やたらと眠気に襲われるのは糖尿病のせい?

2021.08.19

カテゴリー: 糖尿病

食後に眠くなるという経験は誰もが一度はあるのではないでしょうか?でも、眠気が強すぎたり、頻度が多いと業務や日常生活に支障が出てしまいますよね。実は食後の眠気には糖尿病などの病気が隠れていることもあるのです。

この記事では、なぜ食後に眠気が起こるのか、また眠気が強くなる原因や対処法について解説します。

糖尿病の症状の一つ「食後の激しい眠気」

糖尿病の症状の1つに「食後の激しい眠気」があります。糖尿病が原因で食後に見られる症状や特徴には以下の3つがあります。

・血糖値が上がると眠くなる
・低血糖になって眠くなる
・眠気以外の糖尿病起因の異常

糖尿病は高血糖状態が続く病気です。通常、健康診断などでは空腹時の血糖値を測定することで糖尿病かどうかを判定します。

▼こちらも併せてご参照ください
糖尿病の原因を知って予防する|食事と生活習慣を改善して血糖値を下げる

しかし、空腹時血糖値が正常にも関わらず、食後のみ高血糖を示す隠れ糖尿病もあります。隠れ糖尿病は軽症の場合、食後2~3時間程度血糖値が上昇するというケースが多いため、注意が必要になります。隠れ糖尿病については後述します。

なぜ血糖値が上がると眠くなるのか

なぜ血糖値が上がると眠くなるのでしょうか。実は睡眠と脳の覚醒にはオレキシンという物質が深く関わっています。

脊椎動物のほとんどは、オレキシンが活発に働いているときに覚醒し、働きが鈍ると睡眠状態に入るといわれています。空腹になると血糖値が低くなるためオレキシン作動性ニューロンの活動が活発になり、オレキシンを刺激して活性化するため、覚醒します。

しかし、満腹になると血糖値が高くなり、オレキシン作動性ニューロンの活動が低下するため、オレキシンの活動が鈍くなり、眠くなってしまうと考えられています。

低血糖になっても眠気はやってくる

眠気は低血糖になることでも起こります。低血糖になって起こる眠気を放置すると生命に危険をおよぼすことがあります。低血糖による症状にはどのようなものがあるのか以下の3つの段階にわけて説明します。

・血糖値が55~70mg/dl程度
・血糖値が50mg/dl程度
・血糖値が30mg/dl程度

血糖値が55~70mg/dl程度で現れる症状

血糖値が55~70mg/dl程度になると異常な空腹感や冷や汗、だるさ、不安感、ふるえ、悪心などの自立神経症状が現れます。なるべくこの段階で低血糖に対する処置を行うことが重要です。

血糖値が50mg/dl程度で現れる症状

血糖値が50mg/dl程度まで低下すると、眠気やめまい、集中力の低下などの中枢神経症状が現れます。

血糖値が30mg/dl程度で現れる症状

血糖値が30mg/dl程度まで低下すると、意識消失やけいれん、麻痺、昏睡などが現れます。この段階になると命に危険をおよぼす可能性が出てきます。

一方、低血糖になっても症状が現れず、低血糖に気づかないケースもあります。これを無自覚低血糖症といいます。無自覚低血糖症の場合、突然意識障害や昏睡を起こすことがあるため注意が必要です。

眠気以外に起こりうる糖尿病起因の異常

糖尿病を発症すると、眠気以外にも以下のような異常が現れるこことがあります。

・血圧低下
・脳血圧が低下
・腸管から分泌されるニューロテンシン(NT)(血圧低下作用)の分泌増加
・高齢者では血圧維持作用の分泌低下

これらはいずれも、食事にともなう内臓血管の血流増加や血管抵抗が低下することによるものと考えられており、食後の倦怠感や意識障害を引き起こすことがあります。

また、食後の低血圧は起立性低血圧をともなうこともあるため、食事を摂る際の姿勢や排尿時の姿勢、入浴時などにも注意が必要です。

糖尿病が原因の眠気への対策

やたらと眠気に襲われるのは糖尿病のせい?

糖尿病患者の方だけでなく、午後の早い時間に眠くなるのは人間の生理現象の1つといわれています。とはいえ、昼間に仕事や作業をしている場合、午後の眠気は抑えたいものですよね。

このような場合、ランチメニューの選び方や食べ方を工夫するだけである程度眠気を抑えることが期待できます。

低血糖が原因の場合:低血糖にならないようにブドウ糖を摂取

低血糖が原因で眠気が起こるケースには、食事量が少なかったり、活動量が多すぎる場合があります。

低血糖を放置すると、眠気だけに収まらず、意識が消失したり、けいれんや昏睡を起こすこともあります。低血糖の症状を感じたら早い段階でブドウ糖を摂取するなどの対処を行うことが大切です。

高血糖が原因の場合:そもそも血糖値をあげないように食事に気を配る

高血糖が原因で眠気が起こる場合は血糖値を上げない工夫が必要になります。

前述のように、食後は血糖値が上昇することでオレキシンの活動が鈍くなり、眠くなるといわれています。一方、急激に血糖値が上昇することでインスリンが大量に分泌されるため、急激に血糖値が下がってしまうということも眠気の原因になるといわれています。

いずれの場合も食事によって急激に血糖値を上げないことが大切になります。食後の血糖値の上昇を抑えるには、ごはんやパン、麺類などブドウ糖の元になる糖質を抑えることが有効です。また、糖質を摂るときは玄米や全粒粉パンなど精製度の低いものを選ぶと血糖値の上昇を抑えることにつながります。

食後の眠気がひどいときは「隠れ糖尿病」を疑いましょう

やたらと眠気に襲われるのは糖尿病のせい?

健康診断では何も異常がないにも関わらず、食後の眠気がひどい場合は「隠れ糖尿病」という可能性もあります。

会社や病院の健康診断は、ほとんどの場合空腹時に採血を行う空腹時血糖値を測定しています。空腹時の血糖値が明らかに病的である場合は糖尿病がかなり進行していることになります。

しかし、隠れ糖尿病は、空腹時の血糖値には異常が見られないにも関わらず食後の血糖値のみが上昇します。軽症の場合、血糖値が高いのは食後2~3時間程度ですので、糖尿病が見逃されてしまうことがあるのです。

隠れ糖尿病の特徴

隠れ糖尿病は通常の健康診断では見つけにくいため、症状が進行するまで放置してしまう傾向があります。特に日本人は食後に高血糖になるタイプが多いため、隠れ糖尿病の特徴を把握し、早い段階で対処することが重要になります。

隠れ糖尿病や糖尿病の初期段階であることが疑われる症状には以下のようなものがあります。

・食後に眠くなる
・立ちくらみ
・急に太った
・全身がだるい など

隠れ糖尿病の見つけ方

「糖尿病と診断されたわけでもないのに病院で診察を受けるのは気が引ける」という方もいるでしょう。そういう方のために、隠れ糖尿病かどうかを自宅で簡単にチェックする方法を2つ紹介します。

・尿糖チェック
・血糖チェック

最近は自宅で簡単に血糖チェックや血糖チェックを行うことができる機器やツールが販売されています。血糖チェックは穿刺器具を使って指先から少量の血を採ることで測定します。

一方、尿糖チェックは尿試験紙を尿に浸し、色調を見ることで測定します。特に尿糖チェックは手軽にチェックできるためおすすめです。食後に尿糖チェックを行えば、隠れ糖尿病かどうかを簡単にチェックできます。

まとめ

糖尿病によって眠気が起こる理由や眠気の対処法、隠れ糖尿病のチェック方法について説明しました。食後に強い眠気が起こる場合は隠れ糖尿病の可能性もあります。尿糖チェックなどを行い、少しでも異常があれば医師に相談することが大切です。

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