トピックスtopics

インスリン注射で注意すべき単位とは

インスリン注射で注意すべき単位とは

インスリン注射では、インスリンを正しく取り扱うための単位が設定されています。

糖尿病と診断されインスリン注射をすることになった方や糖尿病予備群の方は、インスリンの単位について必ず知っておかなければいけません。

ここでは、インスリンの単位やインスリン専用注射器の使い方、単位間違いによるミスの事例などについて紹介します。

インスリンの単位換算

注射は薬剤の量を正確に守る必要があるため、注射器には薬剤の量を計測するための目盛りが表示されています。通常、注射に使用する薬剤の単位としてはmlが一般的です。

一方、糖尿病治療で血糖値を下げるために使用するインスリンは、さらに少ない単位で取り扱われており、インスリン注射では、1単位が0.01mlと定められています。つまり、10単位が0.1ml、100単位が1mlです。

問題となるのは、1単位の量を誤解してしまうケースです。1単位を10ml、あるいは100mlと誤解したまま投与した場合、実際に投与すべきインスリン量との間には1,000倍、もしくは10,000倍の違いが生じます。自己注射の場合だけではなく、医療現場でも起きかねないミスといえます。

とりわけ、インスリン1単位を1mlと思い込んだまま注射するケースが多く見られます。この誤解を持ったままだとインスリンは適量となりません。単位換算は注射する前に毎回確認が必要です。

インスリンの単位換算を間違ったまま投与すると、副作用としての低血糖もしくは高血糖が引き起こされます。さらに自己注射の場合、その間違いに気づかない可能性があります。

医師には単位換算に関する指導の徹底が求められると同時に患者側も注意しなければなりません。

インスリン注射器の使用を推奨

インスリン専用ではない汎用の注射器を使用してインスリン量を間違える例もあります。ツベルクリン用注射器や一般的なプラスチック注射器ではml表示が採用されています。対してインスリン専用の注射器には単位表示が採用されています。

一般的な注射器の1目盛りの量をインスリン専用注射器の1目盛りと同じだと誤解したまま使用すると、インスリンの過剰投与になってしまいます。過剰投与は深刻な低血糖症状を引き起こすことも考えられ、最悪の場合は死に至ることもあります。

過去には医療現場でも注射器の間違いによって、インスリンを患者に過剰投与してしまう事故が起きました。

注射器でインスリンを投与された女性はその約8時間半後に心肺停止の状態で見つかっています。

担当看護師がインスリン専用注射器の存在を知らなかった、ほかの看護師にインスリンの量を確認してもらわなかった、患者が装着していた心電図モニターのアラームが故障していた、といった悪条件が重なっての事故です。

一般的な注射器とインスリン専用の注射器の違いを把握していればこうしたミスを防げます。医療現場でもインスリン過剰投与事故を回避するための指導が徹底されています。

インスリンを自己注射する場合も必ずインスリン専用の注射器を使用してください。

単位の間違いによる過激投与は注意が必要

上述したとおり、インスリン量の誤認は低血糖・高血糖を引き起こします。過去に起きた事故の例を見ると、インスリン注射による投与量のミスは3つのパターンに分類できることがわかります。

それは単位自体を誤解して覚えているケース、インスリン専用ではない注射器を使用したケース、普段と違うインスリン専用注射器を使用したケースの3つです。

それぞれのケースについて詳しく説明します。

事例①0.1mlを1単位だと勘違いして投与

ある現場では、0.1mlのインスリンを患者に投与するように指示された看護師が誤って0.01mlのインスリンを投与してしまいました。

これは担当看護師が0.1mlを1単位だと勘違いしていたために起きた事故です。

インスリンの単位換算では1単位が0.01mlと定められています。0.1mlのインスリンを投与する場合、1単位ではなく10単位のインスリンが必要です。

つまりインスリン専用注射器を使用する場合は、10目盛り分までインスリンを入れる必要があります。

この事例の看護師は0.1mlを1単位と認識していたため、インスリン専用注射器で1目盛り分のインスリンしか投与しませんでした。これにより、患者は高血糖になってしまいました。

この事故は、看護師が正しい単位換算を知っていれば防げたはずです。インスリン単位換算について正しく理解することは、インスリン注射を行ううえでの大前提といえるでしょう。

事例②インスリン4単位投与の際、0.4mlだと思い込みツベルクリン用の注射器で投与

インスリン4単位の投与を指示された看護師が、その10倍である40単位のインスリンを患者に投与してしまう事故が起きました。

この看護師は、インスリン専用注射器ではなく、ツベルクリン用の注射器を使用したのです。さらに、インスリンの4単位を0.4mlと勘違いしていたようです。

この事故の最大の原因はインスリン専用注射器ではない注射器を使用した点です。インスリン専用注射器では目盛りで単位が表示されているため、指標に従い4単位分のインスリンを注入すれば問題ありません。

しかし、この事故の担当看護師はmlが目盛りで表示されたツベルクリン用の注射器を使ってしまいました。

また、看護師は「1単位は0.1ml」という間違った単位換算で認識していたため、取り込んだインスリンの量に疑いを持つこともありませんでした。

インスリン専用注射器は目盛り下部に「単位」もしくは「UNITS」という表示があります。一方、一般的な注射器の場合は「ml」の表示があるのみです。

インスリン注射には専用注射器を使用しましょう。また、使用前には必ず表示を確認し、インスリン専用注射器であることを確認してください。

事例③1本30単位の注射器と50単位の注射器を誤って使用し投与

ある医院では30単位のインスリンを使用するために、1本30単位の注射器で上限までインスリンを入れています。

しかし、日常的に使用している30単位の注射器と1本50単位の注射器を取り違える間違いが起きました。

その日は50単位の注射器を使い、普段と同じ(30単位の注射器と同じ)感覚でインスリンを上限までとったため、誤って50単位を投与してしまいました。

インスリン注射器のサイズには複数の種類が存在しています。もちろん、それぞれには共通の単位が表示されているため問題なく使用できます。

しかし、複数のサイズの注射器を持っている場合は、誤った使い方をしないよう注意が必要となるでしょう。

「上限まで」「半分の目盛りまで」といった感覚で記憶していると、万が一注射器の取違いが起きたときに間違った量のインスリンを取り込んでしまいます。

投与量が変わらない場合は、毎回同じサイズの注射器を使用するのが安全です。また、インスリンを注射器に取り込んだ際には、感覚ではなく必ず目盛りで量を確認してください。

インスリン注射の打ち方

インスリン注射の打ち方は医師からの指導があることが一般的です。あるいは「インスリン自己注射手技確認のしおり」といった書類が提供されていることもあります。

万全を期するために、インスリン注射の打ち方をおさらいしておきましょう。

1. まず、手と注射部位を洗浄します。アルコール消毒した場合は、アルコールが完全に蒸発するまで待ちます。

2. インスリン製剤、注射器を用意する際は間違いがないように確認してください。インスリン製剤は注射の前によく振り、均一に混ぜておきましょう。特に長期間保存していた製剤を使用する場合は固まっていることがあります。

3. インスリンを注射器に取り込みます。所定量のインスリンが入っていることを確認しましょう。

4. 使用する前は必ず空打ちして空気を抜き、インスリンがきちんと出るかどうかを確認してください。

5. 注射する部位は、お腹や上腕部の外側、ふとももの外側といった部分が一般的ですが、患者の体型によって好ましい部位が違いますので、医師の指示に従い、決められた部位に注射を行ってください。また、注射する位置は毎回2~3cmほどずらして打つようにしましょう。

6. 注射後は、注射器から針を取り外し、所定の場所に保管してください。また、次回注射をする際は必ず新しい注射針を使用してください。

また、インスリン注射では以下のポイントを意識してください。

インスリンは涼しいところで保管

未使用のインスリンは冷蔵庫で保管してください。ただし、凍結する場所では保管できません。使用中のインスリンは室温または涼しい場所で保管します。

注射針はまっすぐ取り付ける

注射針は注射の直前に取り付けます。注入器のゴム部に対して後針が斜めになっていると、注射針が斜めの状態で取り付けられてしまいます。

注射針は注入器に対してまっすぐ取り付けるようにしてください。

空打ちを忘れずに

注射前には上述したように空気の混入がないことを確認する必要があります。また、新品の針がなんらかの要因で詰まっていることも考えられます。

針が詰まっている場合、体内に必要量のインスリンが入っていきません。

注射の前には、「空打ち」を必ず行ってください。空打ちとは、少量のインスリンを針から出して空気を出し、針の詰まりがないことを確認する作業です。

注射の前は都度空打ちを行うことが推奨されています。

注射部位は体型によって変わる

一般的なインスリン注射の対象部位として二の腕、お腹、太ももなどが挙げられます。注射に最適な部位は体型によって決め方が変わってきますので、医師の指導に従って下さい。

毎回少しずつ注射場所をずらす

同じ場所に何度も注射していると、皮膚の硬化、赤み、むくみといった症状が現れます。また、インスリンの効きが悪くなってしまうことも考えられます。

そのため、指定されている部位の範囲で毎回2~3cm程度、場所をずらして注射してください。

 

インスリン注射の痛みについて

多くの方がインスリンの自己注射に抵抗感を抱いています。その最たる理由は「注射の痛み」です。採血や予防接種の注射の際に感じた「痛い」というイメージが強く残っているようです。

実際には、インスリン用の注射針は一般的な注射針とは大きく異なります。インスリン用注射針には、一般的な注射針の3分1程度の細さのものが採用されています。

さらに、針先には特殊な加工が施されており、痛みが緩和されています。そのため、痛みについてさほど心配する必要はありません。

どの患者の方も治療開始後ほどなくして自己注射に慣れていきます。不安な方は、病院で実際に注射器や注射針を見せてもらうといいでしょう。

もちろん、インスリン注射の方法についてもしっかりとしたガイダンスを受けられます。

なお、インスリン注射では皮下組織にインスリンを送る必要があるため、注射針の長さは体型に応じて選ばれます。一般的な注射針と比較すると、5分の1から10分の1程度の長さです。

このインスリン注射針の長さでは痛みを感じる反応への影響はほとんどないことがわかっています。

それでも痛みが気になる場合は医師に相談してください。

まとめ

インスリンの単位を間違って認識していると、定められたものとはまったく違う量のインスリンを投与してしまうことになり、その結果、高血糖または低血糖の症状が起きてしまいます。

過去にはインスリンの単位間違いで死亡事故が起きているほどです。

インスリン注射自体は患者の方自身で行える簡単な措置ですが、インスリンの単位間違いには細心の注意を払いましょう。

自己注射は、仮に投与量が間違っていたとしても、それを指摘してくれる人はいません。

医師から指示された服用単位をしっかりと覚えておき、注射の際には専用の注射器を使用しましょう。それ以外の注射器の使用は単位間違いの原因になります。

また、インスリン注射は大きな痛みを伴いません。医師からの指示に従っていれば、非常に安全な治療です。事前に正しい方法と正しい単位換算を把握し、安全にインスリン注射を行いましょう。