糖尿病による血圧の変化|高血圧をコントロールする方法

2021.08.20

カテゴリー: 糖尿病

日本では糖尿病患者の9割以上が2型糖尿病といわれています。2型糖尿病と診断された方のなかには「糖尿病になったら血圧にも気を付けてください」などといわれた人もいるのではないでしょうか。糖尿病と血圧は一見関係がないように思えますが、なぜ血圧に気を付ける必要があるのでしょか。

この記事では糖尿病と血圧の関係について詳しく見ていきます。

糖尿病と血圧の関係

糖尿病患者の40~60%は高血圧であるといわれています。そのため、糖尿病と診断されたら高血圧にも気を付ける必要があります。一方、糖尿病治療で使用する薬や合併症によっては低血圧を招くこともあるため、血圧のコントロールは慎重に行う必要があります。

血圧が上がる理由

糖尿病患者の方が高血圧になる理由には以下のようなものがあります。

高血糖になると血液量が増える

糖尿病で血糖値(血液中の糖の割合)が高い状態が続く病気です。血糖値が高くなると血液の浸透圧が高くなるため、腎臓から水分を吸収する量が増えたり、細胞から水分が排出されて血液量や体液が増えるため、血圧が上がります。

インスリン抵抗性により血管が広がりにくく血液量も増える

2型糖尿病は何らかの原因によりインスリンの分泌量が減ったり、インスリンが効きにくくなっている状態(インスリン抵抗性)です。

通常、インスリンはすい臓から分泌され、血液中の糖を細胞に取り込みやすくするものですが、インスリン抵抗性の場合、分泌されたインスリンがうまく作用しません。このとき、インスリンの作用不足を補うためにすい臓はインスリンを大量に分泌するため、高インスリン血症を招きます。

高インスリン血症を発症すると、腎臓で塩分(ナトリウム)が排泄されにくくなったり、交感神経の働きを高めたり、血管壁の細胞が増殖して血管が広がりにくくなるため、血圧が上がりやすくなります。

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糖尿病患者は肥満が多く、血圧を上げるホルモンの分泌量が多くなる

2型糖尿病は遺伝的要素と食べ過ぎなどの生活習慣病が組み合わさって発症するといわれています。そのため、糖尿病を患っている人は肥満傾向であることが多いです。肥満は交感神経を緊張させ、アドレナリンなどの血圧を上げるホルモンの分泌を増やすため、血圧が上がりやすくなります。

糖尿病の合併症(糖尿病性腎症)の影響

糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどありません。しかし、病気が進行するとさまざまな合併症を招きます。このとき、糖尿病性腎症を発症すると、レニン(血圧を上昇させるホルモン)が腎臓から分泌されます。

また、糖尿病性腎症を発症すると腎臓の濾過機能が低下するため、血液量が増え、高血圧を招くことになります。

血圧が下がるケース

糖尿病では高血圧だけでなく、低血圧も気を付ける必要があります。

高浸透圧高血糖症候群

糖尿病で血圧が下がるケースの1つに高浸透圧高血糖症候群があります。高血糖症候群とは、感染症や薬の影響で糖尿病患者にインスリンの作用不足が起こったときに見られる、高血糖性の急性代謝失調のことです。高浸透圧高血糖症候群は重度の脱水を引き起こし、多飲や意識障害、体重減少のほか血圧の低下も招くことがあります。

自律神経障害による起立性低血圧

起立性低血圧とは、急に立ち上がったときなどにフラッとすること(立ちくらみ)のことです。糖尿病で自律神経が障害されると血圧の制御ができなくなり、起立性低血圧を起こしやすくなります。

高血圧が引き起こす合併症

糖尿病による血圧の変化|高血圧をコントロールする方法

糖尿病患者の方が高血圧になると、さまざまな問題を引き起こします。

細小血管障害

糖尿病の3大合併症と呼ばれる糖尿病性腎症・糖尿病性網膜症・糖尿病性神経障害は細小血管障害の代表的なものになります。高血糖状態が続くと血管が傷つきますが、細い血管が障害されると細小血管障害が起こります。腎臓や網膜、神経には毛細血管が集まっているため、細小血管障害が起こりやすくなるのです。

なかでも、糖尿病性腎症は初期段階では血糖値の影響が大きいのですが、症状が進行すると血圧の影響のほうが大きくなるため、血圧と血糖値のコントロールが重要になります。

大血管障害

大血管障害には脳梗塞や心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症といったものがあり、文字どおり太くて大きな血管が動脈硬化を起こすことで発症する病気です。糖尿病と高血圧はいずれも動脈硬化を進行させるため、両方発症している場合は大血管障害の危険性が高まります。

糖尿病の血圧コントロール

糖尿病患者の方は合併症の発症を防ぐためにも血圧をコントロールすることが重要になります。ここからは糖尿病患者の方の血圧コントロールについて見ていきます。

目標とする血圧数値

血圧とは血管内の圧力のことです。血圧は心臓収縮時に最大になり(収縮期血圧)、心臓拡張時に最低になります(拡張期血圧)。血圧は心臓や神経系などの影響を受けるだけでなく、身体活動や精神状態によっても変動します。

糖尿病による血圧の変化|高血圧をコントロールする方法

引用元:日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2014」

本ガイドラインによると、循環器系などの病気を最も発症しにくい血圧は収縮期血圧<120かつ拡張期血圧<80となります。

従来は、血圧のレベルによって軽症、中等症、重症と分類されていましたが、現在はⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度という分類に変わっています。

食事によるコントロール

血圧をコントロールするには食事などの生活習慣を改善することが基本になります。「高血圧治療ガイドライン2014」では以下のポイントを押さえることを推奨しています。

・食塩制限(6g/日未満)
・野菜や果物の積極的摂取
・コレステロールや飽和脂肪の制限
・飲酒制限

運動によるコントロール

運動は血圧を下げる効果があることがわかっています。血圧をコントロールするには、以下のような有酸素運動を1日30分以上、毎日継続して行うことをおすすめします。

・ウォーキング
・サイクリング
・水泳 など

禁煙によるコントロール

たばこに含まれるニコチンは交感神経系を刺激するため、喫煙は高血圧を招きます。そのため、血圧のコントロールでは禁煙が欠かせません。以下の結果からも、たばこを1本吸うだけで血圧が上がることがわかります。

糖尿病による血圧の変化|高血圧をコントロールする方法

引用元:テルモ株式会社「脳卒中や心臓病の危険を高める『仮面高血圧』」

薬によるコントロール

食事や運動など生活習慣の改善だけで血圧のコントロールをするには限界があるケースがあります。この場合、生活習慣の改善に加えて降圧薬を用いた薬物治療を取り入れることになります。

なお、降圧薬にはさまざまな種類があります。処方された薬によって飲み合わせや注意点が異なりますので、医師の指示に従って服用することが大切です。

まとめ

糖尿病と血圧の関係について説明しました。

糖尿病を発症している方は高血圧になりやすいため、血糖値と併せて血圧もコントロールしていく必要があります。糖尿病と高血圧が重なると合併症の危険性が高まるため、医師の指示に従い、早い段階で治療に取り組みことが大切です。

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