糖尿病の治療中、風邪薬の服用については注意が必要|内科専門医師が配信

2021.08.23

カテゴリー: 糖尿病

糖尿病の治療中、風邪薬の服用については注意が必要

糖尿病の治療中に風邪をひいたら、風邪薬と糖尿病の薬の飲み合わせに注意しなければいけません。

「薬の飲み合わせ」とは複数の薬を飲むことで相互作用が働き、本来の効果が出なかったり、逆に効果が出すぎてしまう現象のことをいい、健康に悪影響を及ぼすこともあります。

風邪の治療のために、糖尿病治療を受けている医療機関以外のクリニックにかかったり、市販の風邪薬を服用するときは、医師や薬剤師に必ず現在使っている糖尿病治療薬の名称を伝えてください。

また、患者の方は自身でも気をつけて飲み合わせに注意する必要があります。

糖尿病で服用している薬を確認

飲み合わせを注意するには、まずは糖尿病の治療で服用している薬を確認しておく必要があります。

日本の医療機関では糖尿病の治療で主に次の7種類の薬を使っています。

・インスリンの抵抗性を改善する:①ビグアナイド薬、②チアゾリジン薬
・インスリンの分泌を促進する:③スルフォニル尿素薬、④グリニド薬、⑤DPP-4阻害薬
・糖の吸収や排泄を調整する:⑥α-グルコシダーゼ阻害薬、⑦SGLT2阻害薬

自分の糖尿病治療薬がどれに該当するのか知っておいてください。

いずれも、飲み合わせで効果が効きすぎたり効果が出なかったりすると血糖値が極端に上昇したり下降するなどをはじめに、健康に害を及ぼしたり、治療に影響が出る可能性があります。

こちらも併せてご参照ください
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経口血糖降下薬一覧|糖尿病治療で血糖値を下げる飲み薬|内科専門医師が配信

担当の主治医に確認

糖尿病治療の薬の注意点については、事前に主治医に尋ねておくことが大切です。医師に「別の薬を飲むときに気をつけることを教えてください」といえば、注意点を教えてもらえるはずです。

もし確認をする前に次のような症状が起きてしまい、別の医療機関にかかることになったら、すぐに主治医に薬の注意点を確認してください。

  • 嘔吐が止まらない
  • 下痢が止まらない
  • 熱が38度以上ある
  • 食欲がない
  • 血糖値が350㎎/dl以上ある
  • 意識の状態がおかしい

もし主治医にすぐに連絡が取れない場合は、別の医療機関の医師に、現在使っている糖尿病の薬の情報を伝えてください。そうすれば、飲み合わせの悪い薬をすすめられることを回避できるはずです。

薬は飲み合わせに注意

注意が必要な相互作用

風邪をひいたときに特に注意しなければならないのは鎮痛剤です。

総合感冒薬や解熱鎮痛剤のなかに含まれているアスピリンという成分が、糖尿病の薬の血糖を下げる効果を増強させてしまうことがあります。

したがってアスピリンと糖尿病の薬を飲み合わせることで、血糖値が下がりすぎてしまう危険があるのです。

また、咳や痰を止める薬に含まれているメチルエフェドリンや麻黄という成分には、糖代謝を促進させ血糖値を上昇させる効果があります。

つまり、血糖値を下げる糖尿病治療薬の効果が抑制される可能性があるのです。

相互作用の予防方法

風邪薬と糖尿病の薬の「悪い飲み合わせ」や「悪い相互作用」を予防するには、医師や薬剤師の服用指示を守ることが大切です。

医師の指示を忘れないように、メモに書いておくなどの予防策を講じておきましょう。

また、単に「糖尿病の薬」と覚えるのではなく、「血糖値の上昇を抑える薬」「血糖値を下げる薬」「インスリンの抵抗性を改善する薬」「インスリンの分泌を促進する薬」「糖の吸収や排泄を調整する薬」といったように、効果について覚えておきましょう。

効果を覚えておくことで、ほかの薬との相互作用を、よりいっそう気をつけることができます。

サプリメント

薬と同様に漢方薬やサプリメントにも注意が必要

漢方薬やサプリメント(以下、サプリ)にも、糖尿病治療薬との相性が悪いものがあります。

風邪をひいたときに処方される漢方薬に麻黄湯(まおうとう)や葛根湯(かっこんとう)があり、これらには麻黄という成分が含まれています。

さきほど「麻黄には血糖値を上昇させる効果がある」と紹介しましたが、それ以外にも麻黄には血管を収縮させる作用があり血圧が上がってしまうことがあります。

糖尿病患者の方は高血圧を併発している場合も多いので、注意が必要です。

逆に血圧を下げすぎてしまうのがセサミンです。糖尿病患者の方のなかには降圧薬を服用していることも多いですが、降圧薬を服用中にセサミンを飲み合わせると血圧が下がりすぎてしまう危険があります。

DHA(ドコサヘキサエン酸)もサプリでは人気の成分ですが、血糖値を高めてしまう効果が確認されています。

DHAは、血糖値を下げる糖尿病治療薬の効果を弱めてしまうかもしれないです。

「漢方薬やサプリは薬ではない」というのは間違いではないですが、飲み合わせで生じるリスクは薬と同様です。健康のために服用している以上、身体への影響はゼロではないのです。

まとめ・糖尿病の治療中、風邪薬の服用については注意が必要

医師は糖尿病治療薬を選択するときに、患者の方の状態や体調や生活環境を詳しく調べます。それは、糖尿病の薬の効果が「出なくても」「出すぎても」健康に悪影響を及ぼすからです。

そのため医師は、患者の方それぞれに合わせて薬の効果を厳格にコントロールしています。

したがって糖尿病の患者の方は、「風邪薬や漢方薬やサプリが、そのコントロールを狂わせることがある」と覚えておいてください。

新しい薬や新しいサプリを飲み始める前に、糖尿病治療の主治医か、かかりつけ薬剤師に相談する「くせ」をつけておいてください。

 

監修:院長 坂本貞範

 

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