬とは大きく異なるメカニズムで血糖降下作用をもたらす薬です。 食事を摂るとすい臓にあるβ細胞からインスリンが分泌されます。GLP-1はこのβ細胞にあるGLP-1受容体に結合することでcAMP(サイクリックAMP)を上昇させ、インスリンの分泌を増やす働きがあります。 β細胞を刺激してインスリンの分泌を増やす働きのあるホルモンをインクレチンといい、GLP-1受容体作動薬はインクレチン製剤の1つです。 GLP-1受容体作動薬は1日1回注射するタイプと1週間に1回注射するタイプがあります。GLP-1受容体作動薬は食後血糖値と空腹時血糖値の両方を低下させる働きがあり、食欲を抑える効果もあります。ただし、GLP-1受容体作動薬は胃腸障害を起こすことがあり、膵炎の発症も懸念されています。 また、GLP-1受容体作動薬は1型糖尿病に使用することはできません。 インスリン製剤 インスリン製剤とは、インスリンそのものを注射で体の外から補充するものです。インスリン製剤は、1型糖尿病のようにほとんどインスリンを分泌できない場合や肝臓に障害がある場合、高血糖によって昏睡状態に陥っている場合、妊娠糖尿病、糖尿病を合併している妊婦などの治療時に用いられます。 なお、インスリン製剤には以下の6種類があります。 ・超速攻型インスリン製剤 ・速攻型インスリン製剤 ・中間型インスリン製剤 ・持効型溶解インスリン製剤 ・混合型インスリン製剤 ・配合溶解インスリン製剤 超速攻型インスリン製剤 超速効型インスリン製剤はインスリンの追加分泌を補うもので、食事にあわせて注射を行います。注射してすぐに効き始め、インスリン製剤のなかで作用時間が最も短いことが特徴です。 速攻型インスリン製剤 速効型インスリン製剤は超速効型インスリン製剤と同じくインスリンの追加分泌を補うものですので、食事に合わせて注射します。速効型インスリン製剤は注射後30分程度で効き始め、超速効型よりゆっくりと効くことが特徴です。 中間型インスリン製剤 中間型インスリン製剤はインスリンの基礎分泌を補うもので、食事のタイミングに関わらず、決まった時間に注射します。中間型インスリン製剤は注射後ゆっくりと効き始め、ほとんど一日中効果が続きます。 持効型溶解インスリン製剤 持効型溶解インスリン製剤は中間型インスリン製剤と同じくインスリンの基礎分泌を補うもので、食事のタイミングに関わらず決まった時間に注射します。持効型溶解インスリン製剤は中間型インスリン製剤よりも効果が長く続くうえ、一日中安定した効果が得られます。 混合型インスリン製剤 混合型インスリン製剤は超速効型と速効型、中間型インスリン製剤の混合製剤になります。混合型インスリン製剤は食事に合わせて注射して、インスリンの追加分泌と基礎分泌を補います。 配合溶解インスリン製剤 配合溶解インスリン製剤は超速効型と持効型溶解インスリン製剤の配合製剤になります。配合溶解インスリン製剤は食事に合わせて注射し、インスリンの基礎分泌と追加分泌を補います。 ペン型インスリン注射の針の価格と購入方法 インスリン注射はペン型のものが主流ですが、針を別に購入する必要があります。価格の相場と購入方法について見ていきます。 価格 ノボノルディスクファーマ社の在宅自己注射の診療報酬点数によると、注射針加算費用は3割負担で月400~600円程度(月130点または200点)が相場となります。 なお、この価格は2016年4月1日時点での価格です。さらに、使用する注射針によって値段が変わることもあるため、あくまで目安と考えてください。 一方、注射器と薬剤が一体化しているキットタイプの場合は薬代が含まれた値段になっているため注意が必要です。 購入方法 ペン(万年筆)型のインスリン注射の針は医療関連施設登録をしている人だけが購入可能なため、一般の人が直接購入することはできません。 そのため、糖尿病患者の方は医師の処方箋をもとに調剤薬局で購入するのが基本になります。注射薬や針は保険適用となります。 一方、注射を失敗するなどトラブルがあった場合、針だけが足りなくなることもあります。針だけを処方してもらう場合は保険適応外となるため、全額自己負担となってしまいます。 そのため、医師から注射薬を処方される際は針を多めに処方してもらうようにすると良いでしょう。 インスリン注射の針の取り扱い方 インスリン注射薬は医療器具になります。そのため、取り扱い方や保尊方法など注意すべき点があります。以下で詳しく見ていきます。 針の取り扱い・保存方法 インスリン注射薬の針は自分だけが使用するというのが基本です。さらに、針の再利用は感染症などのリスクがあるため、注射を打つたびに針を交換しなければなりません。 また、注射針は細いため、何かの拍子で先端が曲ることもあります。針に触ったり、何かにぶつけたりしないように注意が必要です。 使い終わったら針を外して保管する必要があります。注射針をつけたまま保管してしまうと、下記のようなリスクがあります。 ・異物や細菌が混入してインスリンの品質が低下する ・空気が混入して注射精度が低下する ・インスリンが液だれし、インスリンの濃度が変化する ・針内部でインスリンが結晶化し、注射できなくなる 空うちした後に単位を戻し忘れない 実際にインスリン注射をする際は空打ちを行い、注射針の空気を抜いたり、液が正しく出るかを確認する必要があります。 空打ちは2単位にダイアルを合わせて行います。このとき、空打ちしたままの単位でそのままインスリン注射を行うと、適切な量を投与できなくなってしまいます。 そのため、実際にインスリンを打つ際は必ず指示された単位にダイアルを合わせ直すことを忘れないようにしましょう。 針の再使用がNGな理由 インスリン注射では針を再使用してはいけません。これには以下のような理由があります。 ・感染症を発症する危険性がある ・針先が変形し、痛みや傷口が大きくなる可能性がある ・針の変形で、針が折れて体内に残留する危険性がある インスリン注射の針の廃棄方法 インスリン注射で使用した針は速やかに廃棄しましょう。ただし、注射針は適切な方法で廃棄する必要があります。 廃棄前は自宅で専用の容器に保存 近年、在宅医療の発展にともない、家庭からも在宅医療による廃棄物が出るようになりました。注射針のように鋭利なもの以外は在宅医療の廃棄物も市区町村で収集してもらえます。 お住まいの市区町村によって分別方法が異なりますが、一般的にはビンや缶などは不燃ごみやリサイクル(資源ごみ)、脱脂綿やチューブ、針を取り外した注射器などは燃やせるごみとして収集します。 一方、注射針を廃棄する際は注意が必要です。注射針の廃棄方法は市区町村によって異なりますが、注射針をほかのごみと一緒に収集している地域では、廃棄する前は針ケースに入れ、牛乳パックやペットボトルなどの容器に入れて保存します。 また、地域によっては注射針の収集を行っていないこともあります。この場合は蓋のある頑丈な容器または専用容器に注射針を入れて保存します。 廃棄できる場所 注射針をほかのごみと一緒に廃棄する場合は、注射針を入れる容器に「「在宅医療廃棄物の自己注射針で燃やすもの」」ということがわかるように明記したうえでポリ袋に入れ、ほかの廃棄物と同じごみ袋に入れて捨てることになります。 注射針の収集を行っていない地域では、注射針を専用容器などに入れて通院先の病院や薬局に持参します。また、病院によっては針を捨てる専用のごみ箱を設置していることもあります。 廃棄に関する注意点 注射針をほかのごみと一緒に廃棄する際は缶やビンに入れてはいけません。もし、ビンや缶に入れて廃棄した場合、注射針がリサイクルに回る危険性があります。 また、注射針は少量ずつこまめに廃棄するようにしましょう。特に大きなペットボトルで針を保管すると注射針を溜めすぎる傾向があります。こうなると、病院や薬局に持参するのが面倒になり不法投棄を招く原因になります。 実際、ホテルや空港、ショッピングモールなど公共の場に注射針を廃棄し、作業員などケガをするという問題が発生しています。 外出時は必ず注射針を持ち帰り、適切な方法で廃棄することが大切です。 まとめ 糖尿病注射薬の種類の説明やインスリン注射の購入方法から使い方、針の廃棄方法などについて説明しました。 インスリン注射は扱い方や廃棄方法など注意すべきことが多くあります。使用する際は医師や薬剤師の指示に従い、適切に扱うことが大切です。 糖尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。 監修:院長 坂本貞範 糖尿病ってどんな病気?
2019.07.06 -
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糖尿病と診断されたらどのくらい治療費がかかるのか、継続的に支払うことができるのかなど心配になる人もいるでしょう。糖尿病の治療は長期におよぶことも少なくないため、経済的な負担を減らす方法も知っておきたいですよね。 この記事では糖尿病治療にはどのくらい費用がかかるのか、また支払いが困難な場合に経済的な負担を減らす方法について解説します。 インスリン治療の注射にかかる費用 糖尿病は継続して治療を行う必要があるため、治療費がどのくらいかかるのかを知っておく必要があります。以下ではインスリン治療の注射を導入した際にかかる費用について3つの例で説明します。 受診と経口薬(1日1種類)+インスリン療法(1日4回)+血糖自己測定(月60回以上) 受診と経口薬(1日1種類)+インスリン療法(1日4回)+血糖自己測定(月60回以上)にかかる費用の内訳と目安の金額は以下となります。 【診察に関する費用】 ・外来診察料 ・在宅自己注射指導管理料(28回以上) ・血糖自己測定指導加算(60回以上) ・処方箋料 ・検査料など ①診察費用合計:23,000円 ※10割負担の場合(3割負担の場合6,900円、1割負担の場合2,300円) 【薬に関する費用】 ・調剤基本料 ・服薬情報等提供料 ・内服薬調剤料 ・注射薬調剤料 ・薬剤服薬歴管理指導料 ・薬剤料など ②薬費用合計:16,400円 ※10割の場合(3割負担の場合4,920円、1割負担の場合1,640円) トータル支払額:①+②=39,400円 ※10割負担の場合(3割負担の場合11,820円、1割負担の場合3,940円) 受診と経口薬(1日1種類)+GLP-1受容体作動薬(1日1回)+血糖自己測定(月60回以上) 受診と経口薬(1日1種類)+GLP-1受容体作動薬(1日1回)+血糖自己測定(月60回以上)にかかる費用の内訳と目安金額は以下となります。 【診察に関する費用】 ・外来診察料 ・在宅自己注射指導管理料(28回以上) ・血糖自己測定指導加算(60回以上) ・処方箋料 ・検査料など ①診察費用合計:23,000円 ※10割負担の場合(3割負担の場合6,900円、1割負担の場合2,300円) 【薬に関する費用】 ・調剤基本料 ・服薬情報等提供料 ・内服薬調剤料 ・注射薬調剤料 ・薬剤服薬歴管理指導料 ・薬剤料など ②薬費用合計:24,110円 ※10割負担の場合(3割負担の場合7,230円、1割負担の場合2,410円) トータル支払額:①+②=47,110円 ※10割の場合(3割負担の場合14,130円、1割負担の場合4,710円) 受診と経口薬(1日1種類)+インスリン療法(1日4回)+GLP-1受容体作動薬(1日1回)血糖自己測定(月60回以上) 受診と経口薬(1日1種類)+インスリン療法(1日4回)+GLP-1受容体作動薬(1日1回)血糖自己測定(月60回以上)にかかる費用の内訳と目安金額は以下となります。 【診察に関する費用】 ・外来診察料 ・在宅自己注射指導管理料(28回以上) ・血糖自己測定指導加算(60回以上) ・処方箋料 ・検査料など ①診察費用合計:23,000円 ※10割負担の場合(3割負担の場合6,900円、1割負担の場合2,300円) 【薬に関する費用】 ・調剤基本料 ・服薬情報等提供料 ・内服薬調剤料 ・注射薬調剤料 ・薬剤服薬歴管理指導料 ・薬剤料など ②薬費用合計:20,470円 ※10割負担の場合(3割負担の場合6,140円、1割負担の場合2,050円) トータル支払額:①+②=43,470円 ※10割(3割負担の場合13,040円、1割負担の場合4,350円) インスリン治療の注射の費用が払えない場合は ほとんどの方は健康保険証があれば3割(75歳以上は1割)まで治療費の自己負担を抑えることができますが、それでも経済的に苦しくなることもあります。特にインスリン治療が始まると、インスリンなどの薬代だけでなく、在宅自己注射指導管理料が加算されるようになります。さらに自己血糖測定も行う場合は血糖自己測定指導加算も加わります。 経済的に苦しく、インスリンの治療費を支払うのが困難という方のために、治療費を軽減する方法を紹介します。 注射の種類などを主治医に相談 インスリン治療に使用するインスリン製剤の価格は薬の種類によって変わります。しかし、インスリン製剤に価格差があることは患者の方にあまり知られていません。実際、インスリン製剤は医師から勧められたものをそのまま使用しているケースがほとんどです。 そもそも、治療は患者と医師が一緒に取り組むものです。薬の選択を医師に丸投げするのではなく、「もっと安くなる方法はありませんか?」などと医師に聞いてみることも大切です。 ジェネリック医薬品への変更 処方される薬などをジェネリック医薬品(後発医薬品)に変更するのも治療費軽減に有効です。ジェネリック医薬品とは新薬(先発医薬品)の特許が切れたあとに販売される、新薬と同じ有効成分を同量含み、同等の効き目があると認められた医薬品のことをいいます。ジェネリック医薬品に変更した場合、薬代が半額程度になることもあります。 なお、ジェネリック医薬品を希望する際は、病院や診療所、保険薬局の薬剤師や医師にその旨を伝える必要があります。 糖尿病の医療費が払えない場合は社会保障を受ける 国や自治体によっては、糖尿病や合併症によって障害がある方に役立つ社会保障や支援制度を紹介します。 介護保険制度 介護保険制度とは、日常生活で介護や支援が必要となり、要介護または要支援と認定された人がさまざまな介護サービスを受けられる制度です。対象者は、65歳以上の方(第1号被保険者)あるいは40~64歳で16の特定疾病を持つ方(第2号被保険者)になります。 特定疾病のうち、糖尿病に関係する疾病には糖尿病性神経障害や糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症などがあります。 介護保険制度の利用を希望する場合はお住まいの市区町村担当窓口にご相談ください。 高額療養費制度 高額療養費制度とは、同一月内に病院や薬局で支払った医療費が上限金額を超えた場合に、上限を超えた金額が払い戻される制度のことです。 70歳未満の方で、あらかじめ医療費が高額になることがわかっている場合は、限度額適用認定証を提示すれば、還付の代わりに病院や薬局の窓口で支払う自己負担金額を軽減することができます。 小児慢性特定疾患医療費助成制度 子供の糖尿病は治療期間が長引くことが多いため、医療費が高額になる傾向があります。そのため、小児慢性特定疾患医療費助成制度によって世帯所得に応じて医療費の自己負担金額を軽減することができます。 対象となるのは18歳未満ですが、治療を継続する必要があると認められた場合は20歳未満まで延長することができます。 特別児童扶養手当 特別児童扶養手当とは、精神あるいは身体に(糖尿病を含む)障害がある20歳未満の子供を持つ保護者に対して支給される手当です。 特別児童扶養手当は病気の状態や日常生活の状況など総合的に鑑みて認定され、所得制限や障害認定基準などの法的支給要件を満たす必要があります。 障害年金 障害年金は、ケガや病気によって何らかの障害がある方が障害等級表の基準に該当すると認定された場合に受給できるものです。 障害等級認定基準のなかで糖尿病患者の方が関係するものとしては以下のようなものがあります。 第1節・・・眼の障害(糖尿病性網膜症による視力低下や視野障害など) 第7節・・・肢体の障害(糖尿病神経障害による下肢切断など) 第11節・・・心疾患による障害(心筋梗塞や狭心症など) 第12節・・・腎疾患による障害(糖尿病性腎症による人工透析) 第15節・・・代謝疾患による障害(糖尿病) 上記のうち第15節以外は糖尿病による合併症と関連する基準になります。 一方、第15節は血糖コントロールが難しい方のうち、日常生活に制限があり支援が必要な場合や労働に厳しい制限が必要な場合に認められることになります。 身体障害者手帳 身体障害者手帳は、身体障害者福祉法で定めた障害がある場合に居住地の市区町村障害福祉担当窓口に申請を行い、都道府県から認定されることで受け取ることができます。 身体障害者手帳があれば、医療費の助成だけでなく、車いすや補聴器などの購入費用や手すりの取りつけといった住宅リフォーム代の助成などさまざまな支援や福祉サービスを受けることができます。 なお、受けられるサービスや助成金の上限金額は障害の等級や種類によって変わるため、利用前に確認しておくことが重要です。 糖尿病で身体障害者手帳が交付される場合 糖尿病で身体障害者手帳が交付されるケースには以下の4つがあります。 ・網膜症による視覚障害を患っている方 ・糖尿病足病変の方 ・著しく腎機能が低下している方 ・人工透析をされている方 身体障害者手帳が交付されるかどうかは患者の方の病状によっても変わりますので、医師に相談してみると良いでしょう。 難病医療費助成制度 難病医療費助成制度は、指定難病の治療に対して必要な医療費の自己負担分を助成してくれる制度です。 この制度は、国から指定難病であると診断され、病気ごとに重症度分類に照らしあわせたときに病気や症状の度合いが一定以上である方が対象となります。 指定難病が原因や治療で糖尿病になってしまった場合 糖尿病自体は国の指定難病ではありません。ただし、指定難病が引き金となった場合や指定難病の治療で糖尿病になった方は難病医療助成制度の対象となる可能性があります。 まとめ 糖尿病治療にかかる費用や経済的な負担を減らす方法について説明しました。 糖尿病の治療費はインスリン注射が始まるとより高額になります。しかし、病状や世帯収入などによっては国や自治体からの助成対象になることもあります。 また、助成が受けられない場合は、ジェネリック医薬品に変更したり、「もっと安い治療薬はありませんか?」と医師に相談することも大切です。 治療費について医師に相談することは恥ずかしいことではありません。積極的に相談することが大切です。 糖尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。 糖尿病ってどんな病気?
2019.07.05